紺青ラプソディー

蔵崎とら

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VS長男様

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 胸倉を掴まれた時の対処法と言えば。
 まず片方の手で、胸倉を掴んでいる相手の片手の手首を掴みます。
 そしてもう片方の手で、相手の肘を掴みます。
 次に、手首を掴んだ方の手はしっかりと固定したまま、肘を掴んだほうの手をぐいっと捻りながら思い切り持ち上げます。
 そうすると、とても痛い。

「いたたたたた!」

 ほらね!
 そして手を離すと、胸倉を掴んでいた手も離れてくれるでしょう。
 本来ならそこで留めの一撃を放つのだが、今は捕獲が優先だ。
 手の痛みに気を取られた相手の片手を取り、背中の方へぐいっと捻り上げる。
 その後は近くにあったベッドを目掛け、相手の顔面を押し付ける。
 刑事ドラマなんかでよく見る関節技ですね。

 ……という一連の流れで、現在長男様は私の下で呻き声を上げている。

「……おい! おい!」

 おや? 呻き声から、言葉に進化した。

「あ、正気に戻っていただけました?」

「お前、何をしているんだ!」

 押さえつけ続けていると、そんな抗議の声が聞こえる。

「何って、正当防衛です。胸倉掴まれたので」

 そう言いながらにっこりと笑ってみせる。まぁ、私が押さえつけているので、彼に笑顔が届いているかどうかは解らないけど横目で気配くらいは感じていただけるだろう。

「トリー……」

 ロゼの小さな小さな声がした。
 怯えているのか呆れられているのかは分からない。

「キキョウ様、押さえつけるのなら俺が代わりましょう」

 そんな青い騎士さんの提案は、首を振って辞退しておく。
 簡単に動けないように関節を固めているので、下手に手を離すと逃げられてしまうから。

「長男様、少しお話をしませんか?」

「は?」

「あ、さっきの聞こえてました? 私、数ヶ月前からこちらで使用人をさせていただいていますトリーナと申します」

 さっき見た、据わった目をした長男様と今の長男様は少し違う気がしたので、私は改めて自己紹介をした。

「……あぁ、知っている。離してもらえるか?」

 と、長男様は言う。
 明らかに殺気立っている相手をほいほい放すのも考えもんだが……仕方ない。
 逆上でもされて話が通じなくなったら元も子もないからな。

「解りました」

 そう言って、掴んでいた腕を離すと、長男様は案の定殴りかかってくる。
 しかも、狙いはまさかの顔面である。
 女子の顔面を狙うとは、と思ったが、解りやすいとこ狙ってきてくれた方が防ぎやすくて助かる。
 私は目の前に飛んできた拳を手のひらで受けて、弾き飛ばす。
 反動で体勢を崩した長男様の顔面が届く位置に来たので、それを目掛け、私も遠慮なく右ストレートをお見舞いする。

「ひっ!」

 長男様の息を呑む音が聞こえた。
 ロゼの声も聞こえたかもしれない。
 聞こえたのは声だけで、他の音は一切しない。
 私の拳が長男様の頬に当る音もしなかった。
 当然だろう、私の拳は長男様の顔の数センチ手前で止まっているのだから。
 いや、さすがに殴るわけにもいかないかな、と思って。

「お、お前……!」

 反撃されるとは思っていなかったのだろう。長男様の声に焦りの色が見えた。

「寸止めなんだから痛くないでしょう」

「そういう問題ではない……風を切る音がした……」

 長男様の額には、冷や汗と思われるものがツー、と伝っている。

「直前までマジで殴ろうと思ってましたからね」

「雇い主の家族に暴力とは……」

「未遂ですけどね。長男様は人に殴られたことってありますか?」

「は? ないが……」

 私の問いに素直な返答が返ってくる。想像通りの返答だった。暴力を振るわれたことのない奴は、手加減を知らない。

「でしょうね。ロゼ、腕痛いんでしょ? 早く手当てをしたほうがいい」

「え? でも……」

「さっきから庇ってる。殴られたんなら早く冷やさないと治りが遅くなるよ」

 早く早く、と追い立てるように手当てを進めると、ロゼは申し訳なさそうに部屋から出て行った。
 チラリと青い騎士さんのほうを見ると、彼はつんとそっぽを向く。

「俺は追い出されませんから」

 なんて言いながら。追い出そうとしてたこと、バレていたようだ。
 絶対に動きそうにない顔をしているし……仕方ないな。

「またキキョウ様に手を上げようとするなら、次は容赦しません」

 青い騎士さんは、長男様にそう言った。
 容赦しないってどういうことだろう。
 青い騎士さんにとっても雇い主の家族のはずだが。

「おー怖い怖い」

 と、長男様は言う。
 そして肩を竦めながら、どかっとベッドに腰を下ろした。
 優雅に足を組む仕草はとても洗練されていて、そのまま動かなければ美術品のように見えないこともない。
 凶暴性さえなければモテるのではないだろうか。
 そんな事を考えながら、私は長男様から少し距離を取る。
 座ってしまえば何かあった時に反撃出来ないから、立ったまま壁に凭れて話をすることにした。
 ふと長男様の方を見ると、さっき私が捻り上げた腕をさすっている。

