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36 傍仕えなんて無理だ※

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 ――禁猟期が間近に迫ったある日。

 寝台の上で事後の気怠さに身を任せて微睡むシタンに、領主がこんなことを言ってきた。

「禁猟期は、私の城に来い」
「えっ、な、なんだよそれ」

 狩人として稼げない禁猟期でも、シタンには暇などない。

 親戚を頼って出稼ぎするのが、毎年のことになっている。毛皮や角、肉などの狩りで得た素材やらなにやらで十二分に稼げていてそれなりに蓄えもあるが、だからといって働かずに暮らせるほど余裕があるわけではないのだから。

「私の傍仕えをさせてやろう」
「はぁっ? 傍仕えぇ? むっ、無理だよ! 貴族の傍仕えなんて平民がぱっとできるわけ、ないだろぉ……」
「なにからなにまでこなせとは言っていない。足りない部分はじいが補う。あの貧相な小屋になど帰らずに、毎日ここで寝起きすればよいだけのことだ。お前にできないことを、私は望んだりはしない」

 爺というのは、いつも世話を焼いてくれる優しい老人のことだ。城を取り仕切る侍従の長らしい。大層な人だった。……それはともかく、貧相とはあんまりだ。

「ひっ、貧相って。あんたには貧相でも、俺にとっては自分の城なのに……」

 狩りの稼ぎで建てた小屋だ。職人に粗方建ててもらったが、自分でも床を磨くなどして手を少しは入れている。例え小さくとも、シタンにとって間違いなく立派な『城』なのだ。領主の住まう城にあると同じ大きさだとしても、だ。

 尊厳を踏みにじる言い様に、シタンはかなり気分が悪くなった。嫌な奴だと思うときは今までに度々あったが、これほど気分を害されたのは初めてかもしれない。

「なんでそんな酷いこと言うんだよ……」

 さすがに傷ついた。顔をしかめて寝返りを打ち、身を丸める。

「小屋のことなど、どうでもよい。お前が住まうには貧相だと言いたかっただけだ。別段、あの小屋が悪いとうことではない」
「うん……?」

 後ろから抱きついてきて「言い方が悪かったようだな。貶すつもりはなかった……」と、しおらしい言葉が聞こえくるのに寒気がした。いつもの偉そうな態度はどうしたんだと、肩を揺さぶりたくなる勢いでシタンは驚いてしまった。

「えっと、あの、でもさ、狩りができないから、出稼ぎとかしなくちゃいけない時期だし」
「ただ、傍にいて欲しいだけだ。他意はない。傍仕えとしての給金も与える。出稼ぎなどする必要はない」

 なんだか妙な方向に話が向かっている気がした。

 ……領主にとって、シタンがあの小屋へ帰ってしまうことが不満なのだと言っているように聞こえるのだが、気のせいか。逃げようとかそんなつもりはないし、いつ払い終わるか知れない対価として抱かれているのに、これ以上なにを望んでいるのか。

 さっぱりわからない。逆に金を払うと言っているのも変過ぎる。

「ま、まってよ。……あのさ、城にずっと住めって言ってるわけじゃ、ないよな?」
「それでも構わないが」
「いや、さすがにそれは、ちょっと……」

 本音はちょっとどころでない。閉じ込められてしまうのだろうか。怖い。領主がなにを考えているのか、頭の中を見てみたいが、それはそれで恐ろしいものが見えてしまいそうな気がした。

 ……絶対、見ない方がいいやつだ。

「……私の傍にいるのは嫌か」
「嫌っていうか、あのさ、俺は根っからの平民で狩人なんだよ。いきなり城に住めって言われてはいそうですかわかりましたなんて、言えな……んっ!」

 顔だけを上に向けさせられて、深く口付けられた。

「んぐ、はっ、ん……っ! はぁっ、まっ、なに」
「よく考えておけ。禁猟期が始まる日に、お前を迎えに行く」

 考えたところで拒否できないんじゃないのかと思った。迎えに来ると言い切っているところからして、シタンに選ぶ権利が与えられていない。

「お、俺は傍仕えなんて、あぅっ!」

 夜着を捲り上げた手が下穿きをずらし、尻孔に長い指が滑り込む。

「んぁっ、あっ、はぁっ……、あっ……! いたっ、あぁ……!」

 ちくりと痛みを覚えるほどにきつく首筋を吸われる。くちゅくちゅと下半身から嫌らしい水音が響いて、指に探られた中がうねるのを感じた。

「……ためらうほどには嫌ということか……」
「んなっ、そりゃ、好きでこんな風にしてるわけじゃないし……っ、あ、あああっ!」

 しこりを強くなぞりながら抜けていく指と入れ替わりに、熱く硬い一物が押し込まれた。たまらず身悶えするシタンをうつ伏せに抑え込んで、領主はゆったりと腰をゆする。まだ余韻から抜け出せていないシタンの体は、簡単に熱を取り戻してしまった。

「ひっ、うぁ、ああ……んっ! も、いっぱいしたのに、また……っ」
「お前が悪い」
「おっ、俺がなにしたって、あう、やっ、やめ、んっ、あぁんっ!」 

 ぐすりと奥まで挿し込まれるともうたまらない。裏返った甘い喘ぎ声を上げてシタンは身をのけぞらせた。疲れてもういけないと思っていたのに、一物が硬く勃ち上がってくる。太く熱い物に内側をみっしりと埋められて、きゅうっと尻に力が入ってしまうし、孔はひくつく動きが止まらない。

「はぁっ、あ、いいっ……! あ、ああっ! んっ……!」

 腹に当てられた大きな手からじわりと熱が染み込んでいって、とろりと蜜が腹の中を伝うのを感じた。熱い。この術を使われてしまうと、ぐすぐすに蕩けて体がいうことを利かなくなっていく。

「んっ、は……っ、私の、傍に……、いてくれ……シタン……」

 縋るような声音で囁かれた気がしたが、孔の中を行き来する一物に翻弄されて聞き返すどころではない。ゆらゆらと腰が揺れて、二人の肌が当たる音が響く。

 そのまま何度も盛ってしまい、シタンは昼どころか夜まで起き上がれなくされた。
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