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序章・見えないエール
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「あっいや、まあなんていうか……」
「待遇が破格ですもんね」
出されたナポリタンを食べながら、僕は募集要を眺めていた。
待遇は確かに破格だけど、なんかちょっと変わってる。
募集は2つ載っていた。
【マネキン募集】
勤務地・銀座8丁目
時間 ・8時~8時45分
日給 ・2000円
仕事 ・コンペ用下着モデル
休み ・月6日
【マネキン込み、食堂スタッフ】
勤務地・銀座8丁目
時間 ・8時~8時45分マネキン
10時~18時社食スタッフ
月給 ・手取り40万
休み ・月6
調理師資格不問
初心者歓迎
どちらも応募資格・
男性
容姿端麗
スリーサイズを記載した履歴書持参
写真添付いらず(当方にて撮影あり)
「お兄さんフリーターなんですか?」
「いやー、ちょっとクビに」
「クビ?」
僕は頭をかきかき恥ずかしそうに言った。
「クビなんて今時あるんですね」
何か言いたそうな顔に、僕は居心地の悪さを感じたが、「まあ色々……」と軽くにごした。
濃すぎずケチャップのうまみたっぷりのナポリタンは、昔食べていた味を思い出す。
「ご馳走さまでした。ここの定休日は」
存外美味しく、また来たいと思ってそう聞いた。
「私の趣味の店なんで、不定期です。本職が繁忙期でない時なら、基本土日祝が営業ですよ」
「また来ます」
ナポリタンを食べカフェオレを飲み終わると足早に席をたった。
カンカンカン、
階段をあがると下から大家のおばちゃんの声がした。
「来月更新ですよ?3ヶ月分前払いですから宜しくお願いしますね」
「はーい」
明るい声と満面の笑みで答えてみたものの、先立つ物はない。
部屋に入り鍵をかけ、冷蔵庫からミネラルウォーターを出すと、ベッドに腰掛けポケットから先ほどのチラシを出した。
会社名はtoy party group
調べてみたが黒い噂のない綺麗な会社だった。
「銀座かー」
僕は携帯を開くと、電話番号をタップした。
「はい、トイパーティー株式会社人事部佐藤です」
「あの……募集要項の載っているチラシを見て連絡させていただきました。ご担当者様いらっしゃいますか?」
「はい、少々お待ち下さい」
電話口から流れる保留音がドキドキを増長させる。
「お電話かわりました。川崎です。面接お受けできますが、よろしければ明後日朝の7時30分はいかがですか?受け付けにてお名前をお願いいたします」
「朝7時半ですか?」
「無理ですか?」
サクサク切られそうになり慌てていけますと叫んでいた。
当日、持ち物は写真無し履歴書
容姿端麗って位だから、一応身だしなみはそれなりに、髪もセットしたしイケてるはずだ。なんせ死活問題だ、受かりたい。
ただスリーサイズがいまいちわからない。
とりあえず書いてあとは素直に言おう。
嘘をつくより印象は良いだろう……。
地下鉄で銀座まで出て8丁目側に歩きだす。
携帯に打ち込んだ住所のままたどり着いた場所はえらくスタイリッシュなビルが建っていた。 ビルにはラブ・ファントムって書いてある。
「トイパーティーじゃない、どうしよう」
入り口でうろうろしていたら背後から声をかけられた。
「こんなとこで何をやっているのだよ」
低い朗々とする声の主をみやると、艶々の黒髪に切れ長の目をしたイケメンが立っていた。
聞いた事があるような懐かしい声がした。
余計なことを考えていた頭をぶんぶんと振ると、もう一度その人を見上げる。
「背ぇ高ー」
「何をやっていると聞いているのだよ」
「あっごめんなさい、聞いたことのある喋り方だなと思って。初めて会う方に失礼しました。この場所で面接だったんですが場所がわからなくて」
チラシを見ると、その男性は僕の手をとりビルの中につかつかと入って行った。
「あの……」
「黙れ、朝から煩いのは好きではないのだよ」
こわっっ。
「ここだ!」
連れてこられた先は応接室と書かれた扉の前だった。
「え?」
ドンドンドン!
すごい大きな音で応接室の扉を叩くと扉を開け言い放った。
「連れてきたのだよ。眠い、俺は帰る」
そこまで連れてくると男は踵を返して去っていってしまった。
ぼーぜんとする僕に、中からクスクス笑う声が聞こえた。
「ようこそ、ラブ・ファントムへ」
「待遇が破格ですもんね」
出されたナポリタンを食べながら、僕は募集要を眺めていた。
待遇は確かに破格だけど、なんかちょっと変わってる。
募集は2つ載っていた。
【マネキン募集】
勤務地・銀座8丁目
時間 ・8時~8時45分
日給 ・2000円
仕事 ・コンペ用下着モデル
休み ・月6日
【マネキン込み、食堂スタッフ】
勤務地・銀座8丁目
時間 ・8時~8時45分マネキン
10時~18時社食スタッフ
月給 ・手取り40万
休み ・月6
調理師資格不問
初心者歓迎
どちらも応募資格・
男性
容姿端麗
スリーサイズを記載した履歴書持参
写真添付いらず(当方にて撮影あり)
「お兄さんフリーターなんですか?」
「いやー、ちょっとクビに」
「クビ?」
僕は頭をかきかき恥ずかしそうに言った。
「クビなんて今時あるんですね」
何か言いたそうな顔に、僕は居心地の悪さを感じたが、「まあ色々……」と軽くにごした。
濃すぎずケチャップのうまみたっぷりのナポリタンは、昔食べていた味を思い出す。
「ご馳走さまでした。ここの定休日は」
存外美味しく、また来たいと思ってそう聞いた。
「私の趣味の店なんで、不定期です。本職が繁忙期でない時なら、基本土日祝が営業ですよ」
「また来ます」
ナポリタンを食べカフェオレを飲み終わると足早に席をたった。
カンカンカン、
階段をあがると下から大家のおばちゃんの声がした。
「来月更新ですよ?3ヶ月分前払いですから宜しくお願いしますね」
「はーい」
明るい声と満面の笑みで答えてみたものの、先立つ物はない。
部屋に入り鍵をかけ、冷蔵庫からミネラルウォーターを出すと、ベッドに腰掛けポケットから先ほどのチラシを出した。
会社名はtoy party group
調べてみたが黒い噂のない綺麗な会社だった。
「銀座かー」
僕は携帯を開くと、電話番号をタップした。
「はい、トイパーティー株式会社人事部佐藤です」
「あの……募集要項の載っているチラシを見て連絡させていただきました。ご担当者様いらっしゃいますか?」
「はい、少々お待ち下さい」
電話口から流れる保留音がドキドキを増長させる。
「お電話かわりました。川崎です。面接お受けできますが、よろしければ明後日朝の7時30分はいかがですか?受け付けにてお名前をお願いいたします」
「朝7時半ですか?」
「無理ですか?」
サクサク切られそうになり慌てていけますと叫んでいた。
当日、持ち物は写真無し履歴書
容姿端麗って位だから、一応身だしなみはそれなりに、髪もセットしたしイケてるはずだ。なんせ死活問題だ、受かりたい。
ただスリーサイズがいまいちわからない。
とりあえず書いてあとは素直に言おう。
嘘をつくより印象は良いだろう……。
地下鉄で銀座まで出て8丁目側に歩きだす。
携帯に打ち込んだ住所のままたどり着いた場所はえらくスタイリッシュなビルが建っていた。 ビルにはラブ・ファントムって書いてある。
「トイパーティーじゃない、どうしよう」
入り口でうろうろしていたら背後から声をかけられた。
「こんなとこで何をやっているのだよ」
低い朗々とする声の主をみやると、艶々の黒髪に切れ長の目をしたイケメンが立っていた。
聞いた事があるような懐かしい声がした。
余計なことを考えていた頭をぶんぶんと振ると、もう一度その人を見上げる。
「背ぇ高ー」
「何をやっていると聞いているのだよ」
「あっごめんなさい、聞いたことのある喋り方だなと思って。初めて会う方に失礼しました。この場所で面接だったんですが場所がわからなくて」
チラシを見ると、その男性は僕の手をとりビルの中につかつかと入って行った。
「あの……」
「黙れ、朝から煩いのは好きではないのだよ」
こわっっ。
「ここだ!」
連れてこられた先は応接室と書かれた扉の前だった。
「え?」
ドンドンドン!
すごい大きな音で応接室の扉を叩くと扉を開け言い放った。
「連れてきたのだよ。眠い、俺は帰る」
そこまで連れてくると男は踵を返して去っていってしまった。
ぼーぜんとする僕に、中からクスクス笑う声が聞こえた。
「ようこそ、ラブ・ファントムへ」
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