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序章・見えないエール
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頭の上でされる会話に俺はたじたじだ。年齢イコール童貞。恋はそれなりにしたし、ベッドインだってある。ただ何故かいつも邪魔が入り最後までできたことは無い。そのうち……一生童貞なのではないかと諦めのような気持ちが生まれた。
「大したサイズではないし今回のコンペの下着ならそのままでいいだろう」
川崎さんの普通に明るい、なんか事務連絡みたいな口調に僕は脚をあげさせられ、下着をつけられた。
後ろにポケットのあるかわいいデザイン。色も国旗を思わせるカラーで、8種類程あった。その中からチャラ男が肌にあてながら着る色を決めていた。中心部に矢印のようなマークが来ている。
「国旗風ですか?」
「そう、クエート風だね。ペニスちっちぇーから、イイ感じになんじゃん」
褒められてるのか、けなされているのか分からない状態に、若干メンタルがやられた。
「ここがエレベーターホールだ。この台が君のお仕事のお立ち台。さあ登ってくれたまえ」
「はい……」
緊張してきた。この容姿だ、じろじろ見られるのは慣れてるし……この容姿で勝手に取りあいされるのも慣れているけれど、なんにもしないでお立ちん坊は始めてだ。
「8時45分にはあそこのエレベーターホール入口が閉まる。その時間までが毎日の業務だ。これがクリア出来たら、次は社食に案内するよ」
「はい……」
気合いいれろよ、俺……。ここで失敗したら、もう家賃を払う手立てはないんだ。
「あっそうそうサインしたから解っているとはおもうけど、今日はおさわりありだからね」
「………………は――?」
「君、サインしたからね、契約不履行は違約金発生するから気をつけて」
※面接日当日に限りおさわり解禁。
※違約金は向こう1年ただ働き。
――しっかりサインをしてしまっている。
――ガッテム!
女のような色白な肌に、細い首。ほんのり色づく唇の繊細さとは裏腹に頑固で真っ直ぐな性格。決めたら引かないは信条だ。
では僕たちは下着の反応を端から見させて貰うとしよう。
2人は僕からは何を喋っているのかわからない場所までいき、コンペの出品者ようテーブルに尻を乗せた。
【川崎・新谷サイド】
「行儀が悪いな、新谷君、こちらに椅子があるよ」
ニヤニヤ口元を歪ませ新谷はだってさーと話始めた。
「下着の反応ね――、川崎さん。やり方がイヤらしんだもんなー。いつもならエレクト時なんか計んないし、面接に金なんか出さないじゃん。しかもご丁寧に偽の書類にサインまでさせてさ」
「おやバレていたか。解っていて話に乗る君のそう言う所が好きだよ」
「あざっす」
ネクタイを閉め直し、時計をちらりとみやった。
「53分、久しぶりの上玉なんでね、面接代金のポケットマネーなんか惜しくもないよ。さぁ童貞君だったのはびっくりだったが、女を知らないまま男を知っていくとか最高すぎだろぅ」
「やーらしーすねー。川崎さん変態ジジィ。でも手籠めはダメっすよ」
「今時そんなことをしたらセクハラで将来を棒に振るだろう」
「どうだかぁ」
「たまには君のチンコもいたぶってあげようか? 同意ならセクハラじゃないのだが……」
「いやいっすわ、されんのは興味ねーす。俺は下着フェチなんでぇ、脱いだ後には興味ねぇ。今日は誰かがアイツの我慢汁とか出させてくれたら最高なんすよねー、色変わりするような特殊加工してあるんすよ。しかも仕掛けもあるっすよ。下着売り場のマジシャンめざしてんで」
何を話しているのか俺は不安を感じながら、それでも時間は無情にも過ぎていく。
55分、エレベーターホールに続く入口の扉が開き、一気に人が押し寄せた。
俺に向かって一気に加速する。
この台から逃げることは面接の失敗を意味する。
――絶対に動けない。
ドキドキする。
目の前で開く扉が、風をぶわぁっと引き入れた。甘い花の香りに草の匂い、白い雲のフワフワ感。射すような太陽光、そんなチリチリした感じが体の毛穴という毛穴から体の芯に向かって入り込んでいくそんな感じ。
実際には面接で川崎さんに言われた通り、空調完備で暑くも寒くもないのだけれど、多分この沢山の目が僕をそんな気分にさせていく。
だってこんな沢山の人の前でこの下着姿って、今さらながら、なんともとてつもなく恥ずかしい。
――あっ、人が角を曲がってきた。
――皆僕を見てる?
――いや見てないのか?
――見てるように映るだけか?
