モンスターコア

ざっくん

文字の大きさ
上 下
49 / 94
第一の神獣。死の軍勢の片鱗

39話 トウカの分身

しおりを挟む
 そこは、外生生物モンスターの形成する円筒の内側、特攻した教育トウカの分身たちは無傷で生存していた。
 それは、彼らが本体であろう個体の排除を優先したからである。

「ねぇ!私たち舐められてるわよ!」

 分身の一人が声を上げた。

キィ!

 その声に反応して速度に特化した齧歯動物ラット系モンスターが飛びついた。
 分身はあまりの速度に反応し切れず噛みつかれ、次々と群がる昆虫類インセクト系モンスター蚊食鳥バット系モンスターなどの小型モンスターに埋もれていく。その時、

ドカーーンッ!!

 群がるモンスターの中心で大爆発が起きた。ボトボトとモンスターのコアが地面に落ちる。分身たちは真っ先に落ちたコアの原石を取りに行く。
 モンスターたちは警戒し、円筒の形から半球状に形を変えて分身に近づかず遠距離から魔法による攻撃を始めた。魔法も数が多いだけに多様であり、単純な電撃の『雷魔法』もあれば、ムチを模した『炎魔法』、高圧で発射し対象を切断する『水魔法』などある。
 分身の内の数人は魔法を受け、負傷してしまう者もいた。
 かすり傷を負った者はそのまま走り、足手纏いになるほどの怪我を負った者は立ち止まり一つでも多くの魔法をその身に受ける。致命傷を負い立つことすらできない者は地に伏しじっと時を待つ。無残にも即死してしまった者の体は何も残さず霧散した。

「ねぇ、統率個体リーダーいると思う?」

「居ないんじゃないかしら」

「どうする?私たちの自爆も焼け石に水よ?」

「いまさらだけど、万軍ってモンスター全般の群れなのね」

「ねぇ見て!あそこで粘体動物スライム系モンスターが分裂してるわ」

 爆心地にたどり着いた分身が次々にコアを拾い上げる。

「これは、学園の方で集中砲火してもらったほうがいいんじゃない?」

「忘れたの?元々そうだったのよ」

「私たちがパンゲアに来たのは偵察と足止のはずよ。学園に向かってなければ戦う必要もないわ。」

「じゃあ、何で今私たち戦ってるの?」

「あっ!リオンに飛ばされたのよ!」

 その時、分身たちはどよめき騒つく。

「絶対、生きて帰るわよ!」

「誰か一人だけでも生きて本体にこの情報を伝えるのよ!」

(必ず、あの愚弟に鉄槌を下してやる!)

 更なる目的を得た彼女らの手際は素早かった。手元のコアをかろうじて息のある負傷者に投げた。そして、爆発音を背にモンスターの壁に向かって走り出した。
 モンスターらは腹の中の獲物を
逃さまいと魔法などで攻撃を仕掛け食い止めようとしてくる。
 分身は一本の矢のような陣形を組んで走った。先頭を走るのは『空間魔法』持つ分身である。『空間魔法』は指定した空間内を掛け合わせて発動させた別の魔法の影響下に置く補助魔法だが、生物が例外なく持つ魔法への抵抗を利用し応用することで生物のシルエットを感覚で捉えることが出来る。『炎魔法』で形成された長めのナイフを二本持ち魔法や特攻するモンスターを叩き落とす。その背後では『炎魔法』のコアを持った個体が武具をと『水魔法』のコアを持った個体が防具を作成していた。最後尾には優先的に装備が支給される。それは、定期的に背後から追撃してくるモンスターたちに対しての殿しんがりとなるためである。うしろからの時間が経つほど装備の支給が行き渡りモンスターの壁に近づく頃には残る四十名ほど全員が完全武装となっていた。そこで『炎魔法』と『水魔法』を発動させていた二人が膝を着いて立ち止まった。

「もう限界ね」

 二人はコアを他の分身に託し先程拾っていたコアを二人で握った。二人の体はコアに吸い込まれるように消えていき、少し経ってから、

ドカン!

 と、爆発した。規模は初手ほどのものでは無かったが最後の殿としての役割を果たした。

ガラッ、ガラッ、

 進む先の地面が少し盛り上がる。
 それを見て先頭を走っていた分身が後続に武器とコアを託し、こちらもコアの原石に吸い込まれていった。後続でコアを受け取った分身は原石を一緒に拾い上げ壁に向かって投げた。

ドカーンッ!

 そのコアは突然光だしひび割れ終いには壁と地面を巻き込んで爆発した。モンスターがひしめき合う壁には穴が開き光が差し込んできた。
 脱出に手が差し掛かった瞬間、天井を形作っていた。モンスターたちが覆いかぶさるように落下してきた。

ドカーーーーーンッ!!

 遠目からでもわかるような巨大な爆発が万軍を襲った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白の魔女の世界救済譚

月乃彰
ファンタジー
 ※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。  白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。  しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。  そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

王女、豹妃を狩る

遠野エン
ファンタジー
ベルハイム王国の王子マルセスは身分の差を超えて農家の娘ガルナと結婚を決意。王家からは驚きと反対の声が上がるが、マルセスはガルナの自由闊達な魅力に惹かれ押し切る。彼女は結婚式で大胆不敵な豹柄のドレスをまとい、周囲をあ然とさせる。 ガルナは王子の妻としての地位を得ると、侍女や家臣たちを手の平で転がすかのように振る舞い始める。王宮に新しい風を吹かせると豪語し、次第に無茶な要求をし出すようになる。 マルセスの妹・フュリア王女はガルナの存在に潜む危険を察知し、独自に調査を開始する。ガルナは常に豹柄の服を身にまとい人々の視線を引きつけ、畏怖の念を込めて“豹妃”というあだ名で囁かれるのだった。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...