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受験戦争
19話 洞窟内の攻防戦.1 2/12 手直ししました。
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リュートが洞窟内を走っている発信機に表示されている赤い点が画面反対側に移動した。
「ん?」
リュートはその場に立ち止まって辺りを見回す。しかし、人影は見当たらず、近くに隠れられる場所も無い。
(上か下に空洞があるみたい。赤点に変化がない…何か仕掛けて来るかも)
リュートは発信機を確認してある程度当たりをつけると、『座標魔法』と『軟化魔法』を使って洞窟の天井を軟化させた。天井の岩が円柱状に軟化して泥のようになった。
「う、うあぁぁー!」
ドチャッ!
一人の受験生が泥と一緒に落ちてきた。
「うっ、」
頭から落下した彼は痛そうに頭をさすっている。いきなりの落下で自身の状況把握が済んでおらず無防備な状態となっていた。
リュートはその隙を突き相手を攻撃しトドメを刺した。障壁の破壊され失格となった彼は何の前触れもなくその場から消えてしまった。
(いい感じ)
リュートは好調な出だしにテンションが上がり、少し顔がにやけていた。
魔法で作られた穴を確認する自分の開けた穴とは別の穴が掘られていた。人ひとりが通れるほどの大きさで途中で途切れている。状況証拠的に彼が穴を開けてこちらに向かっていたのが分かる。
ピキッ、
リュートが開けた穴と敵の掘った穴の境目に亀裂が入る。
(え?)
ビキッ!ビキビキ、
穴の中全体に次々と亀裂が走っる。天井がガラガラと轟音を立てて崩れ落ちた。
(やばっ…)
リュートはすぐさま『岩魔法』で半円状のドームで自分を囲み身を守る。さらに、真上から落下してくる岩を先程の様に軟化させてドームへの衝撃を減らす。
リュートは洞窟の崩落を想定して対策を練っていたが、実際に体験すると恐怖と不安が込み上げ、心臓がドクドクと鳴った。
しばらくして落ちる岩の音が止み今までが嘘のように静かになった。
「すぅー、はぁー…」
リュートは深呼吸をして心を落ち着ける。平成を取り戻した後、次の行動に移ろうと発信機を確認しようとする。
ピキッ、ピキピキッ
足元から聞き覚えのある音がしてきた。
「……ッ!」
リュートは全身の毛が逆立つのを肌で感じた。とてつもない轟音と共に地面が崩れ落ちた。
咄嗟に魔法を発動させて地面を軟化させる事で落下による衝撃を吸収した。しかし、焦っていたためか必要以上に力が入り深く地面を軟化させてしまった。そのため、穴が自身の身長よりも深くなってしまったため足がつかず沈んでしまった。
(まずい…)
リュートは始めは泳いで上がろうとしたが、泥の粘度が高いためうまく泳げずに動くほど下に沈むのを感じた。そのため次に『岩魔法』『座標魔法』『固定魔法』を発動させて足場を設置し上を目指した。しかし、上に行くほど落ちて来る岩の勢いが強くなり、思うように上がれなくなってしまった。リュートは、壁に接触するまで横に移動して『岩魔法』で壁に足場と盾を作った。盾を上に構えて足場を追加しながら上を目指す。
「プハッ!はぁはぁはぁ…」
やっとの思いで地面から顔を出す。予想外の出来事に心を乱されたことと、息を止めて動き続けた事で彼の肺は酸素を欲していた。
(危なかった…)
少し落ち着いて上を見上げると岩が折り重なってゆとりのあるスペースが作られていた。落ちる前に形成した岩のドームが支えになっていてちょっとやそっとでは崩れないような形になっていた。
リュートはかなりの轟音が響いたため敵が寄ってきていないかを確認するために発信機を確認する。
「…ッ!」
リュートは『加速魔法』を発動させて地面の中に潜りった。壁の足場に捕まり手探りで発信機のモードを3に切り替える。
地面に潜った後すぐに岩の壁から水の槍がリュートの元いた場所を突き刺さった。間一髪というほどのタイミングでは無いが気付くのが少しでも遅れていればリタイアは免れなかっただろう。
リュートは『岩魔法』を使い穴を綺麗に塞いだ。そして『軟化魔法』と『岩魔法』を発動させて地下に道を作った。そこをコの字型の足場を作り梯子を登る様にして地下を移動していく。
リュートは息が限界に近づいたため、敵からのリアクションが何もなかった事で場所がバレていないと判断して息継ぎをすることにした。
『岩魔法』の蓋の付いた棒と、それがピッタリ嵌る細長い筒と、比べて少し太く途中に横穴の空いた筒の二つを形成する。
軟化させた地面から筒を二つの出し、棒で中の泥を掻き出した。細い筒を口に咥えて、太い筒の横穴耳を当てた。
「……」
リュートは呼吸をしながらどんな些細なことも聞き逃さない様に集中して情報収集をする。
「…ッ!ガハッ、ゴボボボッ!」
少し音がしたと思ったら口の中に大量の泥が入ってきた。筒を引っ込めて先を手探りで確認する。
筒は何者かによって切断されて呼吸の手段を断たれてしまった。だが、リュートはギリギリで石が壁に当たる音を聞き取っていた。
(少し先に進めば壁があり上に離脱できる)
リュートは勘ではあるが少し進んだ後、上へと進路を変えた。少なくても、地面から顔を出すより安全なはずだと考えた。しかし、少し上っただけで、頭が地面に出てしまった。
「テメェ、舐めてんのか⁉︎」
リュートの真上からドスの効いた声がした。どうやら、崩れた岩の上に出てしまったらしい。
「……ッ!(まずい!)」
リュートは絶望的な状況に戦慄した。
「何とか言いやがれや!オラッ!」
鋭い目付きの男が水の槍を巨大な鎌へと変えてリュートの頭に振り降ろした。
リュートは咄嗟に潜って鎌を躱し、地面の中から手槍を三本束ねて形成し上に突き上げた。岩の小盾を構えて警戒しながら地上に上がる。
男は槍を後ろに飛んで躱し水のクナイを軟化した地面に向けて投げた。
リュートはクナイを盾でガードする。
「チッ…」
男が舌打ちをした。地面に着地して鎌を槍に戻して構える。
(隙を見て逃げよう…)
リュートはこの男を知っていた。
男の名はカイザと言う。彼は目つきが悪く黒の額縁眼鏡掛けたオールバッグで身長が高いヤンキーとインテリヤクザの狭間の様な面持ちである。
昨日の実技試験成績上位者であり、昨夜の予習でリュートは彼を『実力不明の相手』に分類した。戦った相手が弱かったうえに相性が悪かった為に瞬殺されて情報がろくにない。
(役立たず…)
リュートは飛び道具の存在すら引き出せなかったカイザの対戦相手を呪う。
少ない対戦の情報を整理して分かった事と言えば、左利きである事。槍や巨大な鎌、棍棒などの長物の技術が卓越している事。常に有利な間合いを保ち有利な状況を押し付ける戦法を取る事。様子見に左の薙ぎ払いを多用する事だけである。
ガチン!
リュートは十手を形成して槍を絡め取り十手を『固定魔法』でその場に固定した。
「はーッ!」
リュートがその隙に全力で腹を殴った。
「チッ」
カイザは槍を手放し、腕を挟んでガードした。後ろにに下がって棒手裏剣を構えた。
「…ッ!」
カイザが前を見て驚愕した。攻撃をする間も無く『岩魔法』で形成された槍が二本も飛んできていた。
「はぁー…めんどくせぇ!」
カイザは素早い動きで槍を躱し、棒手裏剣を投げた。しかし、それはリュートの小楯で防がれてしまう。
(クッ…攻めてこねぇな、遠距離が得意そうにも見えねぇが…策でもあんのか?)
カイザはヤキモチしながら新たに棒手裏剣を形成して構える。
「…ッ!」
カイザの両足が突然地面に沈んだ。足に泥が絡まりその場から動けなくなってしまった。
リュートの『軟化魔法』と『座標魔法』による落とし穴である。
畳み掛けるように槍が一本飛んできた。
「これぐれぇで、仕留められるわけ…ねぇだろ!」
カイザは槍を地面に突き刺し穴から脱出した後、向かい来る槍を難なく弾き、自身の槍を三又に変えてリュートに投げた。
「グワァーッ!」
リュートは小楯でガードしたが、衝撃で盾を弾き飛ばされて自身も体制を崩してしまった。
「さっさと終わらせてやるよ」
カイザが槍を形成してリュートに向かって走り出した。
(来たっ!)
リュートはこの状況に歓喜した。リュートの周りには落とし穴が張り巡らしてあったのである。
それは地表面のみを残しその下に軟化魔法を掛ける事で完成する。目視での見分けはできず、『闇魔法』での無効化もされない。仕掛け得な罠である。
しかし、次の瞬間リュートの歓喜は一瞬にして消し飛んだ。
カイザが棒手裏剣を地面に打ち付けた。
「…ッ!(バレてた!?)」
リュートは驚きながらも飛び道具に備えて盾を一つ形成した。
「……」
リュートは周りを見てて出口を探る。しかし、崩れた岩に塞がれたか、死角に入ってしまったかで、見つけることができない。迎撃のため先程と同じ様に槍を形成して投げる。だが、今までと違い手放した直後に魔法を発動させて槍を軟化せた。
(馬鹿の一つ覚え…違う!)
カイザは槍を弾く直前にその違和感に気づいた。しかし、対応しきれずに軟化した岩の泥を浴びてしまった。顔に泥がかかり少し仰け反る。
「クソっ…」
カイザは腕でも顔を拭う。その時、視界の隙間でリュートがこちらに走ってくるのを確認した。
(甘いっ!)
槍で薙ぎ払い応戦する。しかし、
ガギンッ!
空中に浮かぶ岩の棒によって止められてしまう。
「チッ(いつのまに!?)」
カイザが舌打ちをした。
(今だ!)
リュートが攻撃をすべくショーテルを形成し踏み込んだ。しかし、体が急に軽くなり浮かび上がっしまった。
「…な!?」
リュートが空中へと放り出されてしまった。
(でも…)
だが、思考を変えて好機と捉えた。
『座標魔法』『岩魔法』『固定魔法』を使用して足場を生成した。さらに上へと登ることで離脱を試みる。
あと少しで上の洞窟手が届きそうな時、リュートの目に眩い光が差し込んだ。
「…ッ!」
天井が崩れて岩が降り注いできた。
リュートは盾で岩を防いだものの、その重みで下へ押し戻されてしまった。
「クッ!」
岩に紛れてカイトが落ちて来た。真剣な顔で頭上を見つめている。
それを追うように地面へと向かう人影が一つ。四枚の羽を持つ赤い複眼の少女である。彼女は『風魔法』で形成された自身の身長ほどある片刃の双剣を持ってカイトを斬りつけた。
「ん?」
リュートはその場に立ち止まって辺りを見回す。しかし、人影は見当たらず、近くに隠れられる場所も無い。
(上か下に空洞があるみたい。赤点に変化がない…何か仕掛けて来るかも)
リュートは発信機を確認してある程度当たりをつけると、『座標魔法』と『軟化魔法』を使って洞窟の天井を軟化させた。天井の岩が円柱状に軟化して泥のようになった。
「う、うあぁぁー!」
ドチャッ!
一人の受験生が泥と一緒に落ちてきた。
「うっ、」
頭から落下した彼は痛そうに頭をさすっている。いきなりの落下で自身の状況把握が済んでおらず無防備な状態となっていた。
リュートはその隙を突き相手を攻撃しトドメを刺した。障壁の破壊され失格となった彼は何の前触れもなくその場から消えてしまった。
(いい感じ)
リュートは好調な出だしにテンションが上がり、少し顔がにやけていた。
魔法で作られた穴を確認する自分の開けた穴とは別の穴が掘られていた。人ひとりが通れるほどの大きさで途中で途切れている。状況証拠的に彼が穴を開けてこちらに向かっていたのが分かる。
ピキッ、
リュートが開けた穴と敵の掘った穴の境目に亀裂が入る。
(え?)
ビキッ!ビキビキ、
穴の中全体に次々と亀裂が走っる。天井がガラガラと轟音を立てて崩れ落ちた。
(やばっ…)
リュートはすぐさま『岩魔法』で半円状のドームで自分を囲み身を守る。さらに、真上から落下してくる岩を先程の様に軟化させてドームへの衝撃を減らす。
リュートは洞窟の崩落を想定して対策を練っていたが、実際に体験すると恐怖と不安が込み上げ、心臓がドクドクと鳴った。
しばらくして落ちる岩の音が止み今までが嘘のように静かになった。
「すぅー、はぁー…」
リュートは深呼吸をして心を落ち着ける。平成を取り戻した後、次の行動に移ろうと発信機を確認しようとする。
ピキッ、ピキピキッ
足元から聞き覚えのある音がしてきた。
「……ッ!」
リュートは全身の毛が逆立つのを肌で感じた。とてつもない轟音と共に地面が崩れ落ちた。
咄嗟に魔法を発動させて地面を軟化させる事で落下による衝撃を吸収した。しかし、焦っていたためか必要以上に力が入り深く地面を軟化させてしまった。そのため、穴が自身の身長よりも深くなってしまったため足がつかず沈んでしまった。
(まずい…)
リュートは始めは泳いで上がろうとしたが、泥の粘度が高いためうまく泳げずに動くほど下に沈むのを感じた。そのため次に『岩魔法』『座標魔法』『固定魔法』を発動させて足場を設置し上を目指した。しかし、上に行くほど落ちて来る岩の勢いが強くなり、思うように上がれなくなってしまった。リュートは、壁に接触するまで横に移動して『岩魔法』で壁に足場と盾を作った。盾を上に構えて足場を追加しながら上を目指す。
「プハッ!はぁはぁはぁ…」
やっとの思いで地面から顔を出す。予想外の出来事に心を乱されたことと、息を止めて動き続けた事で彼の肺は酸素を欲していた。
(危なかった…)
少し落ち着いて上を見上げると岩が折り重なってゆとりのあるスペースが作られていた。落ちる前に形成した岩のドームが支えになっていてちょっとやそっとでは崩れないような形になっていた。
リュートはかなりの轟音が響いたため敵が寄ってきていないかを確認するために発信機を確認する。
「…ッ!」
リュートは『加速魔法』を発動させて地面の中に潜りった。壁の足場に捕まり手探りで発信機のモードを3に切り替える。
地面に潜った後すぐに岩の壁から水の槍がリュートの元いた場所を突き刺さった。間一髪というほどのタイミングでは無いが気付くのが少しでも遅れていればリタイアは免れなかっただろう。
リュートは『岩魔法』を使い穴を綺麗に塞いだ。そして『軟化魔法』と『岩魔法』を発動させて地下に道を作った。そこをコの字型の足場を作り梯子を登る様にして地下を移動していく。
リュートは息が限界に近づいたため、敵からのリアクションが何もなかった事で場所がバレていないと判断して息継ぎをすることにした。
『岩魔法』の蓋の付いた棒と、それがピッタリ嵌る細長い筒と、比べて少し太く途中に横穴の空いた筒の二つを形成する。
軟化させた地面から筒を二つの出し、棒で中の泥を掻き出した。細い筒を口に咥えて、太い筒の横穴耳を当てた。
「……」
リュートは呼吸をしながらどんな些細なことも聞き逃さない様に集中して情報収集をする。
「…ッ!ガハッ、ゴボボボッ!」
少し音がしたと思ったら口の中に大量の泥が入ってきた。筒を引っ込めて先を手探りで確認する。
筒は何者かによって切断されて呼吸の手段を断たれてしまった。だが、リュートはギリギリで石が壁に当たる音を聞き取っていた。
(少し先に進めば壁があり上に離脱できる)
リュートは勘ではあるが少し進んだ後、上へと進路を変えた。少なくても、地面から顔を出すより安全なはずだと考えた。しかし、少し上っただけで、頭が地面に出てしまった。
「テメェ、舐めてんのか⁉︎」
リュートの真上からドスの効いた声がした。どうやら、崩れた岩の上に出てしまったらしい。
「……ッ!(まずい!)」
リュートは絶望的な状況に戦慄した。
「何とか言いやがれや!オラッ!」
鋭い目付きの男が水の槍を巨大な鎌へと変えてリュートの頭に振り降ろした。
リュートは咄嗟に潜って鎌を躱し、地面の中から手槍を三本束ねて形成し上に突き上げた。岩の小盾を構えて警戒しながら地上に上がる。
男は槍を後ろに飛んで躱し水のクナイを軟化した地面に向けて投げた。
リュートはクナイを盾でガードする。
「チッ…」
男が舌打ちをした。地面に着地して鎌を槍に戻して構える。
(隙を見て逃げよう…)
リュートはこの男を知っていた。
男の名はカイザと言う。彼は目つきが悪く黒の額縁眼鏡掛けたオールバッグで身長が高いヤンキーとインテリヤクザの狭間の様な面持ちである。
昨日の実技試験成績上位者であり、昨夜の予習でリュートは彼を『実力不明の相手』に分類した。戦った相手が弱かったうえに相性が悪かった為に瞬殺されて情報がろくにない。
(役立たず…)
リュートは飛び道具の存在すら引き出せなかったカイザの対戦相手を呪う。
少ない対戦の情報を整理して分かった事と言えば、左利きである事。槍や巨大な鎌、棍棒などの長物の技術が卓越している事。常に有利な間合いを保ち有利な状況を押し付ける戦法を取る事。様子見に左の薙ぎ払いを多用する事だけである。
ガチン!
リュートは十手を形成して槍を絡め取り十手を『固定魔法』でその場に固定した。
「はーッ!」
リュートがその隙に全力で腹を殴った。
「チッ」
カイザは槍を手放し、腕を挟んでガードした。後ろにに下がって棒手裏剣を構えた。
「…ッ!」
カイザが前を見て驚愕した。攻撃をする間も無く『岩魔法』で形成された槍が二本も飛んできていた。
「はぁー…めんどくせぇ!」
カイザは素早い動きで槍を躱し、棒手裏剣を投げた。しかし、それはリュートの小楯で防がれてしまう。
(クッ…攻めてこねぇな、遠距離が得意そうにも見えねぇが…策でもあんのか?)
カイザはヤキモチしながら新たに棒手裏剣を形成して構える。
「…ッ!」
カイザの両足が突然地面に沈んだ。足に泥が絡まりその場から動けなくなってしまった。
リュートの『軟化魔法』と『座標魔法』による落とし穴である。
畳み掛けるように槍が一本飛んできた。
「これぐれぇで、仕留められるわけ…ねぇだろ!」
カイザは槍を地面に突き刺し穴から脱出した後、向かい来る槍を難なく弾き、自身の槍を三又に変えてリュートに投げた。
「グワァーッ!」
リュートは小楯でガードしたが、衝撃で盾を弾き飛ばされて自身も体制を崩してしまった。
「さっさと終わらせてやるよ」
カイザが槍を形成してリュートに向かって走り出した。
(来たっ!)
リュートはこの状況に歓喜した。リュートの周りには落とし穴が張り巡らしてあったのである。
それは地表面のみを残しその下に軟化魔法を掛ける事で完成する。目視での見分けはできず、『闇魔法』での無効化もされない。仕掛け得な罠である。
しかし、次の瞬間リュートの歓喜は一瞬にして消し飛んだ。
カイザが棒手裏剣を地面に打ち付けた。
「…ッ!(バレてた!?)」
リュートは驚きながらも飛び道具に備えて盾を一つ形成した。
「……」
リュートは周りを見てて出口を探る。しかし、崩れた岩に塞がれたか、死角に入ってしまったかで、見つけることができない。迎撃のため先程と同じ様に槍を形成して投げる。だが、今までと違い手放した直後に魔法を発動させて槍を軟化せた。
(馬鹿の一つ覚え…違う!)
カイザは槍を弾く直前にその違和感に気づいた。しかし、対応しきれずに軟化した岩の泥を浴びてしまった。顔に泥がかかり少し仰け反る。
「クソっ…」
カイザは腕でも顔を拭う。その時、視界の隙間でリュートがこちらに走ってくるのを確認した。
(甘いっ!)
槍で薙ぎ払い応戦する。しかし、
ガギンッ!
空中に浮かぶ岩の棒によって止められてしまう。
「チッ(いつのまに!?)」
カイザが舌打ちをした。
(今だ!)
リュートが攻撃をすべくショーテルを形成し踏み込んだ。しかし、体が急に軽くなり浮かび上がっしまった。
「…な!?」
リュートが空中へと放り出されてしまった。
(でも…)
だが、思考を変えて好機と捉えた。
『座標魔法』『岩魔法』『固定魔法』を使用して足場を生成した。さらに上へと登ることで離脱を試みる。
あと少しで上の洞窟手が届きそうな時、リュートの目に眩い光が差し込んだ。
「…ッ!」
天井が崩れて岩が降り注いできた。
リュートは盾で岩を防いだものの、その重みで下へ押し戻されてしまった。
「クッ!」
岩に紛れてカイトが落ちて来た。真剣な顔で頭上を見つめている。
それを追うように地面へと向かう人影が一つ。四枚の羽を持つ赤い複眼の少女である。彼女は『風魔法』で形成された自身の身長ほどある片刃の双剣を持ってカイトを斬りつけた。
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