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21 場内アナウンスの栄光
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「皆様ご来場有り難うございます。花組の嶋田巴です。只今より脚本、演出 小関政弘 名探偵はふたりぼっち、ララ・フローラ開演いたします。どうぞ最後までお楽しみ下さい」
会場には割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
この場内アナウンスはトップスターの栄光だ。
今回は花組の公演だから、嶋田巴さん。彼女はアウトローをやらせたら宝塚随一と言われる程の個性の持ち主。
「出待ちしたかったー」
「私達音楽学校受けるんだよ?ダメに決まってるじゃん」
「ばれんかったらいいんちゃう?」
きっとこういう緩い考え方を雨情先生は怒ってるんだよなって思いながら、言うべきか悩んでいたら、いたー。正義感の塊!
「ちょっとあなた達!出待ちなんてダメに決まっているでしょう?皆に迷惑かけるき?」
芹澤 椿はクラスの副委員長だ。桜華の僕に近いのだが、別段悪気はないし一緒にうかれば同期になる。なるべく上手くやりたい。
「まあまあ椿、本気じゃないって」
ねえ、とクラスメートに声をかけた。
「別に皆が宝塚に入りたい訳じゃないし、諦めてる人だっているんだよ?人の気持ちとかどうでもいいの?」
「いってないでしょう?そんな事!」
「いってるじゃん!」
やばい
やばいどうしよう……。
雨情先生にバレたらまずい。
「やめなよ」
壁にもたれ掛かってたサツキはまず椿をとめた。
「サツキちゃんなんで肩持つの?」
椿はほっぺたを膨らませ真っ赤な顔して怒ってた。
「そういう事じゃない。彼女達……諦めてるんでしょ?諦めるのも諦めないのも本人達の自由でしょ?でも椿は諦めてないんだよね」
「当たり前でしょ!私絶対うかりますから!」
「ならいざこざは得策じゃない。三年後タカラジェンヌになるんなら、周りはみんなお客様じゃん。」
「サツキ……」
「ん?違う?彼女達が夢を諦めるなら私達は代わりに叶えにいかなきゃならないんじゃない?いつか絶対苦しい時がくるよ」
「……だって」
「椿……」
椿をぎゅうっと抱きしめサツキは言った。
「苦しい時がくるよ。必ず……その時共に頑張り諦めざるをえなかった彼女達の声は、必ず必ず私達に力をくれる」
「ごめん……」
まさか庇われると思わなかった彼女達は椿に向かっていった。
「ごめん、制服……着てるもんね!それに20枚レポートあるし、まっすぐ宿にかえるよ」
会場には割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
この場内アナウンスはトップスターの栄光だ。
今回は花組の公演だから、嶋田巴さん。彼女はアウトローをやらせたら宝塚随一と言われる程の個性の持ち主。
「出待ちしたかったー」
「私達音楽学校受けるんだよ?ダメに決まってるじゃん」
「ばれんかったらいいんちゃう?」
きっとこういう緩い考え方を雨情先生は怒ってるんだよなって思いながら、言うべきか悩んでいたら、いたー。正義感の塊!
「ちょっとあなた達!出待ちなんてダメに決まっているでしょう?皆に迷惑かけるき?」
芹澤 椿はクラスの副委員長だ。桜華の僕に近いのだが、別段悪気はないし一緒にうかれば同期になる。なるべく上手くやりたい。
「まあまあ椿、本気じゃないって」
ねえ、とクラスメートに声をかけた。
「別に皆が宝塚に入りたい訳じゃないし、諦めてる人だっているんだよ?人の気持ちとかどうでもいいの?」
「いってないでしょう?そんな事!」
「いってるじゃん!」
やばい
やばいどうしよう……。
雨情先生にバレたらまずい。
「やめなよ」
壁にもたれ掛かってたサツキはまず椿をとめた。
「サツキちゃんなんで肩持つの?」
椿はほっぺたを膨らませ真っ赤な顔して怒ってた。
「そういう事じゃない。彼女達……諦めてるんでしょ?諦めるのも諦めないのも本人達の自由でしょ?でも椿は諦めてないんだよね」
「当たり前でしょ!私絶対うかりますから!」
「ならいざこざは得策じゃない。三年後タカラジェンヌになるんなら、周りはみんなお客様じゃん。」
「サツキ……」
「ん?違う?彼女達が夢を諦めるなら私達は代わりに叶えにいかなきゃならないんじゃない?いつか絶対苦しい時がくるよ」
「……だって」
「椿……」
椿をぎゅうっと抱きしめサツキは言った。
「苦しい時がくるよ。必ず……その時共に頑張り諦めざるをえなかった彼女達の声は、必ず必ず私達に力をくれる」
「ごめん……」
まさか庇われると思わなかった彼女達は椿に向かっていった。
「ごめん、制服……着てるもんね!それに20枚レポートあるし、まっすぐ宿にかえるよ」
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