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第五章
9 最後の賭け3
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「優しくするのをやめる?」
ゆっくり反芻するように東條は会話を繋いだ。
「セックスする時に優しくしなきゃって思うのをやめようよって意味かな。僕だって不安になるよ。僕じゃ大和さんの欲望を満足させてあげられないなんて、そんなのドMの恋人持つ意味ないからさ。それに優しくセックスされてもあんまり、感じないんだ」
「感じない?」
悲しそうな表情を唇を嚙んで押し殺し、ポーカーフェイスを貫こうとする恋人に、溺愛の気持ちが溢れてくる。首を少し上にあげれば背中側がじんわりと熱くなり、あぁこの男を愛しているのだ――と自覚する。
「僕の本能があなたに喰いついた。あの日、声を聞いてあそこが濡れたような気がしたなんて、運命だと思った……。だから僕の身体で欲を解消して欲しい。他の誰の体にも触らないで欲しいんだ」
それを聞いて無理矢理四つん這いにさせた東條は、葵の腰を両手ですーっと撫で、背中に神経を集中させる葵の背骨を、自身のとがらせた舌先でお尻の割れ目から何度もなぞった。
「ヒッ」
小さな声を上げると東條の大きな手が葵の睾丸を握り、想像以上に力が加えられた。
「潰れちゃう、やめて」
耳元で悪魔がささやいた。
――潰れたっていいじゃないか。何か困るのか?
東條は葵を見つめて目を細めて、「ああ成程」と諦めたような自嘲めいた表情で言った。
「あぁ誰かを孕ます事が出来なくなるもんなぁ」
ゆっくりと手を放していく。
「ちがっ」
瞬間首を後ろに回したが、東條の目を確認するより早く、東條の腕によって葵は枕に顔を押し付けられた。
東條の諦めた顔が……フェイクではないのだ。と感じた葵は、覚悟を決めた。
息を飲む。空気だけがごくりと喉を通っていった。
「なら潰せよ」
枕の隙間から精一杯の声を張り上げ、愛を叫んだ。
「僕は一生お前以外と肌を合わせない。誰のことも抱かない。だからお前が不安なら玉なんか潰せばいい。決して誰にも抱かれない。だからお前がそんなに不安なら貞操帯でもつければいい。何なら首輪でもしてやろうか」
「首輪?」
東條の声が若干上ずったのを葵は見逃さなかった。
「そう、首輪だよ。付けたいの?」
東條の目がギラギラと揺れ動いた。
葵は四つん這いのまま、少しだけの身体を反り返らせると手で自身の首を撫でた。
わからない程度に少しずつ煽っていくスタイルは葵の得意とするものだ。
背中にあたる東條のペニスが更に質量を増した。
――そうか、あれだけ僕を取り合いになったのは、きっと僕が無自覚で煽っていたせいなんだ。
僕は僕だけのご主人様を28年探していた。
自分とは関係の無い所で勝手に修羅場を繰り返し、なんどもクビになった。僕はなんて運が悪いのだろうと思っていた。
しかし実際、運が悪いのは僕ではないのだと気がついた。それは彼らの方だ。
散々獲物をちらつかされて、好き放題煽られて、それなのに本気になったとたん僕に君達は違うと烙印を押された彼らの方じゃないか。
ずっと喉につっかえていた物がスッと胃に落ちる感覚を味わった。
あー僕はこの憐れなドSと出会うが為に、今まで色んな男を練習台にしてきたのだ。
煽ってあげるよ。
「チャンスは今しかないよ。その棚に首輪があるの知ってるよ。大和さん。それともそれは僕のじゃないのかい?」
大好きなバリトンボイスが威圧するように上から降った。
「一度嵌めたら風呂場以外では俺の許可無く外せないのだぞ」
静まり返った室内に皮ベルトの金属音が響いていた。
「だからドM舐めんなっていっただろ!」
