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26 常勝相模学園②

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八神やがみさくらしらない?」
 零斗れいとは辺りを見渡すもさくらが居ないのが気になり、さくら番の八神やがみに声をかけた。
「あー、マネと一緒にどっか行ったよ」
 適当な返事しやがって、こっちはさくらに面会者が来てるからさがしてんだっつーの!
「さっくらー」
 零斗れいとは綺麗な顔に似合わない野太い声でさくらを探す。
「面会って誰よ」
 あそこのめちゃくちゃ美人だと、零斗れいとはいうと、さすがDKだ。
 美人に弱いお年頃。つい練習もそこそこに人だかりが出来た。

「すいません、わざわざこんな所まで来ていただいて、今うちのマネが連れ出してしまったらしく、もう少しお待ちいただけますか?」
 さすが部長だけある。
 川越かわごえの物腰丁寧なその口調に、その美人はにっこり笑い、
「待ってます。ありがとう」
 と言った。
「えっ声少し……低くね?」
 首をかしげる彼女にやべぇと思って
「あっ、すいません。低い女性もいるのに、セクハラではないですから!」
 クスクス笑う足の綺麗な彼女はスレンダーで、モデルみたいにスラッとしてる。
「ねーえ?ついでに聞いても良いかしら……」
 もう何でも聞いて下さい!
 奴なんで」
 エッチなDKに普通の会話をありがとう!
「さくらちゃん、20キロ目標なんです」
「ダイエットですか?それは死んじゃうって!やばいやつっすよ」

「いえいえランニング」
 あー、それならと
「すでにクリアしてますよ。あいつ昔から、あー幼馴染なんですけど、やると決めたらやる奴なんで」
 日向ひゅうがが割って入ってきた。
「だから身長無いのに、タカラジェンヌ希望者だって言った時、なんて言って良いかわからなかった」
「なんて言ったの?」
 謎の美人は聞いた。
 爽やかな風が吹き、美人のスカートをフワッとめくる。
 慌てて手で抑えてうつむいた姿が、滅茶苦茶可愛くて、年上なのについ息子が反応しそうだった。
「んー、なんも言ってねっす。だって伸びるかもしんないし、努力はしとかないと身長伸びてからなんて甘いこと言ってたら、たぶん間に合わないから……」

 
零斗れいとは言った。
「俺たち皆、夢は頑張ればチャンスはあると思ってんすよ。勿論皆、努力するわけだから頑張ったからって皆が甲子園に行けるわけじゃない。でもがんばれなければ……その切符すらチャンスはなくないですか?」
 しっかりした子たちだ。謎の美人は思った。
「あんた達みたいなのがついてんなら、心配はいらないか」
 
「あなたは?さくらの何ですか?」
「教師だよ。バレエの担当。あいつここんとこ一気に身長伸びてる。娘役なら今年……おそらく受かる!でも男役に拘るならちょっと厳しい。ただまだ来年もあるから、あいつがどう考えてるのかなと思って」
「バレエの先生?」
「うん、そうだよ?なぜ?」
「なら聞いていいすか?」
 零斗れいとはベンチの横に腰かけて手を広げた。
「バレエってのは怠けて練習休んだら、駄目にならないんすか?」
 まっすぐな目をした男子だ。
 常勝の重みに負けじと頑張る高校球児のなかでも彼はエースNo.だった。
 背負っているものも半端ない重圧だったろう。
「野球は?」
 質問に質問で返すのかよ!と嫌そうな顔をしたが、そこは運動部員、爽やかさが売りなだけはある。
 すぐにニッコリと微笑み、しっかりした口調で言いきった。
「駄目になりますよ」

 
「なら一緒よ。本気の物は皆そうよね、さくらに言っといて」
「はい?」
「娘役じゃなく男役に拘れ!ってさ」

 先生はベンチから立ち上がるとクルリと身を翻し、敬礼していった。
「頼むな!君たち!」
 野太い声にいかにも男らしい目付きに部員は目を丸くしたが、部長が敬礼したのを筆頭に、皆の敬礼がキマル!
「任せて下さい!」


 それから30分後マネと帰ってきたさくらは汗がびっしょりで、なんかしたんだとわかると零斗れいとは美人の伝言を伝えた。
「美人?私がここにいるって知ってる美人ってだれだろつ……」
「バレエ教師って言ってたぞ!今の身長じゃ男役は無理かもしれねーけど、拘れって言ってたぞ。すげー野太い声のスレンダー美人だ!」
 と川越かわごえがいうと……さくらは嬉しそうに満面の笑顔でいった。

「頑張るよ!雨情うじょう先生!」

 くるっと振り返り、まるで男役の様に斜めに立ち、右手を大きく斜めにあげて、言った。

 
「雨情摩利、鬼のバレエ教師、あれでも立派な男だよ!」

 さくらが低く響くいい声で、爆弾を投下すると、皆から驚愕の声が上がりその場で失恋決定したものもでた。
「え――――――――――――?うっそだ――」

 
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