紺青ラプソディー

蔵崎とら

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天使の噂

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 このお屋敷で働き始めてから半年が過ぎた。
 仕事にも、このお屋敷に居ることにも慣れた。
 相変わらず、奥方様とは口をきいていないけど。


「ねぇねぇ"トーン子爵家の天使"って噂、知ってる?」

 食堂で夕食を摂っていた時、とても嬉しそうな顔でそんな話題を振ってきたのはリリだった。

「天使?」

 なにそれ? と私とロゼは首を傾げる。
 ルーシュは何か知っているらしく、リリと同じようににこにこと微笑んでいる。

「私とルーシュね、昨日夜会に行ってたの。そこで噂になってたのよ! トーン子爵がついに天使を雇い入れたんだ、って!」

 リリは楽しげにそう言うが、何のことだかさっぱり解らない私は首を傾げるばかり。
 もうちょっと詳しく教えて、と続きを促すと、リリとルーシュは二人で顔を見合わせて笑う。

「どこかの子爵だか男爵だかが『このお屋敷の前を通るとたまに華麗な旋律が聞こえてくるんだ』って言い出したのが始まりだったかしら?」

 と、ルーシュは言う。
 華麗な旋律……ねぇ。
 このお屋敷じゃ結構頻繁に音楽の講習が開かれてるんだから、何か聞こえたとしても不思議じゃないだろう。

「でね、その華麗な旋律はピアノの音なんだって」

 と、リリが言う。
 ピアノ……ピアノか。

「ピアノ……」

 若干嫌な予感がする。

「噂をしていた彼等はピアノとともに美しい歌声も聞こえる、そう言っていらっしゃったわ」

 ピアノの音と歌声……それってもしかしなくても?

「……私じゃん?」

 まさかの私である。
 宣伝のため外に聞こえるように窓を開けていたから、誰かが聞いていたとしてもおかしくない。
 おかしくないというか、むしろ聞かせるためなのだから聞こえてて良かったと思うべきなのだ。だから聞こえていた事は別に嫌でもない。
 だがしかし、天使……!
 なるほど、だからリリとルーシュは笑っていたのか。

「トーン子爵家の天使として、結構広い範囲に噂が広まってるみたいだったよ!」

「何その妙な噂……! そして激しく迷惑な噂……!」

 私は手に持っていたカトラリーをその場に置いて頭を抱えた。
 天使とか、絶対実物見てガッカリされる噂じゃないか。

「トリー嫌なの?」

 リリは無邪気な表情でそう問い掛けてくる。

「嫌っていうか、イメージが一人歩きした後実物見てガッカリするタイプの噂だよね……」

 天使だ天使だと思ってたのに私が出てきたら皆絶対ガッカリするやつだ。私が絶世の美女とかだったら話は別だけども。

「キキョウ様は天使などではありませんよ」

 私が頭を抱えていると、青い騎士さんが突如話に加わってきた。

「なんで? トリーは天使に匹敵する歌声の持ち主よ! トリーの講習に参加したことある令嬢が何人か居たけど誰も反論してなかったもん!」

 リリは青い騎士さんに食って掛かっている。
 っていうか講習に参加したことある令嬢が居たなら誰か一人くらい本当のことを言ってくれても良かったのではないだろうか。
 あれを演奏しているのは私という平凡な使用人であって天使なんかじゃないんだ、と。

「キキョウ様は天使などではなく、女神です」

 青い騎士さんの余計な一言で、話が変な方向に向かいそうな気がしたので、私はそそくさと夕食を片付けた。
 ツッコミなど入れない。


 翌日、お屋敷にやってきていた赤松に声を掛けられた。

「お前、トーン子爵家の天使って知っとる?」

 と、半笑いで。

「リリ達に聞いた……」

 げんなりしながら答えると、赤松はクスクスと笑い出す。

「これが天使やって……ククッ」

 尋常じゃないくらい腹立たしいのだが、この私が天使だとか言われているわけだから、笑っても仕方ない。
 仕方ないんだ。

「その『天使』が、実際は私なんだから、噂してる人達はさぞガッカリするんだろうね」

 苦笑を噛み殺しながら言うと、急に真顔になる赤松。
 今まで笑ってたくせに、どうしたんだろう? と赤松を見上げていると、ふいに赤松の眉間のしわが深くなった。

「……いや、むしろ……ある意味喜ぶ奴も居るんちゃうか?」

 そんなことを言って私をじっと見ながら、うーん、と呻っている。
 なによ? と言いつつ赤松の鳩尾を小突いてみるが、一向に口を開こうとしない。
 変な赤松、と言おうとしたところ、人の足音が聞こえた。
 誰が来たのかと、足音の方向を見ると赤い騎士さんが居た。

