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第五章
1 月下香の夜花
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◇
東條は、目の前で丸くなるように蹲る葵の膝をぎゅっと抱える腕を、ゆっくりと外した。
膝がしらがピクンと動いて、一生懸命隠しているのだろう、わずかに見え隠れする怯えた顔が、東條の加虐性に火をつける。
真っ白い脚にキスをすると、怯えるように震える獲物の脚を左右に大きく開き、じっと見つめた。
秘部を露にする葵の匂い立つ色気は、どこにいても、どんな男でも容易く落とすことが出きるだろう。
そのくらい、妖しい魅力を持っていたし、意思のある目に、また征服欲がそそられた。
それでも、なぜかその一線が超えられない。
「葵くん……」
「また、君ですか?」
僕は軽くすねて見せたが、本音を言えば、君でもなんでもいい。
「あお……い」
「はい」
僕は元来勘がいい。
こんな時はそれを僅かに後悔する。東條は墓地で見た時より、ずっと苦しそうな顔をしていたからだ。
「大和さんって呼んでいいですか」
チラリと東條の視線が動き、柔和な葵の視線と絡み付く。
「ああ」
「苦しいですか? 僕が苦しめている?」
「そうじゃない」
必死になって否定してくれることに僕は安堵を覚えた。
「濡れてます。中が貴方を求めているんです」
「葵は、俺に、満たしてほしいのか?」
「あなたは挿れたくないんですか? 僕が恋人じゃないから? それならそれでいいですよ。あなたが僕を恋人だと思えないのは当たり前です。だって覚えてないのですから」
「葵……そうじゃ……」
「名前って、愛撫と一緒なんですって。名前を呼ぶと愛情のフェロモンが出るんです。だから、大和さんが僕を一生懸命、葵って呼んでくれる。それだけで僕は今幸せなんですよ」
「そうじゃなくて、俺は、葵とセックスした記憶はなくても、紬の記憶は溢れる程あるんだ。それがお前に申し訳なくて……」
「溢れるほど……ですかぁ。妬けるなぁ」
「……すまん」
「いいえ……」
葵の表情は東條のように苦しいものでは無かった。
彼が見ているのは、過去でも今でもなく、きっと未来だったからにほかならない。
「セフレって知っていますか?」
「セフレ?」
「オモチャ……でもいいですよ」
それには明らかに動揺していた。
「ばかを言うな」
全くの躊躇もなく否定する東條に、葵の心臓が喜びでどくんと跳ねる。
「そんな事言ってない。お前が嫌じゃないのかと聞いたつもりなんだ」
きょとんとした目をして東條を見つめ、けらけらと笑いだした。
「僕ね、声フェチなんですよ。貴方に初めて会った時、体中に電気が走ったみたいでした。僕たち、同じ会社に居たんですよ。僕は貴方をありがとうの君って呼んでいました。だから名前もわからない貴方の声に惚れて、いつか僕を見てくれたなら、なんて事を夢見ていたような気持ち悪い男です」
「違う。葵は可愛すぎるくらいかわいいだろう。自分のこと気持ち悪いとか言わないでくれ」
わずかな沈黙がこんなに怖いと思ったのはいつぶりだろう。
「よく分からない。俺はお前を抱きたいし、お前をかわいいと思う。でも今の俺にお前の記憶はない」
脚を閉じ、濡れる秘部を隠すと、嗜好を満足させる玩具のつもりでもいいから、飽きるまで抱いてくれないかと、煽る目で、東條を見た。
それでも東條はふんぎることが出来なかった。
葵の右手が拳になって東條の胸を叩いた。
「セックスしてぇって言ってんじゃん。今迄は紬君の代わりだったから、もうあんたの中に僕はいなかったから、だから大人しくしてた。今は三淵葵だから遠慮はしない」
普段大声で叫ぶことのない葵が、怒鳴り散らす様に叫んだ。
「葵?」
東條の喉が嚥下した。わずかだが東條の腕に血管が浮かぶ。体中の血が沸騰している様だった。
