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第一章
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しおりを挟む【東條大和サイド】
ここは銀座の8丁目から2つ小道を入った角にある8階だてのビル。黒とシルバーのスタイリッシュな建物の中に1歩入り真っ直ぐ抜けた先には男女別エレベーターホールがある。そこではマネキンが丁寧に出迎えてくれる。朝の45分だけ特別にみられるショータイムだ。2階にあるランジェリー部門の新作やコンペのお披露目に、その日マネキンが脚を通す。今日のマネキンは170センチそこそこで、モデルとしては小さめ。だが、本日のランジェリーはランジェリー部エース新谷の新作ボクサーパンツ。何やら仕掛けがあるアイツらしい作品だった。
ラブ・ファントムという会社。
その7階最上階ひとつ下で大人のオモチャを作っている、その東京第一技術課主任が俺の役職だ。
名前を東條 大和。35歳、変わり者で通っている。
「おい大和、昼飯食いにいかねー?」
「あー、もうそんな時間か」
これは同僚の高見沢、唯一俺の過去を知る仲間。
「今日の献立はなんふだったのだよ」
俺は鈴口にあたる部分の振動を微調整しながら、高見沢に声をかけた。
「ここがもう少し開くと男女共用でいけるんじゃないのか?」
高見沢は先端を指で摘まみ左右に広げた。
「あー、共用はやめた」
「そなの?」
「このアンケート見てみてみろよ。購入した人の性別の7割が男性。その中でも恋人に使いたい人がうち6割、更に恋人の性別が異性であるにはいと答えた人は、そのうちの6割だぞ」
「どういうこと?」
高見沢は頭の中に? を広げた。
「ほんとにバカだな。この世には思ったより同性愛者がいるということだ」
「大和ざっくりすぎでしょ。しかも人前でそのマグナムぶっぱなすの止めてくれる?」
嫌そうにする高見沢に舌打ちをすると、机の上を片付け今制作中の、あんあん言わせ隊(仮名)をしまうと、冷たくなったコーヒーを一気に飲みほし社食用のチケットを片手に歩きだした。
「先に行っていてくれ」
……。
「鏡見なくてもカッコいいよ、大和君」
からかう高見沢を嫌そうに睨み、腰を上げた。
「そう言うところが嫌いなのだよ。ほっておいてくれないか」
「ってかさ、誰が想像する? こんなイケイケなモテ男なのに片思いとか。さっさとコクれば良いだろう? 毎日誰かにコクられてるくせに、慣れてんじゃないのかよ」
高見沢は俺にそういうがそんな簡単な話ではない。
「うるさいのだよ」
「はいはい、今日のご飯はハンバーグだよ。さっさと行こうぜー」
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