モンスターコア

ざっくん

文字の大きさ
上 下
45 / 94
一年四組、施設巡り モンスター牧場

35話 牧場産モンスターの脅威

しおりを挟む
 牧場内に入るとそこには、青々と背の高い草の茂った草原が辺り一面に広がっていた。
 事前に配られていた最新の地図には、森林地帯、空洞地帯、湿地帯、湖、などの地形も存在しているはずなのだが山岳地帯以外の地域を確認できない。それほどまでに広大な草原が広がっている。

 リュート達は時間短縮のために魔動路(マナ自動動路)を利用した。意外なことに、モンスターが闊歩する牧場内もにそれは引かれていた。流石に安全性を考慮してか、一般的なガラス張りではなく、地下に本線を通した地下路となっている。それが一番安全なのだから外を見たいなどの贅沢は言ってられない。

「なぁ、お前ら、アレどう言う意味だか分かったか?」

 移動中、唐突にレンが口を開いた。

「油断するな、と言う意味でありんしょう?」

 コユメが言葉を返す。

「それにしては言葉に重みがあったと思う。油断しない方がいい」

 リュートが自分の意見を伝える。

「私は今そんなことを考えても意味ないと思うのです。戦ってから考えても遅くないのです」

 「……そうか、」

  モンスターの力とコアの質は千差万別であり、その関係は比例の形をとっている。さらに、同じ威力の魔法を使うモンスターであっても戦闘に慣れ戦略に優れた個体から得た物の方が質の高いものとなっている。仕組みは分かっていないものの、統計データとして明らかで正しいものとなっている。
 学園産の魔道具、コアの質の高さは周知の事実であり、質の高さとモンスターの能力の関係性もまた周知の事実知らない者はいない。そのため、この会話もその事を前提に話されている。

 しかし、レンは漠然とした不安を抱えていた。根拠はある。しかし弱い、もしかしたらと言う程度である。が、自身の経験が言っている、ここのモンスターたちの格は全くの別次元である事を。
 彼の戦闘方法は簡易魔動人形ゴーレムを状況に応じ制作し、共に戦闘を行うと言うものであった。そのため、コアの質とモンスターの力の関係性を人一倍の知識と感覚を有していた。その為に、その考えを否定できない。むしろ後押しすらする。

(まぁ、学園内で命に関わることはないだろうが、)

ーーー死ぬぞ……

 レンの頭に教員リオンの言葉が頭を過る。

(まさかな…)

 考えれば考えるほど不安になっていく。


ウィーーン

 リュート達の立っていた魔動路の地面が本線と分離した。

「お前ら、俺様の後ろについて来い。油断するなよ、ウサギを狩る獅子のつもりでモンスター共を相手にする。いいな!?」

 レンは少しでも安心しようと警告の意味を込めてチームメイトに声がけをした。

 彼らが訪れたのは横幅5メートル程の空洞地帯、目的は一般的に体長30センチになる齧歯動物ラット系モンスターである。他二つの依頼に対して難易度が低く簡単なところから攻め落とそうと言う魂胆であった。

 陣形はレンが先頭、そののちにコユメ、リョウカ、リュートの順である。

「…ッ!」

レンが立ち止まった。

「「…ッ!」」

レンの目線の先を見て3人も気付く。目の前の岩陰に直径30センチ程の穴が開いていた。

「少しデカいが、中に入った跡がある。作戦どおりにいくぞ、」

レンの指示の元、リュートが『岩魔法』で巣穴の入り口を塞いだ。

「あったのです。」

 リョウカは『植物魔法』で作り出した根で他の巣穴を探った。

「分かった、そっち行くね」

 リュートは見つかった巣穴を塞ぎに向かう。

「上の方には無いでありんす」

 高い場所の巣穴を探索していたコユメが言った。

 塞いでいない巣穴の出入口は残り一つとなった。

「俺様の出番はなかったか、」

 鉢合わせなどの緊急事態に対応するために待機していたレンは待ちぼうけをくらっていた。
 コユメの耳がピクリと動いた。

「リュートさん!そこ離れなんし!」

 最後の一つを塞ごうとするリュートにコユメが叫び扇子を振った。

 「?…ッ!」

キィ!キィ!キィ!キィ!キィ!キィ!……

リュートのが塞ごうとしていた穴から齧歯動物ラット系モンスターが大量に飛び出してきた。

「イッ!」

コユメの花びらはがリュートを庇う形でモンスターとリュートの間に入り、モンスターを攻撃した。しかし、勢あまってリュートの腕を掠めてしまった。

「申し訳ありんせん」

「うんん、助かったよ。ありがとう」

リュートは右手にショーテル、左手に丸盾を形成した。

「怪我してないか!?」

レンがモンスターに向かってゴーレムナイフを三体投げた。

「大丈夫、掠っただけだよ」

飛び出した齧歯動物ラット系モンスターはちょうど6匹。しかし、それよりも目を見張るのはその大きさである。見慣れたそれより二回りほど大きく体長60センチほどあった。

(お、大きい…)

「大丈夫!見た目ほど強く無い。30センチ個体の1.3倍くらいの強さだよ。力が強いけど頭が悪い」

「お前の目はそんなことまで分かるのか!?良い働きだ!」

ナイフゴーレムがまた三体追加された。壁に刺さっていた初めの三体が一人でに浮遊し、モンスターへの攻撃を始めた。

キィー!

コユメの攻撃によって重症を負っていた個体がレンのゴーレムに貫かれた。

キィ、キィ、キィキィ、キィー、キィ、

モンスターがものうるさく鳴き始めた。

「リュート!お前は入り口側を塞げ!」

レンは『鋼魔法』で空洞の奥側を塞いだ。

「分かった」

 リュートもレンと同じように『岩魔法』で入り口側を塞いだ。

キィ?キィ、キィキィ、キィ、

援軍の望めないこの状況であってもモンスター達は鳴き続けた。

キィ!

 順調に戦いが進みもう1体を倒した頃、モンスターの一体がゴーレムの攻撃を躱した。それは完全に死角であり本来なら当たっていたものであった。
 そして、徐々に戦闘の毛色が変化してきた。

 コユメの攻撃が当たらなくなってきた。

 レンのゴーレム制作が邪魔され始めた。

 リョウカの根に近づかなくなった。

 リュートに砂をかけ始めた。

「ねぇ、分かってると思うけど、」

「あぁ、俺様との戦いで成長…いや学んでいる。コイツらは元々頭はよかったらしい。ただ、戦い慣れていなかっただけって事か」


モンスターが反撃を始めた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白の魔女の世界救済譚

月乃彰
ファンタジー
 ※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。  白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。  しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。  そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...