タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ

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28 面接の真実

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 1月に出した願書はかなり真剣に書いた。
 3月の1次は面接だ。
 東京と宝塚と2日にわけてやる面接はやはり緊張する。

 1次は皆合格した!

 さあ2次だ!
「舞踏、声楽、お前ら泣いても笑っても明日が今年のラストだぞ!」
 ちょうど零斗れいと達も春の選抜高校野球……
 今年の神奈川は引き抜きに引きぬいて、常勝相模学園を打破するために作られた強い学校が1校あって、前評判ではそこの優性だった。

 でもやはり我らが零斗れいと。学校の多さと枠の少なさから熾烈な県と言われる神奈川代表を無事にもぎ取り春の選抜にコマを進めていた。

 私はそんな彼らに力を貰い、明日の実技に挑むことにした。


「さくらー、雨情ちゃんが呼んでるよ」
 やな予感しかしない、職員室呼び出し。
 試験前日になんの用事かと言えば言いたいことは1つだろう。

「A組南條入ります!」
 前回の試験で見事Bからのジャンプアップを実現した私はそれでも達観は出来ない。

「おーはいれ」
「先ずはクラスアップおめでとう!桜華についで二位だ!」
 得意の日舞で1位を叩きだし、苦手な声楽で平均以上をキープした。
 まあバレエは上からベスト5に入るし、普通に行けぱ受かる!はずなんだ。普通なら。

 でも呼び出し……

「もう一度聞く」
 そういうと雨情ちゃんは担任の神代先生と一緒にさくらをみた。
「宝塚、娘役に転向の意思は?」

「ない!」
 私ははっきりきっぱり言った。
「落ちるかもしれないぞ?」
「面接だけ娘役で言うのは?どうだ?」
 凄い顔をして睨んだ。

「先生、音楽学校はうかったらわけて練習ですよね……」

 だな。
「ならなおのこと、嘘に意味はないでしょう」
 先生はため息をついた。

 
 さくらはいつも真っ直ぐだ!
 小さな時から曲がったことが嫌い。
 小さくても男役の夢は諦めない。

「先生、心配してくれてるのはホント良くわかる!でも私を信じて……」
「さくら」
「受かるって信じて?って意味じゃなくてさ、私はへこたれないって信じて、とりあえず明日受けてくるよ!」


 皆で望んだ2次

 さくらは何一つ失敗せず、暗譜も完璧だった。

  皆の尊敬の目は桜華と南條に注がれ、時期トップスターコンビかと噂される程の受験生だった。


「南條さん、昨日は眠れましたか?」
 はい、沢山ねました。
「娘役としては少しだけハスキーボイスなのですが、高めの声をだす練習はしていませんか?」
 娘役はやりません!

 会場はシーンと静まり返った。


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