モンスターコア

ざっくん

文字の大きさ
上 下
70 / 94
何でもありな体育祭!

60話 カチコミ!隣の1-4

しおりを挟む
「すぅー…」

ガラガラ…

 教室1-4にリュート達1-5がカチコミに来た。初手はサリアのブレス攻撃である。
 それは一見大雑把な攻撃にも見えるが、『声魔法』『振動魔法』『衝撃魔法』『炎魔法』さらに『伝達魔法』の計五つの魔法を掛け合わせた繊細な技術である。

 彼女は『触媒魔法』で作られた真っ白なメガホンを口に当てる。

「あら、あの子達は…」

 しかし、カチコミは完全に読まれていたのだろう。そこに1-4の生徒の姿は無く。居たのは担当の女性教員だけであった。

 ただ、サリアのブレスはもう既に喉まで出かかっていた。それなのに標敵が見当たらない。
 故に行き場を失ったそれは、必然として教員へと向かった。

「私に…ッ!」

「こんにちはーー!」

「ギャーーー!」

 彼女は血液の盾で衝撃の直撃を防ぐ事には成功した。
 しかし、サリアのブレスが広範囲使用に調整された硬直スタン目的の威嚇ハウルに近いものであった為、鼓膜に多大なダメージを受けてしまった。

嘘…
 しかしその時、サリアは割れない窓ガラスに驚愕し、落胆していた。似たような状況で割ったことがあるのだろうか?

「あなた達…」

 彼女はリュート達を睨みつける。もし、今が、体育祭準備期間でなければその場で全員がボコボコにされていたであろう。
 ただし、彼女も教員である。分別はしっかりとわきまえている。

「あの子達からの伝言よ。”北の公園で待つ”だって」

 北の公園…
 これは、なんとも意地悪な表現である。

 現在、リュート達のいる場所は、学園の中央に位置するビル群である。
 ここから北に位置し、2クラスが争えるほどの大きさを持つ公園はざっと調べただけで三つもある。

・モール型ショッピングセンター屋上の広場公園

・修練目的で使用される様々な施設がある運動公園

・牧場と繋がっているが、外生生物モンスターの居ない自然公園

 そのどれも離れていて、徒歩で移動できる距離では無い。

(仕方ない…か)

 リュートはカードを取り出して誰かに念話をかける。

「ねぇ、それ誰?」

 サリアが声をかけた。実は念話中に話しかけるのはタブーではない。

 『念話魔法』は頭の中に思い浮かべた音や文字を相手に送る魔法である。故に、声が入ってしまう事を心配する必要はない。それに、念話に多少慣れた人間ならば日常生活に支障をきたす事なく連絡を取ることができる。

「情報屋さん、場所聞こうと思って」

学園ここ来て数週間で…?怪しいわね。ここ来る前は何してたの?」

「やましいことは無いよ。ただ、お金のゴリ押しただけ。ここ来る前は宿屋の居候だしね」

「へぇ~…」

 サリアは自然にフェイドアウトし、カイトにスッと近づく。

「あいつの資金源ってなんなの?あなた知ってる?」

「知ってるが…教えていいのか!?」

 カイトは教えていいのか戸惑いリュートに話しかける。リュートはそれを隠している訳では無いが彼の手の内を晒す事になってしまう。

「ないしょ」

「だとよ」

「そう、残念ね」

 そうこうしている間にリュートへかえしの連絡が入った。

「あっ、分かったって」

「早いわね」

「今回は、有名な人だからね。仕事は折り紙付きだよ」

「え~と…」

 リュートは何かを探す様に辺りを見回す。そして、ニナを見つけて声をかけた。

「ニナさん、ちょっと空いてる?」

「はい、なんでしょう?」

「いつものお願い」

 そう言うと、リュートはカードをニナに向けた。
 情報の受け取りの依頼である。

「かしこまりました。」

 ニナはリュートのカードに自身のカードを重ね指定場所の情報を受け取ると教室を出た。

 情報屋との接触には多少の心得が必要になる。第三者に情報が漏れない様にするのはもちろんのこと、互いに弱みを握られない様に細心の注意を払う必要がある。

 リュートにはその心得が無かった。そこで、技術を持ち、金欠気味のニナと利害が一致したのである。

 今の時代、ネットを経して連絡を取ると情報屋に全て筒抜けになると言ってもいい。それどころか割り込まれ間違った情報を吹き込まれる可能性もある。
 そのため、少なくとも情報の受け取り、出来れば依頼も直接接触して行うのが決まりとなっている。

