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vs秘密結社クロノス
80話 世界のバグと対処法
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「早く…して」
リュートが立ち尽くす。誰も動かない。呼吸すらしていない。
何が起こってる?
目を外に向ける。しかし、希望虚しく誰も動いてはいなかった。
精神魔法か?
手の甲を噛んだ
予想した痛みと乖離した感触、それに痛みそのものに対する違和感がない。これによって他者軸、自己軸の両方の精神魔法の線が消えた。そもそも、精神魔法なら認識改変を真っ先に組み込む。疑念を持てる時点でその可能性は低い
まずい…!
彼らが呼吸をしていないことを思い出した。これが現実なら危険な状態だ。何が起きているか分からないが、幸いそういう時用の魔道具はたくさんある。
「え…」
彼はサリアを肩を掴み愕然とした。彼女の体が金属と紛うほどに固く、動かなかった。さらに、体は熱くも冷たくもなく触った気になれない
リュートはカイザの脈を測る。動きを確認できなかった。ミリナリスの仮面の下を確認して、カイザの上半身を脱がせ胸に耳を当てる。案の定、彼の鼓動は聞こえなかった
その後、いくつかの検証をしたが何も分からなかった
ボタ…
突然、窓に何かの液体が付着した。それは赤かった
血!?
すぐさま体を乗り出し上空を見上げる。時の止まった世界に起きた唯一の変換は希望にも見えた。しかし、世界は甘く無かった
元凶が居た
白い衣を纏ったシルビアが剣を使って目に付いた先から心臓を砕いている。だんだんと下に降りて来て対面するのは時間の問題である。
「ゼロだ…」
彼の眼の力では彼女の強さを判断することが出来なかった。オーバーフローでもしたのか上か下かも分からない。
測りきれないほど上の存在はいた。微生物であろうと下であることは判断できた。しかし、眼で測れないなんてことは初めてだった
アレは何なんだ?
恐怖で身が竦む。眼が使えず、情報も無い。初めての経験。未知への恐怖が重くのしかかる。ハンドルの下に隠れて丸くなるしか出来なかった
あぁ、来た
彼女がロボットの隣まで降りて来た。
気配を隠そうともしていない。油断してるなー。動けない相手を警戒するわけないよね…ん?それだ…
彼は一筋の光をみつけた
震える手をポーチに突っ込んだ
ドドドドドドッ!!
リュートは機銃を乱射した。恐怖で動けない体に精神魔法をかける。恐怖を極限まで抑えて無理やり体を動かしたのだ
「やった、やったぞ!」
年甲斐も無く周りの目を気にせず喜んだ。完全な不意打ちだった。マナで軽減した気配もない。人ならひとたまりもないはずだ
「おい、何をやったかについて聞いていいか?」
上着を肌けさせられたカイザが何か言っているが関係ない。抱きついてやる
「……うわぁ」
サリアの蔑む様な目でさえも今は心地いい。…ごめん嘘、結構きつい
「そういうのいいです。早くしてく脱出しますよ」
ミリナリスってなんで仮面の付けてたんだろう?結局、肌すら見せなかったな
「では、備えてください。3、2…」
リズさんはミリナリスと同じクラスで、護衛だったんだよね。他クラスの集団相手を想定して一人で……は?
皆が動かなくなった
慌てて下を見る。
彼女は生きていた。欠損箇所は白い物質で補完され、纏っていた衣は体と融合していた。
シルのコアを刺してる。ヤバい目が合った!来る!
「こっちに来い!」
リュートは脱出用のレバー下げて飛び降りる。
彼女は思惑通り彼を追って方向転換をした。しかし、作戦なんてものは無かった。仲間を傷つけたくない。その一心でそんなものを建てている余裕なんて無かった
ポーチに手を入れる。精神魔法がまだ効いている。恐怖で身が竦むことはない。
まず、魔道具の盾を出して構える。逆の手で体育祭用の防御結界魔道具を取り出して発動させた。
だが、気づくと地面に横になっていた。そしてすぐ横にはリオンがいた。彼の『縮地魔法』によって助けられたのだ
縮地魔法とは物質の移動する距離を圧縮する魔法である。慣性をともなった転移が可能になる
「よくやった」
彼はリュートへ訓練の様に軽い口調で声をかける。しかし、手には折れたナイフが握られており、鋭い眼光は己が敵を見据えている
「先生!?」
「お前、動けることに心当たりは?」
「無いです」
今までを思い返すがとくに引っかかるところは無かった。分かることといえば止まっている生物の発動した魔法も停止することくらいである
「なら良かった」
リュートの頭をポンと撫でると、手で「逃げろ」と伝える
「はい!」
リュートは自分の足でシェルターへと走った
さっきまで先生なら大丈夫だと思っいたが、ある言葉が引っかかった
…良かった?
