ディア・ドロップ

あめいろ

文字の大きさ
上 下
7 / 14

名前

しおりを挟む
そんなこんなあって、雨宮雫という謎すぎる美女とご飯に行くことになった。
「どこに行くの?」
目を輝かせながら、雫が僕の顔を覗き込んでくる。
キュン死させにきてるのかよ。
雫から視線を逸らす。
「駅前にサ◯ゼがあるから、そこで良いだろ」
「サ◯ゼ!?なんかお洒落そう!」
「バカにしてんのか」
雫と並んで、黄昏の空の下を歩く。
なんとなく、どこか懐かしい感じがしないこともない。
ま、気のせいか。
「てか、仮に俺との記憶があるとして、それはいつからいつまでの記憶で、どうやって俺の今いる場所が分かったんだ?」
疑問は聞かないことには分からない。
この美女には考えても到底分からない謎が多すぎる。
雫がうーんと首を捻る。
「記憶だから正直、あやふやなんだけど、確か小4のときに会ってるんだ」
「どこで?」
「小学校で。私が転校してきたんだ。でも、会ってたのは半年間くらいで、私がまた転校しちゃって、それっきりかな」
「えらい他人事みたいに話すんだな」
「記憶があるだけで、今日初めて陽太に会ったからね。まー記憶の中で会ってるから実際には初めてには思えないんだけど」
もし雫の言っていることが本当なら、何とも奇妙な話だ。記憶があるのに会ったことがない。
まるで芸能人のようだ。実際に会っているわけではないけど、テレビで見たから記憶として存在しているところが、まさにそうだ。
「いつからその記憶があるわけ?」
「5年前に事故してから、それまでの記憶がなくなっちゃったんだけど、陽太との記憶だけは残ってたんだ」
「記憶があるんなら、何で会ってないんだ?矛盾してるだろ?」
「うんうん、だって私のこと呼ぶ時に陽太違う女の子の名前呼んでたんだよ。そりゃ会ってないんだって分かるよ」
「違う女の子の名前?」
「うん、ミハルって」
"ミハル"
その名前を聞いた時、世界が揺らいだ気がした。いや自分が動揺しただけなのだが。
ミハル。彼女のことは忘れない。


彼女は自分が『良い子』になるキッカケを与えた人物だったから。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

シラケン

あめいろ
青春
就活生の白瀬健太は、公園で不採用通知をビリビリに引き裂いていたところ、近くで銃声を聞くことになる。銃声の先にいたのは、、、? 生きる意味なんて分からない。 それを知っているのは、ほんとの自分だけ。 、、、、、てか自分って何だっけ? この物語は、ひとりの青年が自分のやりたいことを見つけるまでの物語。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

東岡忠良
青春
 二卵性双生児の兄妹、新屋敷竜馬(しんやしきりょうま)と和葉(かずは)は、元女子高の如月(きさらぎ)学園高校へ通うことになった。  今年から共学となったのである。  そこは竜馬が想像していた以上に男子が少なかった。  妹の和葉は学年一位の成績のGカップ美少女だが、思春期のせいか、女性のおっぱいの大きさが気になって仕方がなく、兄竜馬の『おちんちん』も気になって仕方がない。  スポーツ科には新屋敷兄弟と幼稚園からの幼馴染で、長身スポーツ万能Fカップのボーイッシュ少女の三上小夏(みかみこなつ)。  同級生には学年二位でHカップを隠したグラビアアイドル級美人の相生優子(あいおいゆうこ)。  中学からの知り合いの小柄なIカップロリ巨乳の瀬川薫(せがわかおる)。  そして小柄な美少年男子の園田春樹(そのだはるき)。  竜馬の学園生活は、彼らによって刺激的な毎日が待っていた。  新屋敷兄妹中心に繰り広げられる学園コメディーです。  それと『お気に入り』を押して頂けたら、とても励みになります。  よろしくお願い致します。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

[1分読書]彼女を寝取られたので仕返しします・・・

無責任
青春
僕は武田信長。高校2年生だ。 僕には、中学1年生の時から付き合っている彼女が・・・。 隣の小学校だった上杉愛美だ。 部活中、軽い熱中症で倒れてしまった。 その時、助けてくれたのが愛美だった。 その後、夏休みに愛美から告白されて、彼氏彼女の関係に・・・。 それから、5年。 僕と愛美は、愛し合っていると思っていた。 今日、この状況を見るまでは・・・。 その愛美が、他の男と、大人の街に・・・。 そして、一時休憩の派手なホテルに入って行った。 僕はどうすれば・・・。 この作品の一部に、法令違反の部分がありますが、法令違反を推奨するものではありません。

冬馬君の夏休み

だかずお
青春
冬馬君の夏休みの日々 キャンプや恋、お祭りや海水浴 夏休みの 楽しい生活 たくさんの思い出や体験が冬馬君を成長させる 一緒に思い出を体験しよう。 きっと懐かしの子供の頃の思いが蘇る さあ!! あの頃の夏を再び 現在、You Tubeにて冬馬君の夏休み、聴く物語として、公開中!! 是非You Tubeで、冬馬君の夏休み で検索してみてね(^^)v

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

処理中です...