「よう、天使さんと伯爵。難しい顔してどうした?」

 実に楽しそうな顔をしている。

「いえ……その『天使』の話をしていたんです。噂してる人達が『天使』の正体である私を見たらガッカリするだろうね、って」

 ガッカリしますよねぇ、と呟くが、赤い騎士さんもその場で私を見ながら呻りだす。

「葉鳥、絶世の美女ってわけやないけど別にブスっちゅーわけでもないしな……」

「私の顔面の評価ってそんな感じなん……ですかね?」

 ナチュラルに普段の口調で喋ろうとしてしまったが、赤い騎士さんが居たんだった。
 彼には赤松と私が昔からの知り合いだなんて言っていなかったはずだ。
 危ない。

「いや、トリーナちゃんは小柄だし……まぁ確かに美女って程じゃないが、充分可愛いと思うがね」

 結果的には褒め言葉なんだろうけど、どうも褒められている気がしない。
 というか何が言いたいんだろうこの人達。

「『天使』とか言っちゃうくらいだから皆絶世の美女を期待してるでしょうよ。それが私なんだからガッカリすることはあっても喜ぶことなんか」

 肩を竦めながら言う。
 すると、もう一度赤松が口を開いた。

「貴族からすれば、葉鳥ほど都合がいい女なら天使に見えるんちゃうかな?」

 都合がいい? と顔を顰めていると、赤い騎士さんが続く。

「……まぁ、トリーナちゃんは身分も身寄りもないし、一夜限りの遊び相手としては都合がいいだろうね」

 と。
 なるほど。そこまで説明されればなんとなく解る気がする。
 貴族同士だと結婚云々のごたごたが発生するが、私のように身分も身寄りすらもない人間が相手ならあと腐れなく遊べるってわけだ。
 都合の悪い事が起きても口止めとして適当に金払えばいいやと思われそうだし。

「気まぐれで手ぇ出したところで、元孤児が貴族相手に文句は言われへんからな」

 基本的に、と付け加える赤松。
 確かに、貴族が相手なら文句は言えないし、下手なこと出来ない。基本的には。
 例外の貴族が目の前に居るからな。
 赤松が相手ならいくら伯爵でも文句言うからな、私は。

「遊んだ後ポイ捨てしたり、愛人として側に置いておいたり、用途は色々だね」

 と、赤い騎士さんが続ける。

「実際やったことありそうですよね、赤い騎士さん」

 そう言い捨ててやると、彼は目を見開きながら両手を振って否定してきた。

「ま、葉鳥はそういう目で見られてもおかしくないっちゅー話や。気ぃつけたほうがええで」

 赤松はそう言った。

「気をつけるも何も、貴族の人達と会う機会なんて私には殆ど」

 ありませんよ、と言おうとしたのだが、それは赤い騎士さんに遮られる。

「いや、今度この家の次男坊の誕生会があるからな、貴族は集まってくるし、余程の事がない限りトリーナちゃんも手伝わされる」

 とのこと。
 トーン子爵家の次男は19歳になるらしい。
 そして誕生会と銘打っての嫁探しになるそうなので、多かれ少なかれ貴族が集まってくるんだとか。

「手伝う……手伝えるんですかね? まず私まだ旦那様の息子さん達に会った事ないんですよね」

 あまり関わらないように仕事を組まれている節があるのだけど、手伝いに出ることになるだろうか?

