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第16話
しおりを挟む「なぁ、高坂さんとは別れたのか?」
物覚えが悪いのか、物忘れが激しいのか、いずれにしても同じような意味なのだが、そんな友人に呆れて溜息が出る。
「なぁ……修一郎、わかってて言ってるんだろ。別れるも何も、付き合ってなかったんだからさ」
「そうだっけ?」
間抜けな声を出す友人を残して、重い足取りで席に戻った。隣の八千代が一瞬俺を睨むが、すぐに元に戻った。
「痛いっ、痛いから、壱草っ」
休み時間。壱草優梨子に廊下に強引に連れ出された。どうやらご立腹なようだ。
「もう、どうなってるのよ」
俺は壱草に昨日のことを説明した。かくかくしかじか――ってね。ふむふむと聞いてるうちに、彼女の端正な顔が歪んでいった。
そしてとうとう怒鳴られた。
「ばっかじゃないの!」と。
自分でも大バカ者だと思っていたところだから否定はしない。むしろ誰かに罵ってもらいたかったので助かった。無論Mというわけではない。ーー否定はしきれないが。
意外に声が反響したのを気にしてか、壱草はトーンを落として続ける。
「そんなこと言って八千代を傷つけて……おまけに今の気持ちは伝えないで……なにやってるの?」
「悪い」
ぐうの音も出ないとはまさにこのことである。
「悪いってわかってるんだったら、ちゃんとしてよ。私がどんな思いで、あなたを……諦めたと思ってるのよ。八千代も、須賀野君自身も幸せにならなきゃ……」
「壱草、ごめん。本当に」
「いいの。こちらこそごめんね。ちょっと口出し過ぎちゃったね」
壱草は深い溜息をついて、教室に戻った。俺もそれに続いた。
隣からの視線が痛かった。
一体、俺はどうすればいいんだ。
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