――自意識過剰なんだろうか、オシッコしたくなってきた気がするし、冷や汗が流れる気がする。
――マネキンってお喋り禁止だっけ……。
――あーきちんと聞いておけば良かった。
「大したサイズではないし今回のコンペの下着ならそのままでいいだろう」
川崎さんの普通に明るい、なんか事務連絡みたいな口調に僕は脚をあげさせられ、下着をつけられた。
後ろにポケットのあるかわいいデザイン。色も国旗を思わせるカラーで、8種類程あった。その中からチャラ男が肌にあてながら着る色を決めていた。中心部に矢印のようなマークが来ている。
「国旗風ですか?」
「そう、クエート風だね。ペニスちっちぇーから、イイ感じになんじゃん」
褒められてるのか、けなされているのか分からない状態に、若干メンタルがやられた。
「ここがエレベーターホールだ。この台が君のお仕事のお立ち台。さあ登ってくれたまえ」
「はい……」
緊張してきた。この容姿だ、じろじろ見られるのは慣れてるし……この容姿で勝手に取りあいされるのも慣れているけれど、なんにもしないでお立ちん坊は始めてだ。
「8時45分にはあそこのエレベーターホール入口が閉まる。その時間までが毎日の業務だ。これがクリア出来たら、次は社食に案内するよ」
「はい……」
気合いいれろよ、俺……。ここで失敗したら、もう家賃を払う手立てはないんだ。
「あっそうそうサインしたから解っているとはおもうけど、今日はおさわりありだからね」
「………………は――?」
「君、サインしたからね、契約不履行は違約金発生するから気をつけて」
※面接日当日に限りおさわり解禁。
※違約金は向こう1年ただ働き。
――しっかりサインをしてしまっている。
――ガッテム!
女のような色白な肌に、細い首。ほんのり色づく唇の繊細さとは裏腹に頑固で真っ直ぐな性格。決めたら引かないは信条だ。
では僕たちは下着の反応を端から見させて貰うとしよう。
2人は僕からは何を喋っているのかわからない場所までいき、コンペの出品者ようテーブルに尻を乗せた。
【川崎・新谷サイド】
「行儀が悪いな、新谷君、こちらに椅子があるよ」
ニヤニヤ口元を歪ませ新谷はだってさーと話始めた。
「下着の反応ね――、川崎さん。やり方がイヤらしんだもんなー。いつもならエレクト時なんか計んないし、面接に金なんか出さないじゃん。しかもご丁寧に偽の書類にサインまでさせてさ」
「おやバレていたか。解っていて話に乗る君のそう言う所が好きだよ」
「あざっす」
ネクタイを閉め直し、時計をちらりとみやった。
「53分、久しぶりの上玉なんでね、面接代金のポケットマネーなんか惜しくもないよ。さぁ童貞君だったのはびっくりだったが、女を知らないまま男を知っていくとか最高すぎだろぅ」
「やーらしーすねー。川崎さん変態ジジィ。でも手籠めはダメっすよ」
「今時そんなことをしたらセクハラで将来を棒に振るだろう」
「どうだかぁ」
「たまには君のチンコもいたぶってあげようか? 同意ならセクハラじゃないのだが……」
「いやいっすわ、されんのは興味ねーす。俺は下着フェチなんでぇ、脱いだ後には興味ねぇ。今日は誰かがアイツの我慢汁とか出させてくれたら最高なんすよねー、色変わりするような特殊加工してあるんすよ。しかも仕掛けもあるっすよ。下着売り場のマジシャンめざしてんで」
何を話しているのか俺は不安を感じながら、それでも時間は無情にも過ぎていく。
55分、エレベーターホールに続く入口の扉が開き、一気に人が押し寄せた。
俺に向かって一気に加速する。
この台から逃げることは面接の失敗を意味する。
――絶対に動けない。
ドキドキする。
目の前で開く扉が、風をぶわぁっと引き入れた。甘い花の香りに草の匂い、白い雲のフワフワ感。射すような太陽光、そんなチリチリした感じが体の毛穴という毛穴から体の芯に向かって入り込んでいくそんな感じ。
実際には面接で川崎さんに言われた通り、空調完備で暑くも寒くもないのだけれど、多分この沢山の目が僕をそんな気分にさせていく。
だってこんな沢山の人の前でこの下着姿って、今さらながら、なんともとてつもなく恥ずかしい。
――あっ、人が角を曲がってきた。
――皆僕を見てる?
――いや見てないのか?
――見てるように映るだけか?
――自意識過剰なんだろうか、オシッコしたくなってきた気がするし、冷や汗が流れる気がする。
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