 なお、リュートはめんどくさがってほとんどの依頼をネット経由で済ましている。
 
それから程なくしてニナが帰ってきた。

「ただいま戻りました。」

「ありがと」

 リュートがカードを差し出す。

「フフ、毎度ありがとうございます。それと、依頼を頼まれました。物のついでいいと…、お使いみたいなものだそうです」

 彼女は出されたカードに自身のカードを重ねる。

「わかったよ」

 受け取った情報によると1-4はクラス全員で自然公園に潜伏しているとのこと。

(おかしいな…)

 リュートはこの情報に違和感を覚えた。
 複数回利用した経験からして質と量が低いような気がする。

 だが、その理由は依頼を見てすぐに理解した。

 そこには、前置きもなく文がつづられていた。

 中途半端な情報ですまない。依頼料は一部返金させてもらう。
 どうやら私のドローンを片っ端から破壊して回っている者がいるようだ。調べて欲しい。
 余裕があればで構わない。君も準備期間で忙しいだろう。情報にはそれ相応の報酬を支払う。
 もちろん、君のような将来有望な客にはしっかりと色をつけるつもりだ。これからもどうかご贔屓に。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白の魔女の世界救済譚

月乃彰
ファンタジー
 ※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。  白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。  しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。  そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

同級生の女の子を交通事故から庇って異世界転生したけどその子と会えるようです

砂糖琉
ファンタジー
俺は楽しみにしていることがあった。 それはある人と話すことだ。 「おはよう、優翔くん」 「おはよう、涼香さん」 「もしかして昨日も夜更かししてたの? 目の下クマができてるよ?」 「昨日ちょっと寝れなくてさ」 「何かあったら私に相談してね?」 「うん、絶対する」 この時間がずっと続けばいいと思った。 だけどそれが続くことはなかった。 ある日、学校の行き道で彼女を見つける。 見ていると横からトラックが走ってくる。 俺はそれを見た瞬間に走り出した。 大切な人を守れるなら後悔などない。 神から貰った『コピー』のスキルでたくさんの人を救う物語。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

火駆闘戯 第一部

高谷 ゆうと
ファンタジー
焼暴士と呼ばれる男たちがいた。 それは、自らの身体ひとつで、人間を脅かす炎と闘う者たちの総称である。 人間と対立する種族、「ラヨル」の民は、その長であるマユルを筆頭に、度々人間たちに奇襲を仕掛けてきていた。「ノーラ」と呼ばれる、ラヨルたちの操る邪術で繰り出される炎は、水では消えず、これまでに数多の人間が犠牲になっていった。人々がノーラに対抗すべく生み出された「イョウラ」と名付けられた武術。それは、ノーラの炎を消すために必要な、人間の血液を流しながらでも、倒れることなく闘い続けられるように鍛え上げられた男たちが使う、ラヨルの民を倒すための唯一の方法であった。 焼暴士の見習い少年、タスクは、マユルが持つといわれている「イホミ・モトイニ」とよばれる何かを破壊すべく、日々の鍛錬をこなしていた。それを破壊すれば、ラヨルの民は、ノーラを使えなくなると言い伝えられているためだ。 タスクは、マユルと対峙するが、全く歯が立たず、命の危機にさらされることになる。己の無力さを痛感したその日、タスクの奇譚は、ゆっくりと幕を開けたのだった。

処理中です...