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本編

32 あ! そういえばこれ、俺の初めてだあああ!

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 ――超魔術師様に「貴方だけが、特別」って、耳元で囁かれてしまったぞ!


 頭の中でパアァン! って、熱が爆ぜる音がした気がした。

「……うわ」

 うわああああ!

 何だこれ! 

 すごくドキドキする! 体が熱くなって、か、顔も火照ってきた……! あ、ちょっ、静まれ俺の心臓! 変な反応するんじゃない! 何でこんなにドキドキしてるんだよおお!

「……凄いですね。心臓が鳴っているのが、よく分かります。もしかして、今の私の言葉で?」
「いやあの、その、あう……。なんていうか、その……」
「意識してしまったんですか。ふふ……、体も熱くなってますよ」
「ひぃ!」

 また耳元で囁かれて、もっと体がぞくぞくしたああああ! も、もう駄目だ! このドキドキは何なんだ! い、意味が分からないぞ! これは緊急事態だっ!

「カ、カムロさんっ、ちょっと離れましょう! おっ、俺、なんか体がおかしいから!」
「おかしくないですよ。とても嬉しいです」

 嬉しいって何がどう嬉しいんですかあああ! 

 ギャー! なっ、なんか超絶に恥ずかしぃ! じたばたと離れようとしたけど、う、動けない! カムロさんが俺を押さえ込んでる! ぎゃあああ! いくら現役離れているとはいっても武闘派騎士のつもりな俺をなんでそんなあっさり押さえ込めるんですか! マジこの人、力が強い!

「んっ。熱くて、私も何だかドキドキしてきました」

 甘くて、熱い声。重なった体も熱くて、カムロさんの心臓がドキドキしてるのが俺にも伝わってきた。2人分の心臓の鼓動が、お互いの胸の中にまで響き合っている。う、うおお! なんか凄い状態だなこれ!

「はぁ……。ずっとこうしていたいです」

 うわあああああ……。昨日、色気爆発したときの声とはまた別の、熱くて酔いそうなくらい甘い声。ああ、すごすぎて、頭がクラクラする。こんないい声……、人間が出せるのか? それとも何かの魔術なのか! 

 だ、ダメだ。体から力が抜けてく……! も、もう、逃げる気力なんてない……。

 肩口から顔を上げたカムロさんが、潤みを帯びた紫の瞳でじっと見てくる。凄く嬉しそうで、緩み切った甘い顔をしてる! ひぃ! 蕩けたご尊顔が眩しすぎて目が焼けそう! 力を振り絞って両手を上げて、カムロさんの目を塞いだ。

「ハス君、好きです。貴方のこと、大好きです」

 目を塞いでも、甘い声で鼓膜が焼かれる! そして、もっと大きく、どくんと心臓が鳴った。

「カムロさん……、あの、その好きって……」
「愛しています」
「ひぇっ!」

 愛していますって言われたあああ! 

 心臓が爆発しそうだ! はぁっ、い、息が苦しい! 

「私にここまで言わせるのは、貴方が最初で、最後です」

 いいいい、いやいやいやいや。なんか嬉し……あれっ? 嬉しい、のか俺! えっ、ちょ、まってまって! 最初で最後って? 重たすぎやしませんかその告白ううぅ! 

 超パニック状態だ! そんな中で、カムロさんの目を塞いでいる俺の左手薬指にある、外れない指輪が急に目に付いた。……あ、これ、最近忘れてたなぁ……って! 

 ぎゃあああああああ!

 こっ、これ、悪戯なんかじゃなかったんだ! ガチだ! ガチの指輪だったんだ! カムロさんの愛が重い! 重みで俺が潰れちゃいそうなくらい重い! 

 多分、国家予算と同等くらいの価値があるトンデモ魔道具な指輪を見ていられなくなって、ひゅんっと手を引っ込めて右手で指輪を隠した。隠しても無駄だけど! 見てられない! トンデモなブツだとは思っていたけど、ある意味もっとヤバくてブチ飛んだブツだった!

「ふふ……。かなり動揺してますね。ああ、そんなにまで意識してもらえるなんて、とても嬉しいですよ……」とか言いながら、カムロさんがゆっくりと顔を近付けてくる。

 間近で見てもお美しゅうございますね! 魔術師様のお顔は! ですが、少々近すぎではございませんかね! 速やかにお離れ下さいませえええ!

「目を閉じて。キスしますよ」

 ……え? キス? 俺と? なんで?

「嫌でしたら、目を閉じないで……ハス君……」

 なんかすごいことを言われているのに、情報量が多くていまいちピンとこない。パニック状態もマックス超えでキャパオーバーだったんだよ! 

 ただ、うわーすごくいい声だなぁ……って、カムロさんの蕩けるような美声に聞き惚れてた。

「閉じなかったら、しません。今夜は……ですけれど。貴方が目を閉じてくれるまで、待ちます」

 掠れた色っぽい声が、もう凄い。腰にくる声って言うか……。わあぁ……。すごいなぁ……。もう、なんだかよく分かんないけど、いいですよ! カムロさんならなんだっていい! ……っていう気分になってた。

「キス、したいです。ねぇ、ハス君、お願いです。少しの間でいいですから、目を閉じて」

 あ、うん、少しだけならいいですよ……。少しだけ、なら……。



 ――で、うっかり目を閉じちゃったんだよ俺!




「ん……? んんっ!」

 ふにっと柔らかいものが唇に押し付けられた。そこでやっと状況に頭が追いついた瞬間、ぶわっと、変な汗が出るくらい焦りと混乱が最高潮までブチ上がっていった! 

 う、うわああああああああ!  

 カムロさんが俺に、キスしてるうううう! 

 なんでだよぉぉ! 正気に戻るのが遅すぎるんだよ俺ええぇ! バカバカ! していいかどうかなんて判断、まだ下してないって! 何で素直に目を閉じてるんだよバカあああ! 




 ――あ! そういえばこれ、俺の初めてファーストキスだあああ!



※このお話は主人公受けうっかり忘れそうになっていましたがカムロ氏は攻めです。
※次話から2話分は、恥ずかしがっている割にデリカシーのないR18禁シーンです。苦手な方は迂回をお勧めいたします。
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