髪を掴まれ、無理矢理立たされた葵の顔は恍惚の表情で、それはただ一人の男への愛の告白だった。
ゆっくり反芻するように東條は会話を繋いだ。
「セックスする時に優しくしなきゃって思うのをやめようよって意味かな。僕だって不安になるよ。僕じゃ大和さんの欲望を満足させてあげられないなんて、そんなのドMの恋人持つ意味ないからさ。それに優しくセックスされてもあんまり、感じないんだ」
「感じない?」
悲しそうな表情を唇を嚙んで押し殺し、ポーカーフェイスを貫こうとする恋人に、溺愛の気持ちが溢れてくる。首を少し上にあげれば背中側がじんわりと熱くなり、あぁこの男を愛しているのだ――と自覚する。
「僕の本能があなたに喰いついた。あの日、声を聞いてあそこが濡れたような気がしたなんて、運命だと思った……。だから僕の身体で欲を解消して欲しい。他の誰の体にも触らないで欲しいんだ」
それを聞いて無理矢理四つん這いにさせた東條は、葵の腰を両手ですーっと撫で、背中に神経を集中させる葵の背骨を、自身のとがらせた舌先でお尻の割れ目から何度もなぞった。
「ヒッ」
小さな声を上げると東條の大きな手が葵の睾丸を握り、想像以上に力が加えられた。
「潰れちゃう、やめて」
耳元で悪魔がささやいた。
――潰れたっていいじゃないか。何か困るのか?
東條は葵を見つめて目を細めて、「ああ成程」と諦めたような自嘲めいた表情で言った。
「あぁ誰かを孕ます事が出来なくなるもんなぁ」
ゆっくりと手を放していく。
「ちがっ」
瞬間首を後ろに回したが、東條の目を確認するより早く、東條の腕によって葵は枕に顔を押し付けられた。
東條の諦めた顔が……フェイクではないのだ。と感じた葵は、覚悟を決めた。
息を飲む。空気だけがごくりと喉を通っていった。
「なら潰せよ」
枕の隙間から精一杯の声を張り上げ、愛を叫んだ。
「僕は一生お前以外と肌を合わせない。誰のことも抱かない。だからお前が不安なら玉なんか潰せばいい。決して誰にも抱かれない。だからお前がそんなに不安なら貞操帯でもつければいい。何なら首輪でもしてやろうか」
「首輪?」
東條の声が若干上ずったのを葵は見逃さなかった。
「そう、首輪だよ。付けたいの?」
東條の目がギラギラと揺れ動いた。
葵は四つん這いのまま、少しだけの身体を反り返らせると手で自身の首を撫でた。
わからない程度に少しずつ煽っていくスタイルは葵の得意とするものだ。
背中にあたる東條のペニスが更に質量を増した。
――そうか、あれだけ僕を取り合いになったのは、きっと僕が無自覚で煽っていたせいなんだ。
僕は僕だけのご主人様を28年探していた。
自分とは関係の無い所で勝手に修羅場を繰り返し、なんどもクビになった。僕はなんて運が悪いのだろうと思っていた。
しかし実際、運が悪いのは僕ではないのだと気がついた。それは彼らの方だ。
散々獲物をちらつかされて、好き放題煽られて、それなのに本気になったとたん僕に君達は違うと烙印を押された彼らの方じゃないか。
ずっと喉につっかえていた物がスッと胃に落ちる感覚を味わった。
あー僕はこの憐れなドSと出会うが為に、今まで色んな男を練習台にしてきたのだ。
煽ってあげるよ。
「チャンスは今しかないよ。その棚に首輪があるの知ってるよ。大和さん。それともそれは僕のじゃないのかい?」
大好きなバリトンボイスが威圧するように上から降った。
「一度嵌めたら風呂場以外では俺の許可無く外せないのだぞ」
静まり返った室内に皮ベルトの金属音が響いていた。
「だからドM舐めんなっていっただろ!」
髪を掴まれ、無理矢理立たされた葵の顔は恍惚の表情で、それはただ一人の男への愛の告白だった。
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