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番外編「とある狩人を愛した、横暴領主の話」

26 愛などない交わり※

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 ――長い口付けは、シタンに顔を背けられたことで終わった。

 濡れた唇を舐めて重ねていた身を起こし、大きく息をつく。呼吸がままならなくなるほど夢中になっていた己に気付いて、思わず薄く笑った。

 腕を投げ出し上半身を波打たせるようにして荒い息をしているシタンの、胸板から腹までを指先で撫で下ろしていく。汗に濡れた肌は熱を孕み、彼の体が蕩け始めていることを物語っているようだ。痛みを感じさせないように浅く五指を沈ませて、緩やかに魔力を注ぐ。

「あ、あぁ……熱い。……あぁ……っ!」
「苦しいか」
「ん、んんっ。苦しく、ない、けど、凄く熱い……。はぁっ、あ……っ」

 甘やかな吐息を漏らしながら腰をくねらせ、尻の窄まりから小さな水音を立てて透明な蜜を溢れさせた。体を薄赤く火照らせ悶える様が、あまりにも淫らだ。

「無防備なことだな。あれほど嫌がっていたというのに」
「そ、そんなこと、言ったって、なんでこんなに、なってんだか、わからない」
「わからないか。常から快楽に従順だとしたら、考えものだ……」

 脚を開かせてぬかるんだ孔に指を挿し入れても嫌がる素振りは見せず、逆に強く指を締め付けて先を強請るように腰を揺らす。

「あっ、うあ。指……嫌だぁっ……」
「……解さなければ、苦しいのは貴様だ。我慢をしろ」
「もぅ、いいから、それ、やめ……っ! はぁっ、あぁっ!」

 泣きべそをかきながらも腰の揺れは止まらず、増やされた指によって与えられる刺激を味わっている。

 ――たまらない。

 こんなにまで無防備に蕩けて求められることが嬉しい。あまり快楽に従順過ぎて、他の男相手でもこうなってしまうのではないのかと不安になるが、忌避されるよりはましだろう。

 「――くれてやろう」

 蕩け切った孔から指を引き抜き、滾った一物をゆっくりと入れていく。

「あっ、早く……、はぁ……っ、ん……っ!」

 焦れたような声が上がり、腰に絡められた脚によって半ばまで勢いよく入り込んでしまった。

「んんっ! 動くなっ……」

 ねっとりと絡み付くように包み込んでくる内壁と、きついほどの孔の締まりに理性を引きちぎられそうになる。激しく腰を打ち付けたい衝動をどうにか堪えながら、苦しさを感じさせないようゆっくり中を探っていく。

「ふ……っ、はぁ……っ……。良いのか。……嫌では、ないか」
「う、うん……。いい。はぁっ……。あんた、こんな、優しく、……んんっ、できるんだな」

 気遣って掛けた問いに応えたシタンの顔に浮かんだのは、あどけなく緩み切った笑みだった。

 ――ああ、やっと帰りたい場所へ帰ってこられたと、思った。

 十数年ぶりに見た、少年の頃と変わらない笑みに、限界まで達していたはずの興奮がさらに高まり体を突き抜けていく。

「ぐうっ!」
「ひっ、あ、な、なんだよ、なかっ、ああっ……! あっ、あ、すごい……いっぱい……んぁ……っ、ああっ…………!」
「……くっ、……はぁ……っ、ん……っ」

 内壁に包まれた一物が痛いほどに膨れ上がっているの感じた。体が熱い。信じられないほど大量の汗が全身から滴り、もうひたすらに腰を振ることしか考えられなかった。

「もっと強く、動くぞ……」
「はぁっ、あっ、ああぁっ、あぁ……んっ!」

 荒々しく腰を打ち付けて、絶頂を繰り返し震える体の奥深くに何度も精を注ぐ。一瞬たりとも離れまいとするかのようにきつく両手をつなぎ合い、空が白むまで求め合い続けた。

「あっ、ああっ! ……いいっ! あうっ、はぁっ……!」
「んんっ、はぁっ、シタン……! シタンっ……」

 ――肉欲にまみれた愛などない交わりだったが、ラズラウディアにとって至福の一夜となった。
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