26 / 112
26 お前が欲しい※
しおりを挟む
与えられる口付けを無心に味わうシタンの背中を撫でていた手が、尻の方へと下りていく。
「ん……あっ……」
谷間に滑り込んだ指先が探り当てたのは孔の窄まりだ。布越しに指の腹が孔をさすり、尻も掴まれて緩く揉みしだかれる。
「ひいっ! んあっ!」
尻に力が入って、孔をさする指を挟み込んでしまう。恥ずかしさに身悶えしながら、逃れようと身を捻るがやっぱり逃げられない。腕の力がおかしい。シタンだって男だ。それなりに力があるはずだが、この男はどういう腕力をしているのか。
「ううっ……、や、やらしいっ、触り方、するなよぉ……」
「これ以上のことされているくせに、随分と初心なことだ」
「だっ、誰がっ、う、初心って、あうっ!」
忍び笑いを漏らしながら、領主はお構いなしに体を弄ってくる。なにも知らない童でもあるまいし、初心というには少し違う気がするが、受け身になったことのないシタンからすれば恥ずかしさを煽られるのに十分な行為だ。
「うっ、あぁっ……! 」
口付けだけでとっくに硬くなっていた一物に、同じように硬くなったそれが擦り付けられる。前も後ろも中途半端に刺激されて、もどかしい。こんなに焦れったい真似をされては、体が切ないばかりで拷問のようだ。
「んあ、も、やめろよぉ」と、シタンは涙目で訴えた。
「……私が欲しいか」
明らかに欲を含んだ眼差しをした領主が、低く甘い声で問いかけてくる。
「んっ、あ……っ、そ、そんな……っ」
元々、好きで抱かれている訳ではない。
わざわざ欲しいかと聞くなんてどういうつもりなのか。こちらが欲しいと望んだところで、飽きれば二度と抱かないだろう。
領主自らが迎えに来て、初めて乗った馬はなかなか楽しかった。好物だと察して振る舞ってくれたらしい上物の蜜酒だって美味かった。
横暴な態度をとる割に、端々で単なる慰みの相手に対するものとは思えない扱いをしてくるのはなぜなのか。
「欲しくはないか」
「はっ、あぁ……っ」
耳元で低く囁かれただけで、体が震える。男のシタンでさえ見惚れるほどの、凄まじい美丈夫だ。わざわざしがない狩人の男なんて抱かなくても、喜んで相手をする見目良く抱き心地の良い者は男女問わずいるはずだ。
どうしてか、ちくりと胸が痛んだ。
生じた痛みの意味がシタンには分からなかった。こんな痛みは、知らない。いや、ずっと昔に、たった一度だけ……これよりももっと、強い痛みを感じたことがある。
どうすることもできない悲しみ中で感じた、張り裂けそうな痛み。
「あ……」
それは、ラズに別れを告げられた日だ。どうして今、こんなときに思い出したのか。痛みに戸惑うシタンをよそに赤い唇が耳元に寄せられて、こう囁かれた。
「私は……、『お前』が欲しい」
横暴さが鳴りを潜めた、切なげな声。そして、唇ではなく頬に口付けをされる。
「ひ、うっ……!」
頬に押し付けられた柔らかい感触は、指先の淫らさとは対照的に親愛に近いものだった。その口付けを受けた瞬間に、どこからともなく喜びが湧き立って体の芯を突き抜けていく。今までにない感覚に驚き絶叫を上げそうになって、歯を食いしばった。
心臓が熱く脈打って、居ても立っても居られないほどに苦しい。こんな、苦しくて、嬉しいなんて。酔いが回り過ぎたのかもしれない。そうとしか思えない。
「う、あ……、お、俺……っ」
それでも、訳の分からないこの嬉しさを、ろくでもないが綺麗で甘い男に返したくてたまらなくなった。じっと紫紺の瞳に見詰められると、なんとも言えない感覚に胸を締め付けられる。
肩で大きく息をして、何とか声を絞り出す。
「俺も……」
欲しいと言い切る前に、骨が軋みそうなほど強く抱き締められた。