そう思える要素はなかったように感じる。不安が募り足が止まる。ポーチからライフルを取り出し上空を見上げる
あ…
リュートは言葉を失った。ただ、それは絶望からでは無い。リオンがシルビアの剣を奪って滅多刺しにしていたのだ。
「うそぉ…」
時を止める正体不明の恐怖の対象が担任の先生に一方的に蹂躙されている。絶望感がなくなっていく。
彼はライフルをポーチに戻す。撮影用のイヤーカフを取り付けて起動した。
まもなく静止した世界は元に戻るだろう
ジジジ、ジジジ…
その時、リオンの正面、シルビアの背後に虹色のグラデーションをした二次元の板が大量に現れた
リオンはそれを剣で切り裂いた。
それは、二つに分かれて蒸発するようにして消えていった。しかし、同じような現象が二人を取り囲むように無数に発生した
ガリッ
リオンは腕輪の穴から魔石を取り出して噛み砕く
そして、剣に『縮地魔法』を付与し振り上げ振り下ろした。虹色の板は全て縦に切られて消滅した
「ふぅ」
彼は地面に降りる。一仕事を終えてほっとひと息をつく
ガシャン!
彼の隣でシルの鎧が崩れた。鎧のパーツが散乱する
「ちょうどいい、聞こえるな。️◼️者はあの魔法の対象外だ」
「何言ってんの?」
リオンの言葉は何故かシルに正しく伝わなかった。
そして、彼らの上空の外界と繋がった窓の向こう側で虹色の板が無数に発生していた
リュートが立ち尽くす。誰も動かない。呼吸すらしていない。
何が起こってる?
目を外に向ける。しかし、希望虚しく誰も動いてはいなかった。
精神魔法か?
手の甲を噛んだ
予想した痛みと乖離した感触、それに痛みそのものに対する違和感がない。これによって他者軸、自己軸の両方の精神魔法の線が消えた。そもそも、精神魔法なら認識改変を真っ先に組み込む。疑念を持てる時点でその可能性は低い
まずい…!
彼らが呼吸をしていないことを思い出した。これが現実なら危険な状態だ。何が起きているか分からないが、幸いそういう時用の魔道具はたくさんある。
「え…」
彼はサリアを肩を掴み愕然とした。彼女の体が金属と紛うほどに固く、動かなかった。さらに、体は熱くも冷たくもなく触った気になれない
リュートはカイザの脈を測る。動きを確認できなかった。ミリナリスの仮面の下を確認して、カイザの上半身を脱がせ胸に耳を当てる。案の定、彼の鼓動は聞こえなかった
その後、いくつかの検証をしたが何も分からなかった
ボタ…
突然、窓に何かの液体が付着した。それは赤かった
血!?
すぐさま体を乗り出し上空を見上げる。時の止まった世界に起きた唯一の変換は希望にも見えた。しかし、世界は甘く無かった
元凶が居た
白い衣を纏ったシルビアが剣を使って目に付いた先から心臓を砕いている。だんだんと下に降りて来て対面するのは時間の問題である。
「ゼロだ…」
彼の眼の力では彼女の強さを判断することが出来なかった。オーバーフローでもしたのか上か下かも分からない。
測りきれないほど上の存在はいた。微生物であろうと下であることは判断できた。しかし、眼で測れないなんてことは初めてだった
アレは何なんだ?
恐怖で身が竦む。眼が使えず、情報も無い。初めての経験。未知への恐怖が重くのしかかる。ハンドルの下に隠れて丸くなるしか出来なかった
あぁ、来た
彼女がロボットの隣まで降りて来た。
気配を隠そうともしていない。油断してるなー。動けない相手を警戒するわけないよね…ん?それだ…
彼は一筋の光をみつけた
震える手をポーチに突っ込んだ
ドドドドドドッ!!
