タカラジェンヌへの軌跡

25 常勝相模学園

　ランニング12キロ制覇
　ボイトレ毎日
　柔軟1時間


　まずはこれをこなせ！と桐生先生に言われ、私は毎日走り始めた。

　ボイトレや柔軟は日課だったから全然なんともないのだけれど、走るっていう筋肉はまた、なんというか別の次元だと思わずにいられなかった。

　うちの高校は基本芸能にひいでているから、部活も運動部はない。

　
　私は友達がいる別高校の野球部に顔を出していた。
「おー、さくらちゃんやん」
　あっ日向ひゅうがだ。
「あっ南條か！お前宝塚受けるんだってな！20倍はくだらないんだろ？難関だな」
　イケメン川越かわごえまでいた。
　
　

「あのーお願いがあるんだけど……」
「なんだ？」
　部長を務める川越かわごえが優しそうにいったもんだから、オッケー貰えたかのように話をした。

「ロードワークに参加させて貰えないかなー」
　皆顔を見合せ、それは無理だろうといった。
「やって見なきゃわからない！一人はつらいんだよ」
　 

　川越は呆れたように口を開く。
「一人がつらい？個との戦いは常に一人だ。ついてくるのは構わんが、そんな甘ったれた考えで常勝相模学園の部員についてこれるとは思えんな。却下だ、認めん」

「まあまあ川越ちゃん、いいじゃない？うちはマネも走んだし、やらせてみなよ。さくらちゃんだってなんか思う所があんでしょ」
　相模学園きっての女ったらしである翠川  零斗みどりかわ  れいとはその甘いマスクとは裏腹の豪腕ピッチャーで、彼なくして相模学園の神奈川選抜も甲子園優勝もなかったと言われるルーキーだ。
「そうそう、それに女の子一人で夜走るなんか危ないでしょ」 
「八神やがみ……。まあお前までそう言うなら」
　川越はムッとしていたが、渋々という風に、参加するのを許してくれた。

「川越ちゃんはすぐ八神だもんな、やっけるぅー」
　皆の口添えもあってさくらは一緒に走ることが出きるようになった。

　出された条件は以下のものだった。

　①無理をしないこと、オーバーワークは逆効果である
　②外周はダメ、なぜなら絶対についてこれないから、部員がさくらに構う余裕はうちもない
　③グラウンド内周の参加、雨の日はやらないこと
　④守れなかった段階で強制終了

　まずは一つ足掛かり。
　南條さくら、がんばります！