「痛かったですか?」

「あぁ」

 私の問い掛けに、長男様は素直に頷く。

「でしょうね。普段腫れ物に触れるように扱われてるみたいですし、暴力なんて振るわれたことなさそうでしたもん」

 片手で口を覆いながらクスクスと笑う。

「なんだと……」

「いじけたように殻に閉じこもってるんじゃ、皆扱いに困ってるでしょ」

 クスクスと笑うことをやめずに首を傾げて見せると、長男様の顔が怒りに歪む。

「貴様……っ!」

 長男様はそう言って立ち上がった。
 恐らく殴りかかってこようとしたのだろうが、青い騎士さんがそれを羽交い絞めで止めている。

「ねぇ長男様、次男様と仲良くする気はありますか?」

 不意に話題を変える。
 これは私からの提案だ。
 次男様は私を歓迎してくれたが、長男様は私に殴りかかってきた。
 現在、私の気持ちは次男様に完全に寄っている。
 ここで次男様を拒絶されれば、長男様は私の敵ということになる。

「なんだ、突然」

 長男様は怪訝そうにこちらを見る。
 そのまま舌打ちをしながら青い騎士さんを振り払い、もう一度ベッドに座った。

「さっき次男様にあなたの話を聞いたんです」

「話?」

「長男様は、次男様の顔を見れば八つ当たりをしているそうですね。次男様は、貴族じゃなければあなたとこんなに拗れることはなかったって寂しそうに言ってましたよ」

 そう告げると、長男様は吐き捨てるように嘲笑を零す。

「知るか。アイツが何故そんな話をお前に……あぁ、もしかして、お前か? この家の養女にさせられそうになっていた女は」

 長男様は何かをひらめいたような顔で言う。何がキッカケで私が養女になりそうだった話に気付いたのかは知らないが。

「そうですけど」

「父と母が娘を欲しがっていた理由は知らないが、フレーテが妹を欲しがっていた理由なら知っている」

 私の簡単な相槌を聞いた途端長男様がニヤリと笑ってそう言った。
 この笑いは、大体よろしくない発言が飛んでくる前触れだ。

「理由?」

「俺の八つ当たりから逃れる術を探していただけだ。お前を盾にしようとしていたんだよ、あの男は」

 長男様は大きな声で笑う。見事な高笑いです。

「なるほど。まぁ、それほどあなたからの八つ当たりは苦痛だったと言う事でしょうね」

 高笑いを気にも留めず、淡々と言えば、長男様は言葉を詰まらせながら顔を歪めた。

「私がそんな話程度で怯むとでも思いました?」

 孤児を養子にして奴隷のように働かせる貴族なんてよくある話だし、正直八つ当たりの盾くらいどうってことはない。

「……お前はそれでいいのか?」

 長男様は睨むようにこちらを見ながらそう尋ねてくる。

「ん? 八つ当たりの盾ですか? 私が盾になることでお二人の仲が円満になるのなら」

 別に構いませんよ? という意味を込めて首を傾げる。

「……そんな甘い話があるか。俺はフレーテを許すつもりなどないし、お前の事も許さない」

 私から目を逸らし、憎らしそうに顔を顰める。

「何故? まぁ私はついさっき殴ろうとしたし許されなくても構いませんが、次男様が何をしたんですか?」

 許されなくても構わないっていうか、本来なら許されないことなんだけどな。そもそも許可なくこの部屋に入った時点で色々許されないことだらけなんだけどな。
 長男様はその辺に気付いてないみたいだからそっとしておくけど。

「アイツは……俺よりたった一年ちょっと遅く生まれたというだけで、ただただちやほやされるだけで過してきたんだ……俺が爵位を継ぐための勉強をしている間、アイツはずっと好きな本を読んで過しているだけだった」

