66 / 94
第一の神獣。死の軍勢の片鱗
56話 シルの策略.1
しおりを挟む
「起きて、お兄ちゃん!」
見知らぬ少女はリオンを膝枕をしてニコリと笑っている。容姿はかなり幼くまさしく幼女であった。
「は?……あ、テメェかシル!!」
リオンは異様な光景に一瞬思考が止まりかけるが、すぐに冷静さを取り戻す。
彼は目の前の幼女がシルだと言う事を見抜いた。
「ど…ウブッ!」
シルの腹を激痛が襲う。彼女は上に飛ばされて天井らしきものに体をぶつけて落下する。
「何で幼女!?俺にそんな趣味はねぇぞ!」
リオンは飛び起きてシルから距離を取る。
「……おいで」
シルは起き上がると座り直して両手を広げた。そして
胸を差し出し優しく笑う。
「お前、いい加減にしろ、でないと今度は蹴り叩き込むぞ」
リオンはシルに対して嫌悪感と怒りを向ける。
「そう…コレはど…ウベフッ!」
シルは変身の途中にも関わらず顔面を蹴り飛ばされた。今度は壁に叩きつけられ、ばたりと倒れる。
「お前はマゾか!?」
リオンは取り乱しシルに一喝する。
シルの体はトウカと同じものになっていた。その完成度は実の兄弟でも違いが分からないほどである。
「待って、リオン、出会い頭に蹴られるほど私たちって仲悪かった?ポンコツも再現しないとダメ?」
シルは起き上がり上目遣いでリオンを見つめる。
「姉貴の見た目で媚びるな…気持ち悪い」
リオンは冷めた冷たい目つきでシルを見下ろす。
「あっ、それ、お土産に記録していい?(きっとマルクが喜ぶ)」
シルはリオンの解答を聞かず、魔法にてリオンの顔の画像を記録した。
「あのなぁ、シル、いい加減にしないと帰るぞ。何がしたい?」
リオンは呆れ、事を進めようと話を切り出す。
「分かったわ、ちょっと待ちなさい…」
シルの容姿はトウカの姿から始めの男性へと変身した。
「ん?僕は攻撃されないみたいだ。何でだろう」
シルは不思議そうに首を傾げる。
「早く」
リオンはシルを急かした。
「僕を自由にして」
シルは側から見ても真面目な様子で言った。
「断る!」
リオンは食い気味に否定した。
「ほらやっぱり~」
シルは「知ってた」とでも言いたそうな顔でリオンを見つめる。
「お前、いくつの研究所を破壊したか覚えてるか?」
リオンは質問を投げかける。
「32個だが、それが何か?」
男性の姿をしたシルは不思議そうに首を傾げる。
「そう言うとこだぞ、お前、ネットで何を学んでんだ…本当に」
リオンは呆れて物も言えないと言った様子である。
「僕だってバカじゃない、しっかりと情報は得ている。でも…人間の規則は人間にしか適用されないじゃないか」
シルは少し寂しそうに肩を落とす。
「おい待て、お前、起動してすぐ何した?」
リオンはシルの言葉に待ったを掛けた。
「え~と…パパとママを襲ったね。…性的な意味で」
シルは質問に答えた後、小さくボソッと付け足した。
「…で、そのあと駆けつけた教員と一戦やらかした。違うか?」
リオンは一応確認を取る。不穏なワードは聞かなかったことにした。
「そうそう、すごく楽しかった。とにかく派手で爽快だったよ。そういえば、リオンも来てたよね」
シルは楽しかった思い出を語る様に話す。
「はぁ、そう言うとこだぞ」
リオンは深くため息をついて言葉を漏らす。
「…テヘッ」
シルは姿を先程の幼女に変えてあざとく笑った。
「……」
リオンは怒りの表情を露わにして拳を握った。
「待って待って待って!」
シルは短い手足をバタつかせ尻を引き摺りながら後ろに下がる。
「ふぅ、どうやら君はこの姿が好きみたいだね」
シルは距離を取った後、男の姿に形を変えて立ち上がる。
「別に好きでもないが…言いたいことがあるなら早く言え。遺言くらいは聞いてやる」
リオンは最後に質問をする。
同情をしない訳では無い。しかし、シルの様な制御不能で知恵の回るモンスターを人間社会に解き放つわけにはいかないのである。
特別処置も存在するが、彼はあまりにも強大な力を持ってしまっていた。もし、彼の様な存在が人間に牙を剥いてしまったら、その被害は計り知れない。
「分かったよ、パパとママに伝えといて。『君との間に子供が欲しい』って、分かった?二人だよ!二人。パパとママに一回ずつ、計2回言うんだよ!いいね?」
シルは間違いが起こらぬ様に何度も確認を取る。
「少し、いや、かなり気味が悪いが、しっかりと伝えとく…(やけに軽い遺言だな)…ん?」
リオンはシルの言動に違和感を覚えチラリと見る。すると、ニヤリと笑うシルが目に入った。
「…でも、大丈夫。自分で言うから」
シルが得意げに宣言した。
見知らぬ少女はリオンを膝枕をしてニコリと笑っている。容姿はかなり幼くまさしく幼女であった。
「は?……あ、テメェかシル!!」
リオンは異様な光景に一瞬思考が止まりかけるが、すぐに冷静さを取り戻す。
彼は目の前の幼女がシルだと言う事を見抜いた。
「ど…ウブッ!」
シルの腹を激痛が襲う。彼女は上に飛ばされて天井らしきものに体をぶつけて落下する。
「何で幼女!?俺にそんな趣味はねぇぞ!」
リオンは飛び起きてシルから距離を取る。
「……おいで」
シルは起き上がると座り直して両手を広げた。そして
胸を差し出し優しく笑う。