「あれ? そうなんだ」

 赤い騎士さんは意外だ、と言わんばかりの反応を見せた。
 まぁ半年近くこのお屋敷で働いているのに、お屋敷の住人と未だに面識がないなんて珍しいことだろうよ。
 いや、一応全く面識がないわけではないんだけどね。
 キスされた場所の意味の件とか、教えてくれたのは次男さんだったはずだ。仮定だけど。
 ただ、それを知っているのは私だけ。結構恥ずかしい話なので、誰にも言っていないし。

「奥方様とも殆ど喋った事ありませんし」

 ぽつりと呟くと、赤松がそれを拾う。

「何や葉鳥、お前嫌われとるん?」

「……いや、わかん……解りません」

 接触がないだけで、嫌われている素振りを見せられたことはないのだけど。

「ふーん、まぁええわ。そういや俺、仕事で王都に行ってきてん。あ、これ土産」

 赤松がぐい、と何かを差し出してきたので私は慌てて手を出した。
 私の手に収まったのは丸くて可愛らしい瓶で、中身はどうやら飴玉のようだった。

「何これ?」

「喉にええねんて。天使が喉潰したらあかんやろ」

 半笑いでそう言われた。素直に渡してくれればいいのに、余計な一言付け足しちゃってさ。

「お気遣いありがとうございます、伯爵様」

 仕返しと言わんばかりに満面の笑みを浮かべてそう言ってやった。

「……でな、その天使の噂、王都まで流れとるみたいやったで。」

「は!?」

 赤松の爆弾発言に、さっきまでのちょっとした腹立たしさは吹き飛んでいた。
 王都まで噂が流れる、とはどういうことだ。
 ここから王都までは馬車で三日ほど掛かる、と教えられていたような気がするのだが、そんなに遠いところまで噂が流れるとは。

「まずトーン子爵がそこそこ有名人やからな。子爵が天使雇ったっちゅー噂が徐々に流れ出して、決定打は公爵令嬢が放った天使目撃情報やろ」

 旦那様が開いている講習は、近隣の街はもちろん、王都や辺境の地で暮らしている人達も受けに来ているという。
 だから、旦那様が有名人なのは理解出来る。
 が、公爵令嬢……あの煌びやか令嬢が余計な事を言ったに違いない……
 あの子ったら、散々私と揉めたくせに何を……いや、私と揉めたから仕返しに……?

「……まぁいいわ、噂なんか勝手に流れて勝手に消えていくものでしょう……」

「もし王都に招かれたりしたら、お前も一躍有名人かもしれへんな。まぁ飴ちゃん食うて頑張りや、天使さん」

 赤松は肩を落とす私を見て、クツクツと笑いながらその場から去っていく。
 アイツ絶対面白がってるじゃん。

「王都に招かれたら、か。大変だなトリーナちゃん」

 赤松の背を見送っている私に、ニヤニヤと笑いながら声を掛けてくる悪趣味な赤い騎士さんと目が合う。

「招かれるわけないでしょう。招かれたとしても天使なんか居ないって言えば」

「王都に居る貴族はこの辺の貴族よりもハードな人が多いからな。居ません、で済めばいいけど?」

「ハード……と、言うと、公爵令嬢みたいな……?」

 煌びやか令嬢のわがままっぷりを思い出し身震いをしていると、赤い騎士さんがクスリと笑う。

「まぁ……あれも可愛いもんだと思えるレベルで平民を見下す貴族も居るね」

 ……貴族なんて嫌いだ……!

「公爵だとか侯爵だとか、国でも有力な貴族が揃ってるからなぁ、王都は」

「噂が一日でも早く消えてくれることを祈るしかなさそうですね……」

 はぁ、と盛大な溜め息を零しながら、仕事に戻るべく鉛のようになった身体を無理矢理動かした。
 人の噂も七十五日という言葉がこっちの世界でも通用する事を願うばかりだ。

「ところでトリーナちゃん、伯爵から土産貰うほど仲良いの?」

「はい? あぁ……」

 そういえば、と手の中にあった瓶を見る。
 可愛いデザインの瓶に、沢山詰まった蜂蜜色の飴玉。
 これをあの仏頂面が買ったのかと思うと妙に笑いが込み上げてくる。

「嬉しそうだな、トリーナちゃん」

「嬉しいっていうか面白いっていうか……」

 瓶から赤い騎士さんに視線を移すと、とても楽しそうな顔をした赤い騎士さんと目が合った。

「もしかしてトリーナちゃん……伯爵の愛人に」

「なりませんから」

 何を言っているんだこの人は。




 
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