 私は頷くだけで口を挟まずに、長男様の話の続きを促す。

「何もしていないアイツは皆に可愛がられていたのに、必死になって勉強していた俺は誰からも相手にされず……」

「寂しかったんですね」

「黙れ!」

 つい口を挟んでしまうと、見事に怒られた。うっかりうっかり。

「でも、爵位は欲しいんでしょ?」

 さっき次男様も言ってたし。

「……」

「というか、そんなに頑張ったのなら、爵位くらい貰ってもいいでしょ。欲しいならね」

 何も反論してこないし、やはり次男様の言った通り爵位は欲しいのだろう。

「……しかし」

「旦那様の跡継ぎは、重圧しか感じませんね」

 喋り方がきつくなってしまわないように、優しく優しくと細心の注意を払う。

「お前に何が解る……」

 今まで刺々しかった長男様の声が、少し弱くなった。

「さぁ? 平民には理解出来ない世界ですね!」

 と、おどけたように笑って見せると、不服そうな顔をした長男様に睨みつけられる。
 どうやら気に障ったらしい。

「……俺には無理かもしれない」

 ぽつりと吐き出された弱音。やっと引っ張り出せた。

「一人で背負いきれないなら、次男様に手伝ってもらえばいいんじゃないですか?」

 にこりと笑って提案する。

「今更アイツに手伝ってもらうなど……」

「プライドが許しませんか? 次男様なら喜んで手伝ってくれそうな気がしますけどね」

 私がそう言うと、長男様の瞳が揺らいだ。
 今日、これ以上押すのは得策ではないかもしれないので、私は引くことを選んだ。

「じゃあ、私は次の仕事があるので行きますね」

 長男様が何も言わなかったので、私は一歩ずつ歩き出す。
 すると、長男様が立ち上がって言った。

「……次から、二階の掃除が回ってきたらこの部屋にも声を掛けろ」

 と。
 長男様の言葉の真意は解らなかった。

「ん? はい、解りました」

 他に言う事はなさそうだったので、部屋から出ようと足を進める。
 だがしかし、長男様の前を通り過ぎようとした時、また殴りかかられた。
 さっきと全く同じ、顔面を目掛けて。
 だから、軌道の解りやすい攻撃は防ぎやすいんだってば。
 私は飛んできた拳を遠慮なく弾いた。

「甘い! その程度のパンチを私に当てようだなんて思わないでいただきたいですね」

 今回ばかりはさすがに怒鳴った。
 色々と甘いのだ。
 軌道も、力の入れ方も、脇の閉まりも甘い。
 長男様はイラっとしている私に向けて舌打ちをする。

「そもそも筋肉の付き方が甘いんですよ。あ、折角近くに騎士様が居るんだから鍛え方でも教えてもらったらどうですか?」

「は?」

「何を言っているんですかキキョウ様……」

 私の提案を聞いた両者に呆れられた。

「だって青い騎士さん、さっき私の事軽々抱えてくれたし、ムキムキでしょ?」

 くるりと青い騎士さんの方を見ると、きょとんとした彼と視線が合う。

「キキョウ様が軽いだけでしょう」

「別に軽くないと思います。絶対ムキムキなはずです。腕とか腹筋とか凄そう……」

 とかなんとか言っていると、青い騎士さんが袖を捲くろうとしているのが視界に入った。

「あ、捲くらなくていいです、ドキドキするので」

 筋肉好きなんだもん、なんて心の中で呟いていると、青い騎士さんが急いで袖を捲くろうとしていた。
 これはヤバい。見たら絶対ドキドキする!

「わあああああ!」

 私は急いで逃走を謀り、次男様の部屋に飛び込んだ。
 戻って来いって言われてたし。
 飛び込んだ先では、次男様が目を丸くして立ち尽くしていた。
 そりゃあ私が急に飛び込んできたんだからな、驚きもするだろう。
 なんて思っていたのだが、次男様は私から目を背け、部屋の隅っこで蹲ってしまった。
 何だそのリアクション。

「次男さ……いや、フレーテお兄様、どうしました?」

 蹲る次男様の元へ急ぎ、視線を合わせるためにしゃがみ込む。
 すると、次男様は私のほうに、さっきのくまさんを突き出した。

「おぶっ」

 こちらを見ることもなく突き出されたくまさんは、見事に私の顔面にクリーンヒットする。
 バランスを崩した私は尻餅をついてしまった。痛い。

「ごめ……ごめん、トリーナ。さっきの兄さんの声……聞こえた……」

「……何が聞こえたんですか? どのへん?」

 仕方ないので、床にぺたんと座ったまま優しい声を心がけながら問い掛ける。
 くまさんはもちろん拾って膝の上に置いた。

「僕、トリーナを八つ当たりの盾にしようとした……あれ、ホントなんだ……ごめん……」

「なんだ、そんな事」

 私の口から、本心が零れ落ちた。
 そんな事、気にしてないのに。

「僕、酷い事考えてた……」

 次男様は罪悪感からか、顔色を真っ青にさせて呟く。

「じゃあ、このくまさんは罪悪感から逃れるためにくれたんですか?」

「違う! 違うよ、それは約束だったから……」

「それじゃあ、私の結婚相手に関して真剣に考えてくれてたのは、罪悪感から?」

「それも違う! 僕は、大事な僕のトリーナの幸せを考えて……」

 可愛い人だな、そう思った。

「じゃあ、もういいじゃないですか」

 私の手は、自然と次男様の頭を撫でていた。

「トリーナ……」

「私は、今から盾になれって言われても何も気にしませんよ。だって、私のほうが強かったもん」

 えへへ、とおどけて笑って見せる。
 強かったのは事実だし。

「トリーナ!」

 次男様は思いっ切り私に飛び付いて来た。
 これで、罪悪感から解放されてくれればいい。

「……キキョウ様」

 ……背後から地を這うような声がする。
 後ろを振り返る勇気など、全くもって沸いてこなかった。




 
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