リュートは機銃を乱射した。恐怖で動けない体に精神魔法をかける。恐怖を極限まで抑えて無理やり体を動かしたのだ
「やった、やったぞ!」
年甲斐も無く周りの目を気にせず喜んだ。完全な不意打ちだった。マナで軽減した気配もない。人ならひとたまりもないはずだ
「おい、何をやったかについて聞いていいか?」
上着を肌けさせられたカイザが何か言っているが関係ない。抱きついてやる
「……うわぁ」
サリアの蔑む様な目でさえも今は心地いい。…ごめん嘘、結構きつい
「そういうのいいです。早くしてく脱出しますよ」
ミリナリスってなんで仮面の付けてたんだろう?結局、肌すら見せなかったな
「では、備えてください。3、2…」
リズさんはミリナリスと同じクラスで、護衛だったんだよね。他クラスの集団相手を想定して一人で……は?
皆が動かなくなった
慌てて下を見る。
彼女は生きていた。欠損箇所は白い物質で補完され、纏っていた衣は体と融合していた。
シルのコアを刺してる。ヤバい目が合った!来る!
「こっちに来い!」
リュートは脱出用のレバー下げて飛び降りる。
彼女は思惑通り彼を追って方向転換をした。しかし、作戦なんてものは無かった。仲間を傷つけたくない。その一心でそんなものを建てている余裕なんて無かった
ポーチに手を入れる。精神魔法がまだ効いている。恐怖で身が竦むことはない。
まず、魔道具の盾を出して構える。逆の手で体育祭用の防御結界魔道具を取り出して発動させた。
だが、気づくと地面に横になっていた。そしてすぐ横にはリオンがいた。彼の『縮地魔法』によって助けられたのだ
縮地魔法とは物質の移動する距離を圧縮する魔法である。慣性をともなった転移が可能になる
「よくやった」
彼はリュートへ訓練の様に軽い口調で声をかける。しかし、手には折れたナイフが握られており、鋭い眼光は己が敵を見据えている
「先生!?」
「お前、動けることに心当たりは?」
「無いです」
今までを思い返すがとくに引っかかるところは無かった。分かることといえば止まっている生物の発動した魔法も停止することくらいである
「なら良かった」
リュートの頭をポンと撫でると、手で「逃げろ」と伝える
「はい!」
リュートは自分の足でシェルターへと走った
さっきまで先生なら大丈夫だと思っいたが、ある言葉が引っかかった
…良かった?
そう思える要素はなかったように感じる。不安が募り足が止まる。ポーチからライフルを取り出し上空を見上げる
あ…
リュートは言葉を失った。ただ、それは絶望からでは無い。リオンがシルビアの剣を奪って滅多刺しにしていたのだ。
「うそぉ…」
時を止める正体不明の恐怖の対象が担任の先生に一方的に蹂躙されている。絶望感がなくなっていく。
彼はライフルをポーチに戻す。撮影用のイヤーカフを取り付けて起動した。
まもなく静止した世界は元に戻るだろう
ジジジ、ジジジ…
その時、リオンの正面、シルビアの背後に虹色のグラデーションをした二次元の板が大量に現れた
リオンはそれを剣で切り裂いた。
それは、二つに分かれて蒸発するようにして消えていった。しかし、同じような現象が二人を取り囲むように無数に発生した
ガリッ
リオンは腕輪の穴から魔石を取り出して噛み砕く
そして、剣に『縮地魔法』を付与し振り上げ振り下ろした。虹色の板は全て縦に切られて消滅した
「ふぅ」
彼は地面に降りる。一仕事を終えてほっとひと息をつく
ガシャン!
彼の隣でシルの鎧が崩れた。鎧のパーツが散乱する
「ちょうどいい、聞こえるな。️◼️者はあの魔法の対象外だ」
「何言ってんの?」
リオンの言葉は何故かシルに正しく伝わなかった。
そして、彼らの上空の外界と繋がった窓の向こう側で虹色の板が無数に発生していた
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