タカラジェンヌへの軌跡

15アンディオールが出来てない

「バランセ3回転！」
「右足プリエってなんど言えばわかんのぉぉぉぉぉ！」

「だから、そこは違う。左足が前、ちょっと浮かせろ。左手も下だろ。すみれ！何顔を隠してる」
　ちょっと浮かせろって言われても、浮かせてるつもりだし……
　
「基礎の基礎だろー。手はアラベスクだろ、下がる方の手がお前は逆なんだよ。そこから
「トンベ、プリエ、デベロッペ」

　おまぇ――――――――――――――。
「雨情先生血管きれそうだわ……。こそこそ言ってきたのはサツキだ。私もサツキもクラシックバレエは得意。


「雨情先生早いってば」
　すみれは必死だ。次のテストは本役取りたい！
「いいか1　２　３　のタイミングだ。アントゥールナン　パドゥバスク　アンナバン　アントゥールナン」
「違う、脚を外に」
「かかとは前」
「アンディオールができてなーい」
　
「ちょっと休憩、お前らなぁ、柔軟毎日してるか？」
　下を向く子、胸張ってイエスという子様々だ。

「さくら見てみろ。あのくらい高く足が上がれば綺麗だろ。ばねが半端なく強い。それに誰か気づいているか？アイツ今伸びてるぜ。2か月後が楽しみだよなぁ」

　2か月後……
　発表会のテストも2か月後だ。

　さくらの希望は娘役、敵じゃないと思っていた。でも元々は……男役だ。

　のんびりとしていた気分が、一気に締まる気がした。
「さぁもう一度やり直そうか！
　先ずはお手本を見せる。テストでは事前に振りは教えてくれない。
　一度見て出来るようにならなければチャンスはないと思え！」

　

「じゃぁ次【ジャンプ】だ。アッサンブレいくぞ」

　一列に並べ、テンポに合わせて誰かがつっかえるまで永遠だ。

「すみれ足ひっぱるなよ」
　
もう一度お前のために説明しておくと言うと、実際にやりながら一つ一つ丁寧に教えてくれた。
片足を滑らせてジュテのかんじで床から離し軸足でジャンプ、5番プリエで着地。それを順番にどんどん行くぞ。

「つっかえた奴は抜けろ。付き合ってられんからな」


　最後まで頑張れたのは【桜華】【夏井】【高井】【南條】以上四名。脱落者26名だった。

　30分休憩、次は神代のモダンダンスだ！
　
　さくらの身長が伸びている……。確かに、この前神代先生も言っていた……。

「伸びたらアイツはこえーよ。おまえら皆食われるぜ。今のうちにつぶしとくか？」
　私達は神代先生特有の冗談だと思ったけれど、もしかしたら……。
　

　宝塚は9割が女のお客さんだ。同性の目から見て目を引くやつが、一番強い。