「一度捨てた夢だよ。僕が僕としてあんたに愛される、一度全部諦めた夢だ! でも紬君はもういない、大和さんはもう分かっているんでしょ。なら、僕を愛せよ! 僕を抱けよ! あんたの性癖、僕以外で埋めようとしてんじゃねぇよ」
墓地でも見た。
泣き叫ぶ葵を見て、この子はこんなに熱いのだと、高揚する。
「愛とかバカじゃないの?」
葵の精いっぱいのプライドだった。
葵は嬉しそうにフフフっと笑い自分の脚に付いている淡紫色の斑点を撫でた。
東條が苦しそうな表情で葵につけた痕である。
「嫉妬でおかしくなってよ。あなたの匂いを他のやつがつけるのを僕が嫌がるように、僕に他の男の匂いが付くのを嫌がってくれよ」
「嫌に決まっている。これ以上苛めるな、葵。お前の存在自体が綺麗な花だと思っているのだよ。俺たちは群がる蝶だ。俺以外にもその蜜をすいたい奴がごまんといると思うと嫉妬でおかしくなるに決まっている」
苦しそうな東條の顔は葵を心底震えさせるものだった。
「なら抱いて」
「壊してしまう」
「壊せよ、あんたにしか壊せない」
「葵……後悔する……幸せになれない」
「後悔しない」
「こんな俺とじゃ、こんな二重人格みたいな俺とじゃ、葵は幸せになれない」
「人の幸せ勝手に決めるな! 僕は僕を捨てた時も、後悔はしないって言った。人生はいくつもの選択肢がある。選ぶのはいつも自分だ。だからどんな結果でも後悔なんかしない」
「選ばなかったら良かったって思うかもしれないじゃないか」
「ほんと、グダグダ煩い。抱かれても抱かれなくても、もし後悔するんなら、僕は抱かれる方を選ぶ。でもって抱いて後悔してるあんたに、俺は幸せだって言ってやる! だから僕を諦める夢なんて……もう諦めろよ」
東條は黙って葵をきつく抱きしめた。
「だっらしねーなぁ、俺」
「今さらぁ? ただのドエスの執着お化けじゃん。声だけ最高の覚悟もないヘタレ」
「言うなぁ」
「憎まれっ子世に憚るからぁ、簡単には壊れない」
「お前かっこいいなぁ」
「それも今さらぁ?」
「ここに挿れていい?」
東條の太いものが葵の蜜壺にあてがわれた。
「童貞じゃあるまいし、急ぎすぎ。乾いちまったよ。濡らしてよ」
煽る目に小さな声で泣いてもやめないと囁いた。
「むしろ泣かそうか」
――大和さん? スイッチ……入った?
低く笑う地の底から響く声に、葵は背筋が凍る思いがした。
――煽り過ぎたか。
それでも今更だ。了承のサインのように東條の頬にキスをした。
葵の蜜壺にチューブの先端を当てると、そこに東條は不思議な液体を流し込み、それをバイブで押し込んた。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいい」
濡れてもいないそこに無理やり大きなバイブが入るのはもはや拷問だ。
「だめ、ナニコレ、イヤイヤ、」
腰が小刻みに動き出す。
「虫の様だな。痛いのは最初だけだ、我慢しろ」
東條は片足を葵の腹に軽く乗せると動きを封じ込め先端を執拗に攻め立てた。動けない葵には地獄以外の何物でもなく、今にも出そうなペニスの根元に東條によって何かを巻かれたのすら気付いていなかった。
東條の足が腹からどけられる頃には、大汗が吹き出し既にぐったりとした綺麗な葵がとろんとした目で辺りを見つめていた。
――いじめたい……。
性癖とは自制心では抑えることが出来ない、あらがえない不思議な生き物だと東條は分かっている。
今更変えようとも思っていない。
無理矢理立たせると逝きたい逝きたいと泣く葵に、近くに置いてあった鞭を振り下ろした。
これを葵に使った記憶は東條にはない。
でもこの性癖は、嫌って程覚えがある。
「痛い、いたっ、大和さん、待って――」
――最後の一発だ。
幸せそうに笑う東條は、小さなペニスを打った。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいい」
先端からじわじわと漏れる。
「気持ちいいなら、感謝の気持ちだと言っただろう。葵」
半開きの口から、涎と共にたれ落ちた言葉は嬉しいの四文字だった。