「ん……あっ……」
谷間に滑り込んだ指先が探り当てたのは孔の窄まりだ。布越しに指の腹が孔をさすり、尻も掴まれて緩く揉みしだかれる。
「ひいっ! んあっ!」
尻に力が入って、孔をさする指を挟み込んでしまう。恥ずかしさに身悶えしながら、逃れようと身を捻るがやっぱり逃げられない。腕の力がおかしい。シタンだって男だ。それなりに力があるはずだが、この男はどういう腕力をしているのか。
「ううっ……、や、やらしいっ、触り方、するなよぉ……」
「これ以上のことされているくせに、随分と初心なことだ」
「だっ、誰がっ、う、初心って、あうっ!」
忍び笑いを漏らしながら、領主はお構いなしに体を弄ってくる。なにも知らない童でもあるまいし、初心というには少し違う気がするが、受け身になったことのないシタンからすれば恥ずかしさを煽られるのに十分な行為だ。
「うっ、あぁっ……! 」
口付けだけでとっくに硬くなっていた一物に、同じように硬くなったそれが擦り付けられる。前も後ろも中途半端に刺激されて、もどかしい。こんなに焦れったい真似をされては、体が切ないばかりで拷問のようだ。
「んあ、も、やめろよぉ」と、シタンは涙目で訴えた。
「……私が欲しいか」
明らかに欲を含んだ眼差しをした領主が、低く甘い声で問いかけてくる。
「んっ、あ……っ、そ、そんな……っ」
元々、好きで抱かれている訳ではない。
わざわざ欲しいかと聞くなんてどういうつもりなのか。こちらが欲しいと望んだところで、飽きれば二度と抱かないだろう。
領主自らが迎えに来て、初めて乗った馬はなかなか楽しかった。好物だと察して振る舞ってくれたらしい上物の蜜酒だって美味かった。
横暴な態度をとる割に、端々で単なる慰みの相手に対するものとは思えない扱いをしてくるのはなぜなのか。
「欲しくはないか」
「はっ、あぁ……っ」
耳元で低く囁かれただけで、体が震える。男のシタンでさえ見惚れるほどの、凄まじい美丈夫だ。わざわざしがない狩人の男なんて抱かなくても、喜んで相手をする見目良く抱き心地の良い者は男女問わずいるはずだ。
どうしてか、ちくりと胸が痛んだ。
生じた痛みの意味がシタンには分からなかった。こんな痛みは、知らない。いや、ずっと昔に、たった一度だけ……これよりももっと、強い痛みを感じたことがある。
どうすることもできない悲しみ中で感じた、張り裂けそうな痛み。
「あ……」
それは、ラズに別れを告げられた日だ。どうして今、こんなときに思い出したのか。痛みに戸惑うシタンをよそに赤い唇が耳元に寄せられて、こう囁かれた。
「私は……、『お前』が欲しい」
横暴さが鳴りを潜めた、切なげな声。そして、唇ではなく頬に口付けをされる。
「ひ、うっ……!」
頬に押し付けられた柔らかい感触は、指先の淫らさとは対照的に親愛に近いものだった。その口付けを受けた瞬間に、どこからともなく喜びが湧き立って体の芯を突き抜けていく。今までにない感覚に驚き絶叫を上げそうになって、歯を食いしばった。
心臓が熱く脈打って、居ても立っても居られないほどに苦しい。こんな、苦しくて、嬉しいなんて。酔いが回り過ぎたのかもしれない。そうとしか思えない。
「う、あ……、お、俺……っ」
それでも、訳の分からないこの嬉しさを、ろくでもないが綺麗で甘い男に返したくてたまらなくなった。じっと紫紺の瞳に見詰められると、なんとも言えない感覚に胸を締め付けられる。
肩で大きく息をして、何とか声を絞り出す。
「俺も……」
欲しいと言い切る前に、骨が軋みそうなほど強く抱き締められた。
10
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる