タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ

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36 貴重な夏休み 小田原は守屋のパン屋から

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「久しぶりの我が家!へ」
「みんな柔軟さぼっちゃダメだよ」
「南城、腹筋さぼるなよ」
「はい」
 みんなで兵庫まで出て新幹線組で上下に分かれた。
 私は上り組。
 すみれは友達の家に行くとかで大阪で下車したけど、百合先輩【同期だけど今まで先輩だったからなかなか馴染めない】サツキ、あんずたちとのぞみに乗った。

 車内販売好きの私としてはのぞみはアイスクリーム。
「すいません」
 車内販売のお姉さんが近寄ってきてくれる。
「はい」
「アイスクリームを下さい」
 メニュー表を見せてくれてバニラ以外に季節のトマトとスイカのジェラートがあった。
「トマトで」
 一択しかないかの様なスピードでびっくりする回答を導き出した。
「うっそー」
 サツキが言った。
 さくらはすぐさまふたを開けるとスプーンを突っ込んだ。
「サツキ、トマト嫌いなの?」
 さくらは不思議感満載で言っていた。
「待ってさくら、これもしかして平常運転なわけ?」
「ん?」
 トマトのジェラートに夢中のさくらは、左手にしっかりとジェラートをホールドし溶ける前に食べきる作戦だ。
「いや作戦とか平常運転とかそういうことではなくて、限定ものが好き」
 案外ミーハーなんだと、あんずに言われて、確かにそうかもと思ってみた。
 名古屋を経由して静岡県に入った。

 富士山が見えてくる。
 音楽学校からは見えないそれがとても懐かしく、帰ってきたのだと感じさせるには十分だった。

 1か月ぶりの神奈川は空気が違う。
 別に海は綺麗じゃないし、空気も箱根に行けば綺麗だけど小田原当たりならそうでもない。でもやはり特別な匂いに満ちている。
 私達のソウル。
 名古屋からひかりに乗り換えていた私達は小田原でおり、摩利ちゃん達にあうために学校に向かうことにした。
「待って、寄りたいとこあるんだよ」
 私はいうとさっさと駅をおり左に歩き出した。
「あーわかった!あんぱん?」
 サツキはビビッと来たのか、あたりでしょ?とどや顔だ。
 まああたりですけど(笑)
「あたりだけどハズレ」
 意味不明な回答をしたまま私は守屋のパン屋にいった。

 小田原ならと言う場所が駅近くに私的には2つある。
 1つはこの【守屋のパン屋】
 もう1つは、【豆や】

「最近外装きれいになったけど、やっぱ昔のが雰囲気あるよねー」
「んー確かにね。でも中身変わらないんだからいいじゃない」

「こんにちわ!」
 おばさん達は私らを見つけると、奥のおじさんも呼んでくれた。
「さくらちゃん達じゃない!宝塚入ったんでしょ?」
「まだまだだよ、今は予備軍!」

「予備軍っていったって十分すごいよ!今日なんにする?いつもの?」 
「えーととりあえずはいつもの甘食と……あとはねー」

 外ががやがやしてる。

 私達の守屋のパン屋の一時を邪魔するガヤガヤはどこのどいつだよ!
 ってチラッと外を見た。

 まさに
 後光がさしている?

「よお!」
 
 
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