月下香の甘い蜜を垂れ流す夜花は、狂おしいほどに匂いたち、月の綺麗な今宵、ただ静かに妖しく、ひっそりと咲き始めた。
東條は、目の前で丸くなるように蹲る葵の膝をぎゅっと抱える腕を、ゆっくりと外した。
膝がしらがピクンと動いて、一生懸命隠しているのだろう、わずかに見え隠れする怯えた顔が、東條の加虐性に火をつける。
真っ白い脚にキスをすると、怯えるように震える獲物の脚を左右に大きく開き、じっと見つめた。
秘部を露にする葵の匂い立つ色気は、どこにいても、どんな男でも容易く落とすことが出きるだろう。
そのくらい、妖しい魅力を持っていたし、意思のある目に、また征服欲がそそられた。
それでも、なぜかその一線が超えられない。
「葵くん……」
「また、君ですか?」
僕は軽くすねて見せたが、本音を言えば、君でもなんでもいい。
「あお……い」
「はい」
僕は元来勘がいい。
こんな時はそれを僅かに後悔する。東條は墓地で見た時より、ずっと苦しそうな顔をしていたからだ。
「大和さんって呼んでいいですか」
チラリと東條の視線が動き、柔和な葵の視線と絡み付く。
「ああ」
「苦しいですか? 僕が苦しめている?」
「そうじゃない」
必死になって否定してくれることに僕は安堵を覚えた。
「濡れてます。中が貴方を求めているんです」
「葵は、俺に、満たしてほしいのか?」
「あなたは挿れたくないんですか? 僕が恋人じゃないから? それならそれでいいですよ。あなたが僕を恋人だと思えないのは当たり前です。だって覚えてないのですから」
「葵……そうじゃ……」
「名前って、愛撫と一緒なんですって。名前を呼ぶと愛情のフェロモンが出るんです。だから、大和さんが僕を一生懸命、葵って呼んでくれる。それだけで僕は今幸せなんですよ」
「そうじゃなくて、俺は、葵とセックスした記憶はなくても、紬の記憶は溢れる程あるんだ。それがお前に申し訳なくて……」
「溢れるほど……ですかぁ。妬けるなぁ」
「……すまん」
「いいえ……」
葵の表情は東條のように苦しいものでは無かった。
彼が見ているのは、過去でも今でもなく、きっと未来だったからにほかならない。
「セフレって知っていますか?」
「セフレ?」
「オモチャ……でもいいですよ」
それには明らかに動揺していた。
「ばかを言うな」
全くの躊躇もなく否定する東條に、葵の心臓が喜びでどくんと跳ねる。
「そんな事言ってない。お前が嫌じゃないのかと聞いたつもりなんだ」
きょとんとした目をして東條を見つめ、けらけらと笑いだした。
「僕ね、声フェチなんですよ。貴方に初めて会った時、体中に電気が走ったみたいでした。僕たち、同じ会社に居たんですよ。僕は貴方をありがとうの君って呼んでいました。だから名前もわからない貴方の声に惚れて、いつか僕を見てくれたなら、なんて事を夢見ていたような気持ち悪い男です」
「違う。葵は可愛すぎるくらいかわいいだろう。自分のこと気持ち悪いとか言わないでくれ」
わずかな沈黙がこんなに怖いと思ったのはいつぶりだろう。
「よく分からない。俺はお前を抱きたいし、お前をかわいいと思う。でも今の俺にお前の記憶はない」
脚を閉じ、濡れる秘部を隠すと、嗜好を満足させる玩具のつもりでもいいから、飽きるまで抱いてくれないかと、煽る目で、東條を見た。
それでも東條はふんぎることが出来なかった。
葵の右手が拳になって東條の胸を叩いた。
「セックスしてぇって言ってんじゃん。今迄は紬君の代わりだったから、もうあんたの中に僕はいなかったから、だから大人しくしてた。今は三淵葵だから遠慮はしない」
普段大声で叫ぶことのない葵が、怒鳴り散らす様に叫んだ。
「葵?」
東條の喉が嚥下した。わずかだが東條の腕に血管が浮かぶ。体中の血が沸騰している様だった。
「一度捨てた夢だよ。僕が僕としてあんたに愛される、一度全部諦めた夢だ! でも紬君はもういない、大和さんはもう分かっているんでしょ。なら、僕を愛せよ! 僕を抱けよ! あんたの性癖、僕以外で埋めようとしてんじゃねぇよ」
墓地でも見た。
泣き叫ぶ葵を見て、この子はこんなに熱いのだと、高揚する。
