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番外編 騎士団に復帰後のアレコレ

父さんと母さんの料理久々だなぁ! すんごく楽しみ!

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 ――アレコレ準備が終わって、お土産や旅の荷物を馬車に積んで王都を出発!


 そして1週間かけて帰って来たぞブレッデへ! 久々の我が故郷っ!

 天候に恵まれてスケジュールが遅れることもなく南部に到着した俺達は、予約してたホテルでひとまず休憩。挨拶に行く約束の日である翌日に、実家に向かった。事前にランチを食べにおいでと連絡されていたので、午前中のちょっと早い時間に突撃だ!

 父さんが経営している料理店のすぐ裏手にある、レンガ造りのでっかい家がマイホームだぞ。広めの庭にはハーブなんかがびっしり植えられている。

 手入れや採取の手伝いがてら、母さんからどんな料理に使うと美味しくなるかとか、煎じるとどういう薬効があるかとか、教えられてたなぁ。料理だけでなくて薬学もかなり齧らされてたんだなって気付いたのは、騎士団でサバイバル的な訓練を受けたときだった。料理と薬学は繋がってる!

 おっと、かなり脱線した! とにかく数年ぶりの実家はとっても懐かしいっ!

「ただいまー!」

 こっちに居た頃のノリで言いながら、チリンチリンと自宅の呼び鈴を鳴らすとドアの向こうから「はーい!」って声がしてすぐにドアが開いた。

「ハス! 久しぶりね! 元気そうで何よりだわ」

 出てきたのはメルシャだった。キャラメル色をした髪と瞳が魅力的な美少女……っていうか、あれ? なんかすんごく大人っぽくなってる! 美少女じゃなくて、美女って感じだ! まあ、最後に会ったのは数年前だから大人にもなるか……。しかもママになったんだしな!

「久しぶり! メルも元気そうだな。子育ては順調?」
「順調よ。ミレさんもユリザリンさんも手伝ってくれるし、ロタも頑張ってるから」 
「あはは! そっか、ロタもパパしてんるんだなぁ」

 思わず話し込みそうになったところで「ハス君、私に彼女を紹介してくれませんか」って、カムロさんに促されてしまった。そうだった! ごめんカムロさん!

「あっと、すみません。メルシャですよ。俺の幼馴染で、弟の嫁です」
「あら、ごめんなさい。メルシャ・ブレッデです。初めまして」

 がばりとお辞儀をするメルシャに、カムロさんがゆったりとお辞儀を返して「初めましてメルシャさん。カムロ・ディザートです。カムロと呼んでください。よろしくお願いしますね」と、やわらかい挨拶を返してくれた。

「はい。よろしくお願いしますカムロさん。立ち話も何ですから、中へどうぞ。ハス、レーンが今ちょうど起きてるから、抱っこしてあげてね」
「うん、抱っこしたい!」

 レーンは甥っ子の名前だ。ソワソワしながらダイニングの方へ向かうと、ロタがレーンを抱っこしてミルクをあげていた。おおう、ちゃんとパパしてるなロタ! 兄ちゃん安心したぞ!

「お帰り兄ちゃん! おっ、兄ちゃんの旦那さん、すげぇイケメンだな!」
「ちょ、おまっ!」

 こらああ! いきなりぶちかましてくんなよ!

「こら! ロタったら挨拶もしないで失礼よっ!」

 ぐにっとほっぺたをつねられて「イダダダ! ごめ、ごめん! ぐあー!」ってなってるロタ。レーンは騒ぐ両親に挟まれても、平気な顔でちゅっちゅとミルクを飲んでた。いつもこんな調子なのか、慣れてる感じがする!

 カムロさんが「仲がいいですね」なんて言ってくすくす笑ってロタとも挨拶をしてくれた。さすがにちょっとかしこまった顔で、ロタが「初めまして、ハスの弟のロタっていいます」なんて言ってるのが少し笑えた。瞳は俺と同じ茶色なんだけど、髪は明るい茶髪でとにかく顔が良い。すっきりした雰囲気のイケメンだ。地味顔の俺とはちっとも似てないけど、血の繋がった弟なんだよなぁ……。不思議!

「あら。飲み終わったみたいね。今日もたくさん飲んでくれて嬉しいわ。レーン」

 メルシャに抱き取られて背中ぽんぽんされたレーンが「ケフッ」って、かんわいいゲップをした。うわー、赤ん坊って何しても可愛いなぁ! ゲップも可愛いなんて天使過ぎる!

「はは、可愛いなぁ。お腹一杯になったかなレーン。ハス伯父さんだぞー。初めましてだな」

 リンゴ色のほっぺをふにふにと突くと、レーンがちっちゃな手できゅっと俺の指を握ってくれた! ちっちゃいけれどしっかり握ってくれるその力加減がまた可愛いっ!

「ううっ、可愛いいが過ぎる!」
「ハス、抱っこしてみて」
「うん、するする!」

 そーっと腕に抱いたレーンは、それなりのずっしりとした重みがあって、ふんわりと赤ん坊特有のミルクっぽい匂いがした。くりっとした目が俺をじっと見上げてくる。穢れない瞳がすんごい綺麗だ! 見られてるだけで浄化されそう!

「……かっ、かわっ、かわい! 幸せの塊だ……」
「ぶっは! 兄ちゃんもうメロメロじゃん!」
「おまっ、お前だってレーンのこと可愛いって思ってるだろ。こんっなに可愛いんだから」
「そりゃそうだけどさ。兄ちゃんの顔、父さんのメロメロ顔とそっくりで笑える。ぷっ、くくく!」

 ロタは、ほんとによく笑う。そんなところが好きなのよってメルシャがいつか言ってたけど、変なタイミングで吹いたりしないか心配だよ兄ちゃんは。

「ふふ、メロメロなハス君も可愛いですよ。勿論、レーン君もですが」
「あはは! 惚気が凄い! カムロさんは兄ちゃんにメロメロなんだな!」
「ええ、そうですよ。メロメロです」

 ぎゃあ! なんでそこで妙に意気投合してやがってんですかこの2人! レーンを抱っこしてるから叫べなかったけど、むちゃくちゃ恥ずかしいっ! 

「カ、カムロさんも抱っこ、しますか? いいよな? メル」
「ええ、いいわよ。抱っこしてあげてくださいカムロさん」
「はい。してみたいです」

 俺と同じようにそーっとレーンを抱っこしたカムロさんは、腕の中のレーンを見て「初めて赤子を抱きましたけど、……なんというか……感動しますね」なんて言ってふわ……っと微笑んだ。

 うわあああああ……、神々しい!

 レーンとカムロさんの組み合わせが神々しいぞ! 可愛いと可愛いが共演して超神々しい! 「……ハス、貴方の旦那様って、強烈ね」なんて、メルシャがしきりに瞬きしながら俺に言ってきた。うん、その瞬きの意味、すんごく分かる。眩しいよな俺の旦那様っ!

「異論はない! 俺、今だにカムロさんの伴侶になったのが夢かと思うときがあるし。あ、そう言えば父さんと母さんはどこ行ってるんだよ」
「ユリザリンさん達は店の方よ。今日は貸し切り状態にしてランチの準備をしてるわ」
「そっか。もうすぐ昼だもんな。なんか腹減ってきた!」
「もうっ、ハスったら食いしん坊なところ変わってないわねぇ……」

 クスクスと笑われちゃったけど、食いしん坊なのは自覚してる! そして恥ずかしくないぞ! さああてと! カムロさんと一緒に挨拶と結婚の報告を2人にしなくちゃだ! 店の方にも突撃だ! そして挨拶の後は皆で楽しいランチタイムだぞおお!

 ――父さんと母さんの料理久々だなぁ! すんごく楽しみ!







※甥っ子レーン君登場。両親のいいとこ取りな美形に育ちます。
※自分を凡人だと思っているハスですが、実は薬学スキルも高そうです。仲間を助けて自分も生き残れるタイプ。地味キャラのふりをしたお役立ちキャラ。
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