愛の鎖が解ける先に

赤井ちひろ

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第三章・凶器という名の愛

9 新開の底3

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 「大和さんは気が付いていないかもしれないけれど、僕、あなたがほかの人に笑いかけるのも、本当は嬉しくない。僕の思いは……おそらくきっとどす黒い」
 葵は今まで誰のことも好きではなかった。葵のフェチは少々厄介だ。自分に向けるいやらしい声にペニスは勝手に反応し、長くて太いものに串刺しにされる妄想からどうにも逃げられない。
 それなのにストライクゾーンがどうにも狭い。
 声で体がぞわっとしなきゃ、どんなにイケメンでも、どんなに愛してるって言われても抱かれたくなんかない。
 だから今まで童貞だったんだ。前も後ろも初物。
「葵、今から俺にすべてを任せられるか?」
 静かに頷いた葵は、何かを期待するように目をうるうるさせていた。
「ルールを決めよう。葵は俺のことを大和さんっていうだろ?」
「うん、言うけど?」
 だって10くらい違うじゃないか。
「ヤマトだ。言ってごらん。我慢できなくなったらヤマトって呼び捨てて」
「え? 無理だよ」
 耳元に唇が近づいてくる。
「俺の言うことに逆らうの?」
 まったりとした声は、粘着質を持って絡みつく。ゾクッと全身が震えた。
「だって」
「もしかして口答えはわざと? お仕置きされたかったのかな? 気が付かなくてごめんなのだよ」
 東條は手枷足枷を外し葵を下ろし、小さな声でおすわりと言った。
 その声に反応するように、ベッドにぺちゃんと正座した。
「イイコ。ヤマトだ、言ってみろ」
「……ヤマト……」
 葵は命令に服従するように小さな声で言った。
「出来た。お前はいい子だね」
 東條の大きな手が葵の頬に触れ、その骨ばった指は歯茎や喉仏を執拗に擦り上げた。
「可愛い、可愛いよ、葵。ご褒美をあげる」
 ご褒美に反応するように乳首がつんと立つのが東條にも良く判った。
「いいか、葵。いい子にしていたらもっとご褒美をあげる。だから俺の言う事を聞いて、いい子にしような」
 東條の目が色に狂っていく。
「葵、そこの壁に手をついてお尻を出して」
 東條の右手には短めの鞭が握られていた。
「今開発しているのはSMで使える軽い鞭なんだ。しなりがよくて、小さな突起がたくさんついている。特殊加工付きだ」
 葵は東條が何をしているのか良く知らない。
「このフロアは技術開発部が独占していてね、社名が表わすように恋愛で使用できるような可愛らしいローターのようなものもあるが、俺や黎人の様にマニア向けを開発する奴もいる。使用感も大切だから本人たちにその手の性癖がないと流石に務まらない。一応俺はこの部署では顔が利く方でな、おもちゃを開発したら廊下にカワイ子ちゃん募集中と張り出すのだよ」
 お尻が小刻みに震える。
「カワイ子ちゃん募集中?」
「仕事だ。お前ひとりで出来る訳がないだろう」
「だからって」
「仕事に口を出すな。壁に手をついて尻を出せと言っているだろう」
 鞭が葵の横っ腹にしなるように落ちた。
「ンアァァァァァァ。僕だけにして」
「無理に決まっているだろう、しつこいぞ」
「いやなんだってば――」
 肩で息を吸う。打たれた場所からじわじわと痒みと痛みが増してくる。チリチリ焼けつく感覚が、苦しくてたまらない。
「仕事だと言っているのだよ」
 拘束されながら、葵は頭のねじが飛ぶのを感じた。
「仕事だとか知った事かよ。僕だって嫌だって言ってんじゃないか、僕だけにしてよ。どんな酷い事でも受け入れるから」
 東條はびっくりしたようにその場で動かなかった。
「そうか」
 東條はそう小さく頷くと、今度はさっきより強く、連続して何度も小さな双丘に振り降ろした。
「んぁ――」
 双丘がわずかに痒い。痛みは我慢できても痒みはなかなか我慢ができない。
「痒い、大和さん、痒い、掻いてぇぇぇぇぇ」
「威勢のいいのはさっきだけか。一人で全部受け止めるんだろ。それならこのくらい我慢しろ」
 ――苦しさに顔が歪んだ。
「この突起に、うっすらとだけ催淫剤が塗ってある。痛いだけじゃ辛いだろう? 少しすればもっと痒くなる」
 そのまま口元を歪ませながら二回三回と真っ白い背中に赤い筋がついていく。
 葵の絶叫が部屋中に響きその声に興奮して、東條のペニスは痛いほどにそそり立ち、既にズボンの前がパンパンだった。
 突き出している葵の尻にその硬いのを押し付けると、ざらつくミミズばれを軽く噛んだ。
「痛い」
 まるでそれが合図かのように、前に手を回しむんずとペニスを掴むとゆっくりと扱き、逝く直前で止められた。
「そんなとこで止めないで」
「お前にそんな権利はない」
 今度は双丘をゆっくりと揉み始め、蜜壺の襞に指をあて、回転させるように先端を押込み、快楽を与えた。
「もっと欲しいのか? はしたない子なのだよ」
 痛みで乾いてしまったアナルに丹念にローションを塗りこんでいった。
「今度はこれを葵の可愛いここに入れよう」
 黒色の3センチ大の球体は東條の手の中でローションにまみれてぐちょぐちょになっていった。
 
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