「お前、いい加減にしろ、でないと今度は蹴り叩き込むぞ」
リオンはシルに対して嫌悪感と怒りを向ける。
「そう…コレはど…ウベフッ!」
シルは変身の途中にも関わらず顔面を蹴り飛ばされた。今度は壁に叩きつけられ、ばたりと倒れる。
「お前はマゾか!?」
リオンは取り乱しシルに一喝する。
シルの体はトウカと同じものになっていた。その完成度は実の兄弟でも違いが分からないほどである。
「待って、リオン、出会い頭に蹴られるほど私たちって仲悪かった?ポンコツも再現しないとダメ?」
シルは起き上がり上目遣いでリオンを見つめる。
「姉貴の見た目で媚びるな…気持ち悪い」
リオンは冷めた冷たい目つきでシルを見下ろす。
「あっ、それ、お土産に記録していい?(きっとマルクが喜ぶ)」
シルはリオンの解答を聞かず、魔法にてリオンの顔の画像を記録した。
「あのなぁ、シル、いい加減にしないと帰るぞ。何がしたい?」
リオンは呆れ、事を進めようと話を切り出す。
「分かったわ、ちょっと待ちなさい…」
シルの容姿はトウカの姿から始めの男性へと変身した。
「ん?僕は攻撃されないみたいだ。何でだろう」
シルは不思議そうに首を傾げる。
「早く」
リオンはシルを急かした。
「僕を自由にして」
シルは側から見ても真面目な様子で言った。
「断る!」
リオンは食い気味に否定した。
「ほらやっぱり~」
シルは「知ってた」とでも言いたそうな顔でリオンを見つめる。
「お前、いくつの研究所を破壊したか覚えてるか?」
リオンは質問を投げかける。
「32個だが、それが何か?」
男性の姿をしたシルは不思議そうに首を傾げる。
「そう言うとこだぞ、お前、ネットで何を学んでんだ…本当に」
リオンは呆れて物も言えないと言った様子である。
「僕だってバカじゃない、しっかりと情報は得ている。でも…人間の規則は人間にしか適用されないじゃないか」
シルは少し寂しそうに肩を落とす。
「おい待て、お前、起動してすぐ何した?」
リオンはシルの言葉に待ったを掛けた。
「え~と…パパとママを襲ったね。…性的な意味で」
シルは質問に答えた後、小さくボソッと付け足した。
「…で、そのあと駆けつけた教員と一戦やらかした。違うか?」
リオンは一応確認を取る。不穏なワードは聞かなかったことにした。
「そうそう、すごく楽しかった。とにかく派手で爽快だったよ。そういえば、リオンも来てたよね」
シルは楽しかった思い出を語る様に話す。
「はぁ、そう言うとこだぞ」
リオンは深くため息をついて言葉を漏らす。
「…テヘッ」
シルは姿を先程の幼女に変えてあざとく笑った。
「……」
リオンは怒りの表情を露わにして拳を握った。
「待って待って待って!」
シルは短い手足をバタつかせ尻を引き摺りながら後ろに下がる。
「ふぅ、どうやら君はこの姿が好きみたいだね」
シルは距離を取った後、男の姿に形を変えて立ち上がる。
「別に好きでもないが…言いたいことがあるなら早く言え。遺言くらいは聞いてやる」
リオンは最後に質問をする。
同情をしない訳では無い。しかし、シルの様な制御不能で知恵の回るモンスターを人間社会に解き放つわけにはいかないのである。
特別処置も存在するが、彼はあまりにも強大な力を持ってしまっていた。もし、彼の様な存在が人間に牙を剥いてしまったら、その被害は計り知れない。
「分かったよ、パパとママに伝えといて。『君との間に子供が欲しい』って、分かった?二人だよ!二人。パパとママに一回ずつ、計2回言うんだよ!いいね?」
シルは間違いが起こらぬ様に何度も確認を取る。
「少し、いや、かなり気味が悪いが、しっかりと伝えとく…(やけに軽い遺言だな)…ん?」
リオンはシルの言動に違和感を覚えチラリと見る。すると、ニヤリと笑うシルが目に入った。
「…でも、大丈夫。自分で言うから」
シルが得意げに宣言した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
白の魔女の世界救済譚
月乃彰
ファンタジー
※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。
白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。
しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。
そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

異世界転生 剣と魔術の世界
小沢アキラ
ファンタジー
普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。
目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。
人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。
全三部構成の長編異世界転生物語。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる