モンスターコア

ざっくん

文字の大きさ
上 下
16 / 94
受験戦争

9話 ニナvsサイカ

しおりを挟む
 他に邪魔する者のいないコート内、二人の女が睨み合っていた。

「それでは、始めてください!」

 アナウンスにより試合が始まった。
 合図の直後ニナとサイカは同時に動く。ニナは『氷魔法』で氷の矢と和弓を、サイカは『雷魔法』で頭サイズの球体と、小楯を二つずつ形成した。
 サイカは『念力魔法』で球体を浮かべる。そして、盾と球体を正面に向け守りを固め、待ち受けるニナに向かって走り出した。
 対するニナは弓を構えたまま『縮地魔法』を発動する。一瞬前に出てすぐさま元の場所に戻った。そして『氷魔法』と『射出魔法』を用いて鋭く小さな氷の粒を生成し、マシンガンの如く射出、弾幕で牽制しながらジグザグと交代していくた。一見無駄の多いように見えるその行動にも意味があった。彼女の通った軌跡には『付与魔法』と『衝撃魔法』によって仕掛けられた地雷がびっしりと敷き詰められていた。
 しかし、サイカはそれを踏むことはなかった。彼女は試合開始から『魔視魔法』を発動させていた。それによって、マナ自体を可視化し地雷を避けていた。さらに、小楯と球体を器用に使い分けて氷のつぶてを砕きながらニナに迫る。
 ニナは向かってくるサイカに対してついに矢を引き構えた。弓は氷とは思えないほどに反った。
 『氷魔法』や『炎魔法』などの生成魔法はその名称の物質の様な物を生み出し操ることができる。ここで重要なのは「様な物」であり生み出しているのはマナが変質した物質である。そのため、生成された氷によく似たそれはマナ操作で、硬度、軟性、弾性などの性質に融通が効く。よって、生成魔法によって作り出される弓と矢は、よくしなる弓や弦、本物の様に柔らかい羽が使用される。
 ニナはじっくりと狙いを定め満を辞して鋭く尖った矢を穿った。
 それを躱せないことを悟ったサイカは『雷魔法』の球体二つと小楯を使いガードする。氷の矢は球体を二つ貫通し、小楯に当たり砕けた。破壊された球体と矢の破片は霧散してマナに戻る。盾を二つ失い防御力の落ちたサイカの足に氷の礫が複数直撃する。

「イッ…!」

 氷が直撃した足は魔道具の障壁が防ぎ外傷はない。それでも、しっかりと痛みがある。サイカは新しく、球体を二つ作り出しニナに迫った。

「あなた家の乗っ取りでも考えているのですか?」

 サイカが向かってくる氷を砕きながらニナに近づく。

「何のことでございますか?」

 ニナが先程と同じように矢を放った。

「主人を無能に仕立て上げて操つるつもりですよね情報操作なんてことまでして!見てて気分悪いのでやめてください!」

 矢を受けるのが2度目と言うこともあり小楯で矢を斜めに受けて大きく踏み込んだ。そして、小楯を手斧に変えてニナに襲いかかっる。

「そんなことありません!私はぼっちゃま一筋でございます!」

 ニナは『縮地』を発動させて一歩後ろに下がり、弓を構えた。

「キャ!」

サイカが吹き飛ぶ。直前にニナの仕掛けた地雷を踏んでしまったのだ。すぐさま体勢を立て直そうとする。
 だが、ニナが見逃す訳もなくそこ目掛けてが『射出魔法』を組み合わせた今までよりも強力な矢を放った。しかも矢尻にも仕掛けを施しており、たいらに形成した矢尻には『付与魔法』により『衝撃魔法』が込められている。そして、それは衝撃を受けたと同時に魔法が発動する仕組みになっている。超威力の矢まともに受ければ障壁の破壊で決着がつく。万が一耐えられたとしても場外勝ちを狙える狙いすました正確な一撃、外す事などあり得ない。
 しかし、ある一線を超えてから矢の軌道が異常に下に傾き落ち地面に刺さった。地面で衝撃が分散され、周囲に土埃が舞った。
 サイカは体勢を崩し矢を躱せない状況下にあった。だが、『魔視魔法』により矢が特別であり、安易にガードしてはいけないものである事に気付いていた。故に防ぐのでなく躱すと言う選択肢をとることになる。ここでサイカは『重力魔法』を使用した。それにより、魔法効果であるサイカの周囲1メートルほどで下方向の重力が瞬間的に増し矢の軌道を逸らすことに成功した。

「クッ…!」

 直撃を免れたサイカであったが矢の威力は凄まじく余波による衝撃を受ける。
 ニナは怯むサイカの隙をついて一気に距離を広げる。
 それを追いかけるようにサイカが手斧を小楯に変え、球体を浮かべる。そして、始めのようにニナに迫った。しかし、今回は掠る程度の攻撃は無視し、できる限り短期での決戦を仕掛ける。新たに追加された『衝撃魔法』が付与された矢や礫は『魔視魔法』で判別して難無く躱しす。そして、サイカは再びニナを捉えた。

「そもそも、名前で呼ぶように言われていませんでしたか⁉︎そんなに恥ずかしんですか!?そんなわけ無いですよね!」

 サイカが盾を手斧に変形させて切りかかる。

「ナッ…⁉︎そんな事あるはずがございません!何を根拠にそんな事言っているのですか⁉︎」

ニナは『縮地魔法』で斧を回避した後、明らかに動揺した様子で矢を放った。

「ハァ⁉︎何ですかその反応⁉︎私どう反応すればいいんですか!?」

 サイカは再び近づくと『縮地魔法』の移動範囲を巨大なハンマーで薙ぎ払った。

「コホン、盗み聞きは趣味が悪いですよ」

 ニナは氷の柱を横に作って勢い付く前のハンマーをガードした。

「たまたまです」

サイカはハンマーから手を離すと『発勁』を発動させて手のひらをつき出した。『発勁』とは『衝撃魔法』の派生した魔法である。魔法効果を手のみにに限定する事で魔法効果を大幅をに上げた魔法である。サイカの手が触れるとニナが衝撃波と共に吹き飛んだ。

「場外!試合終了!」

 サイカは決着が着くとすぐさまサイカがニナの元に近づき、

「カリスさんのこと好きなんですか?」

と耳元で聞いた。

「………違います。」

ーーーーーー
その頃待機組は…
 フリースペースでトランプを嗜んでいた。

「そなた凄いぞ!全く勝てる気がしない」

カリスが椅子にもたれ掛かる。

ダンッ!

「アーーーッ!どうしてスピードだけ何回やっても勝てないのよ⁉︎」

 サリアが顔を真っ赤にしてカードを机に叩きつける。

「さぁ、どうしてだろうな。もう一回やるか?」

 カイトが聞く。

「当たり前よ!私がシャッフルするわ!」

サリアがトランプを手に取る。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白の魔女の世界救済譚

月乃彰
ファンタジー
 ※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。  白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。  しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。  そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...