「愛とかバカじゃないの?」
葵の精いっぱいのプライドだった。
葵は嬉しそうにフフフっと笑い自分の脚に付いている淡紫色の斑点を撫でた。
東條が苦しそうな表情で葵につけた痕である。
「嫉妬でおかしくなってよ。あなたの匂いを他のやつがつけるのを僕が嫌がるように、僕に他の男の匂いが付くのを嫌がってくれよ」
「嫌に決まっている。これ以上苛めるな、葵。お前の存在自体が綺麗な花だと思っているのだよ。俺たちは群がる蝶だ。俺以外にもその蜜をすいたい奴がごまんといると思うと嫉妬でおかしくなるに決まっている」
苦しそうな東條の顔は葵を心底震えさせるものだった。
「なら抱いて」
「壊してしまう」
「壊せよ、あんたにしか壊せない」
「葵……後悔する……幸せになれない」
「後悔しない」
「こんな俺とじゃ、こんな二重人格みたいな俺とじゃ、葵は幸せになれない」
「人の幸せ勝手に決めるな! 僕は僕を捨てた時も、後悔はしないって言った。人生はいくつもの選択肢がある。選ぶのはいつも自分だ。だからどんな結果でも後悔なんかしない」
「選ばなかったら良かったって思うかもしれないじゃないか」
「ほんと、グダグダ煩い。抱かれても抱かれなくても、もし後悔するんなら、僕は抱かれる方を選ぶ。でもって抱いて後悔してるあんたに、俺は幸せだって言ってやる! だから僕を諦める夢なんて……もう諦めろよ」
東條は黙って葵をきつく抱きしめた。
「だっらしねーなぁ、俺」
「今さらぁ? ただのドエスの執着お化けじゃん。声だけ最高の覚悟もないヘタレ」
「言うなぁ」
「憎まれっ子世に憚るからぁ、簡単には壊れない」
「お前かっこいいなぁ」
「それも今さらぁ?」
「ここに挿れていい?」
東條の太いものが葵の蜜壺にあてがわれた。
「童貞じゃあるまいし、急ぎすぎ。乾いちまったよ。濡らしてよ」
煽る目に小さな声で泣いてもやめないと囁いた。
「むしろ泣かそうか」
――大和さん? スイッチ……入った?
低く笑う地の底から響く声に、葵は背筋が凍る思いがした。
――煽り過ぎたか。
それでも今更だ。了承のサインのように東條の頬にキスをした。
葵の蜜壺にチューブの先端を当てると、そこに東條は不思議な液体を流し込み、それをバイブで押し込んた。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいい」
濡れてもいないそこに無理やり大きなバイブが入るのはもはや拷問だ。
「だめ、ナニコレ、イヤイヤ、」
腰が小刻みに動き出す。
「虫の様だな。痛いのは最初だけだ、我慢しろ」
東條は片足を葵の腹に軽く乗せると動きを封じ込め先端を執拗に攻め立てた。動けない葵には地獄以外の何物でもなく、今にも出そうなペニスの根元に東條によって何かを巻かれたのすら気付いていなかった。
東條の足が腹からどけられる頃には、大汗が吹き出し既にぐったりとした綺麗な葵がとろんとした目で辺りを見つめていた。
――いじめたい……。
性癖とは自制心では抑えることが出来ない、あらがえない不思議な生き物だと東條は分かっている。
今更変えようとも思っていない。
無理矢理立たせると逝きたい逝きたいと泣く葵に、近くに置いてあった鞭を振り下ろした。
これを葵に使った記憶は東條にはない。
でもこの性癖は、嫌って程覚えがある。
「痛い、いたっ、大和さん、待って――」
――最後の一発だ。
幸せそうに笑う東條は、小さなペニスを打った。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいい」
先端からじわじわと漏れる。
「気持ちいいなら、感謝の気持ちだと言っただろう。葵」
半開きの口から、涎と共にたれ落ちた言葉は嬉しいの四文字だった。
月下香の甘い蜜を垂れ流す夜花は、狂おしいほどに匂いたち、月の綺麗な今宵、ただ静かに妖しく、ひっそりと咲き始めた。
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