2 / 2
言えない想い
しおりを挟む私、川崎 縷々にはもう五年以上になる片想いの相手がいる。
クリスマス、お誕生日、バレンタインデー。
この3つだけ毎年毎年ぶっきらぼうに、
「はい!あげる!」
って渡してる。
恋心は内緒。駄々漏れでも……内緒なの。
選ぶのは何ヵ月も前から選ぶし、ドキドキしながらいつも渡してる。
でもやっぱり内緒なの。
彼はめちゃくちゃ時間にルーズだし……ほんと、どこがいいのか、自分でも謎。
だけどホントに大好きなんだ。
「ってかさーホントに、どこがいいの?」
買ってきたスタバのアイス・チャイ・ラテを飲みながらまるちゃんは切り込み隊長宜しく私に突っ込んできた。辛辣うー。
「突然何?」
「なんで恋したの?」
私は思い出したように話し出した。
「五年前かー。あの頃の私はぁ仕事で行きずまっていたんだよ。元来強く見えるらしい私には……頼れるものも、泣ける場所も無かった……。
たまたまさ仕事で一緒に移動する事があってさ、彼の車で帰ってくる途中、色んな事が重なって、心のダムが決壊したんだろうね……。
涙が止まらなくて、車の中で泣き崩れちゃった。その時言われたんだ」
「なんて?」
「皆が君の事どう思ってるか俺は知らない。でも俺はわかってるから、大丈夫だよ」
って。
あれが私の初恋。
何がわかってるのかとか
ホントにわかってるのかとか
今なら思う事沢山あるんだろうけど……
「私……あの一言に救われたの」
年の差10歳、私にはまぶしいくらいカッコいい。
「コクらないの?」
「コクらないよ」
「なんで?」
まるちゃんは思ってるだけが不思議らしい。
「恐いからだよ……」
「恐い?」
不思議そうな顔をしてる……。
「コクったらさ、答え出ちゃうじゃん」
意味がわからない。
「だからさ、yes・noが出ちゃうでしょ?それが恐いんだよ」
ベランダで夕日を眺めながら、まるちゃんはいった。
「確かにさ、答え出ちゃうし、それは望んだ答えじゃない場合もあるけどさ……でも動かなければ、欲しい答えも手に入らないかも知れないよ?」
「うん、いいの。それでもこの関係が壊れるより百倍ましじゃん……」
ルンの言うことが良くわからないよ……。
「壊れないよ!」
彼はそんなタイプじゃないでしょ?
「コクられてたよ」
「そか……」
ルン……。
「付き合うってさ!ばかじゃん!」
「だね……」
ルン……。
「なんかお祝いしなきゃね……」
ルンってほんと、なんでそうなんだろう。
「ばかじゃん!」
「だから、そだよって言ってんじゃん……」
このばかは凄い素敵な笑顔でいった。
「代官山にさー、素敵なドライフラワーショップあるんだよ」
納得いかない私はムスってした顔で聞いていた。
「まるちゃん一緒に行ってくれん?」
「いつ?」
「善は急げって言うじゃん。今日!」
泣きそうな顔でニコニコ笑ってんじゃないよ。
「ルンは……ばかじゃないね!大馬鹿だよ」
代官山【メモリアル】
店内を覗き込むと……小さなライトが点在している。若干薄暗く妖艶なその空間は、黒髪の青年にとてもよく似合っていた。
この人が店長さんだろうか……。
「魔法使いさんですか?」
キョトンとした顔をして「魔法使い?」ですかね。
笑ってた。
「どんな魔法をかけて貰いたいの?」
深月さんは、私の拙い気持ちを聞いてくれた。
「一個だけ聞いていい?」
綺麗な透明感のある声は、人の気持ちを素直にさせる。
「?…………はい」
「伝えたくは無かったの?」
「…………………………伝えたかったですよ。ただ、弱虫に権利は無かったですね」
小さな目から涙が止めどなく流れる。
「まだ間に合う。任せてくれる?魔法かけてあげるよ」
深月さんが沢山あるなかから選んだ花は……彼女の心を代弁していた。
【ヘリクリサムのきれいなルビーピンクに、忘れな草のブルー、緑に白を間に差して可愛いブーケが出来た】
「渡しにいくんだよね。行ってらっしゃい!」
【ヘリクリサムの花言葉、永遠の思い出
忘れな草の花言葉、私を忘れないで】
深月さんのかけた魔法に彼は気づいてくれるのだろうか。
1ヶ月後……メモリアルの店内には甘ーい空気を纏った年の差カップルが、お返しに可愛いクッキーを焼いてきてくれたと言う。
かけてほしい魔法があったら代官山のドライフラワーショップ【メモリアル】を覗いてみて下さい。
俺が誠心誠意お手伝いをいたします。
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説


夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる