モンスターコア

ざっくん

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vs秘密結社クロノス

69話 裏切り

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「クソ!手も足も出ねぇ」

 カイザが槍を折られ膝をつく。

 魔道具を大量に所持した黒装束がリュート達をたった一人で圧倒していた。だが敵は魔道具を一切使っていない。それほどまでの差が彼らには存在していた。
 その場から動かず『座標魔法』に『拡大魔法』それと変わった『雷魔法』を用いてリュートたち少しずつ力を削ぐ。どう仕掛けても驚異的な平衡処理能力で的確に対応する。

 敵にはどんな奇跡が起ころうと自分達では勝てない。彼らは戦う前から分かっていた。相手もこちらも五人、逃しては貰えないだろう。ならば敵が舐めくさっている内に一矢報報いてやろうと言う事である。が、

「おい!ふざけてんのか!?」

 長引いた戦いに痺れを切らしたのか黒装束の巨大な男が乱入した。

ーーーまずい!
 手加減されても圧倒されているのに、そこに一人追加されるのは勝ち目が無くなる。
 リュートは同士討ちからの仲違いを狙い男を盾にするように動く。悪上がりではあるが彼の荒い性格を加味すれば可能性は充分にある。

 しかし、そう上手くはいかなかった。大男は体から無数の太い触手を伸ばすと瞬時にリュートたち五人を捕縛した。

「…ッ!」

 捕らえられた!?これは予想外だ。てっきり遊ばれているだけだと思っていた。しかし、またか。一応、ここから一矢報いる手札はあるが辞めておこう。生存第一。

「これでいいか?」

 大男はリュート達を一つに纏め一瞬にして意識を奪うと、魔道具使いの方へ向いた。

「ありがとう…私仕事あるから後お願い。」

 彼ははそう言い残すと他の黒装束を置いて飛び去ってしまった。

「おい待て!…ったく、どうすんだよこれ。」

「じゃあ、それ、要らないならちょうだいよ!使っていい?」

 背の低い黒装束がねだるように言う。

「じゃ、頼んだぜ。壊すなよ、こいつらは一年だ。アイツが敵に回ると厄介になる」

「分かった。動かないでね」

 彼は大男に向けて手を翳した。

「お、おい!待て!」

 大男は慌てた様子で静止するが、彼は止まらなかった。
ーーーー
 黒装束の集団に捕らえられたリュートは見知らぬ部屋で目を覚ました。
 周囲には一緒に捕らえられた生徒だけで黒装束やつらの姿はなかった。

「うっ…」

「起きました?」

 ミリナリスが気付き声をかけた。

「うん、ここは?」

 ここは殆どが白色で構成された立方体の部屋である。出口は見当たらないが壁の一部に破壊し修復された跡がある。また、部屋の一角に天井から垂れた大量の管が何にも繋がれていない状態で放置されていた。

「分からん、どうにか脱出しねぇといけねんだが!」

 ガン!ガン!

 カイザが槍を形成し壁と修復箇所を突く。
 かなりの勢いがあったのだが、傷一つ付かない。

「手立て無しだ」

「やる事ないね」

 こうなってしまったら救出を待つしか無い。幸い、持ち物には手がつけられていなかったため助けを呼ぶ事ができた。
ーーーーー
 闘技場、事件が起こる少し前。
 トウカ、リオン、ミーニャ、フィロス、ラウドの五人の教員が関係者の控え室で今後について話し合っていた。
 彼らはリュート達一年の担任をしており、現状の学園最高戦力である。その名声は学園のみならず世界に轟き、今回も護衛兼顔役として開会式に顔を出す予定である。

「絶対、誰か手引きしてるでしょ!」

「まぁ、そうなるか」

「いるだろうね~」

 トウカの言葉にリオンとミーニャが同意する。フィロスとラウドも同じ考えなのだろうか大きく頷く。

 彼らが話しているのは自らをクロノスと自称する集団である。どう言う訳か学園に予告状を出し宣戦布告をしてきた。彼らは何故か学園内に潜入しており、何らかの手段で探知網をすり抜けている。

「おっ、お前らが一挙に集まるとは、懐かしいの~。終わったらさしぶりに食事でもどうだ?」

 学長が支度を終え、五人の前に現れた。彼はイベント向けの派手な服装に着替えている。政が楽しみなのだろうかなりウキウキとしている。

「気を引き締めてください。本当に仕掛けてくるとしたら、開会式か閉会式です」

「分かっとる分かっとる。何より、お主らが負けたら此処は終わりだろうて。ほれ、行くぞ」

 彼はラウドの忠告を軽く聞き流し配置につく。一見無責任のように見えるが彼らを信頼しての行動である。それに彼は自分が戦力にならない事を理解している。であるならば、せめて彼らの空気を和ませようという事である。

「私、ここに居てもいい?足りるでしょ?」

 フィロスは持ってきた魔道具のベットに寝っ転がり、備え付けられたコンピュータを起動してカタカタと操作している。

「ダメだ。行くぞ引きこもり」

 ラウドが彼女のコンピュータを閉じ、手を引っ張った。

「ちょ、待って、人前苦手なの。ここに来るまでも苦労したんだから」

「お前は何のために来たんだよ!?」

「うしろは任せて!」

「前来い!」

「うぇ~…」

 フィロスは抵抗も虚しくラウドに引き摺り下ろされる。

「分かった。行く」

 この後、彼女はごねたものの最終的に渋々ながら了承した。

ーーーーー
「リオン、これ」

 フィロスは開会式の直前にリオンに近未来的な箱を見せた。銀色をして白色の線が中心に向かって収束している。そして、中心には莫大なエネルギーを内包した青いコアが収められている。

「どうした?何かの装置か?」

「爆弾、壊すとここ一体が焦土になる。あっ、」

 箱は彼女の手を転がり落ちた。

「おい!何やってる!」

 リオンは慌ててその箱を追う。そして、地面に落ちる、その直前でどうにかキャッチした。

「…ごめんね」

 その直後、屈んだ彼の頭上、死角の位置に小さな半球が出現した。
 それは、リオンが安堵の声を漏らす前に膨張し辺りフィロスの前方を焦土とかした。

ーーーーー
「なんで…なんで、あなたはそんなに強いの?」

 フィロスは先程のだらし無い姿と違い、薄藤色の髪を一つに纏め、黒縁の眼鏡をかけている。
 寝っ転がっていたベットは空中に浮かぶ小さな台座へと変形しスモークを撒き散らす。そして、カラフルなステージライトで彼女と周囲を照らした。周囲はまだ明るいが、ライトの線が視認できるほどに光り輝いていた。
 彼女の真剣な表情と派手なライトが合わさり何とも言えない雰囲気を作り出していた。

「何のつもりだ?」

 ラウドが拳を『壁魔法』の半透明な物質で包み戦闘体勢を取っている。彼の後ろには学長が居り雑に動かされたためか、かなり憔悴していた。

『♪…』

 一瞬明るい音楽が鳴りかけるが、瞬時に音楽が止まる。台座のステージライト仕舞われ、ライトを持っていたアームがは銃や剣などの魔道具を取り出した。

「優しい…こんな事をしても槍を向けて来ないのね。でも私、本気だから」

 彼女の顔は羞恥からか少し赤らんでいながらも、その眼にはしっかりとした覚悟を宿していた。
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