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本編
25 もっと強くなれ! 俺の涙腺!
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――クラさんも一緒の昼飯は、いつもよりずっと賑やかというか、騒々しかった。
主に俺が。
カムロさんが「ハス君はどんな子供でしたか?」なんて、やたら聞きたがるから、クラさんが俺の実家に居た頃の失敗談なんかを暴露し始めたんだよ! 何てことしてんですかあああ!
「ク、クラさん! そんな話しないでくださいぃぃ!」
「何を言う。いい思い出ではないか」
「く、熊に襲われそうになって超高い木に登って下りられなくなった事件のどこが、いい思い出という表現になるんですかぁ!」
ぬああマジ恥ずかしいっ! やめてくださいおねがいします!
キノコなんかの山菜採りに夢中になって、ウッカリ森の深い場所まで踏み込んじゃった俺が悪かったんだよ! 熊とご対面! 縄張りを荒らされたとでも思ったのか、怒って追い駆けてきた熊から必死で逃げた。
最終的に木に登ってプルプル震えながらビビる俺。幹にガシガシ爪を立てながら、木をよじ登ろうとする熊を見て、怖さに耐えられなくなってギャン泣きした。
散歩途中に「びええええ!」っていう、渾身の泣き声を聞いて駆けつけてくれたクラさんのローキックで、熊さんは昇天なさいましたよ。
巨大熊じゃなくてよかった! でなかったら、俺は今ここにいないぞ!
「私にしがみ付いて泣きじゃくるお前は、とても愛らしかった」なんて、恥ずかしいことを言いながらほんとに可愛くて仕方ないって顔をして渋く微笑むクラさん。うう、カッコいい。
何だかんだ言っても、憧れの元英雄騎士様には敵わない!
「……そ、その節は大変、お世話になりましたぁ……」
実はギャン泣きしたとき、ちょっとちびったんだよ……。そのまま家に帰りたくなくて、クラさんとこで下着とかを洗濯して乾かしてもらってから帰った。熊を丸腰で仕留められるクラさんスゲー! なんて感心する気力はなかったな。
結局、仕留めた熊をクラさんが父さんに献上……じゃない、プレゼントして事の経緯をぽろっと言ってしまったんで、両親と弟にバレたけどな! ちくしょう!
「他にはどんな話がありますか。もっと聞きたいです」
「うむ。では、いくつか話そう」
「あああ! また恥ずかしい方向の話をしそうな予感しかないっ! やめてくださあああ!」
ギャー! ワー! と、悲鳴を上げる俺をそっちのけで、クラさんは俺とのいい思い出を暴露しまくった。むちゃくちゃ楽しそうに聞いてるカムロさんを見ているうちに諦めの境地に達した俺は、最後の方はもくもくと飯を食うことに没頭することにした。
腹ペコだったし! や、やけ食いとかじゃないぞ!
散々俺の話をしまくりながら、たっぷり作った肉料理を綺麗に平らげたクラさんから「ユリの料理と同じ味がした。腕を上げたなハス」という、クラさん的最高値の褒め言葉をもらえた! よっし! デミソースで煮込んだミートボールとかを作ったんだけど、いい感じに出来てよかった!
そして、食後のデザートまで出し終えたときに、「ユリから頼まれた。実家に届いたお前宛ての物だ」と、セブナスが送り返していた小包と手紙を受け取った。
「あ、ありがとうクラさん……」
小包の中身は、紅玉苺ジャムだった。ブレッデで採れる甘酸っぱいベリーを使っている。しっかり甘くして熱々を瓶詰めにすると長期保存できるから、まだ食べられるぞ! デザートのトッピングに使わせてもらおう。瓶に付いたタグに「夫婦合作愛情たっぷり」なんて書いてあってちょっと笑った。父さんと母さん、相変わらず仲いいな!
手紙の方は、母さんからだ。えーと、弟のロタとメルシャの新婚夫婦は2人で料理の修業中。父さんは「孫はまだかな」なんてストレートに聞きまくるから、母さんが尻をつねってお仕置きしたって。あはは! みんな元気そうだ。
クラさんがこっちに来るくらいだから、やっぱりみんなに心配掛けちゃったよなぁ。はぁ……なんて、考えたら、ちょっとまた泣きたくなった! うう、ぐすぐす。
――もっと強くなれ! 俺の涙腺!
主に俺が。
カムロさんが「ハス君はどんな子供でしたか?」なんて、やたら聞きたがるから、クラさんが俺の実家に居た頃の失敗談なんかを暴露し始めたんだよ! 何てことしてんですかあああ!
「ク、クラさん! そんな話しないでくださいぃぃ!」
「何を言う。いい思い出ではないか」
「く、熊に襲われそうになって超高い木に登って下りられなくなった事件のどこが、いい思い出という表現になるんですかぁ!」
ぬああマジ恥ずかしいっ! やめてくださいおねがいします!
キノコなんかの山菜採りに夢中になって、ウッカリ森の深い場所まで踏み込んじゃった俺が悪かったんだよ! 熊とご対面! 縄張りを荒らされたとでも思ったのか、怒って追い駆けてきた熊から必死で逃げた。
最終的に木に登ってプルプル震えながらビビる俺。幹にガシガシ爪を立てながら、木をよじ登ろうとする熊を見て、怖さに耐えられなくなってギャン泣きした。
散歩途中に「びええええ!」っていう、渾身の泣き声を聞いて駆けつけてくれたクラさんのローキックで、熊さんは昇天なさいましたよ。
巨大熊じゃなくてよかった! でなかったら、俺は今ここにいないぞ!
「私にしがみ付いて泣きじゃくるお前は、とても愛らしかった」なんて、恥ずかしいことを言いながらほんとに可愛くて仕方ないって顔をして渋く微笑むクラさん。うう、カッコいい。
何だかんだ言っても、憧れの元英雄騎士様には敵わない!
「……そ、その節は大変、お世話になりましたぁ……」
実はギャン泣きしたとき、ちょっとちびったんだよ……。そのまま家に帰りたくなくて、クラさんとこで下着とかを洗濯して乾かしてもらってから帰った。熊を丸腰で仕留められるクラさんスゲー! なんて感心する気力はなかったな。
結局、仕留めた熊をクラさんが父さんに献上……じゃない、プレゼントして事の経緯をぽろっと言ってしまったんで、両親と弟にバレたけどな! ちくしょう!
「他にはどんな話がありますか。もっと聞きたいです」
「うむ。では、いくつか話そう」
「あああ! また恥ずかしい方向の話をしそうな予感しかないっ! やめてくださあああ!」
ギャー! ワー! と、悲鳴を上げる俺をそっちのけで、クラさんは俺とのいい思い出を暴露しまくった。むちゃくちゃ楽しそうに聞いてるカムロさんを見ているうちに諦めの境地に達した俺は、最後の方はもくもくと飯を食うことに没頭することにした。
腹ペコだったし! や、やけ食いとかじゃないぞ!
散々俺の話をしまくりながら、たっぷり作った肉料理を綺麗に平らげたクラさんから「ユリの料理と同じ味がした。腕を上げたなハス」という、クラさん的最高値の褒め言葉をもらえた! よっし! デミソースで煮込んだミートボールとかを作ったんだけど、いい感じに出来てよかった!
そして、食後のデザートまで出し終えたときに、「ユリから頼まれた。実家に届いたお前宛ての物だ」と、セブナスが送り返していた小包と手紙を受け取った。
「あ、ありがとうクラさん……」
小包の中身は、紅玉苺ジャムだった。ブレッデで採れる甘酸っぱいベリーを使っている。しっかり甘くして熱々を瓶詰めにすると長期保存できるから、まだ食べられるぞ! デザートのトッピングに使わせてもらおう。瓶に付いたタグに「夫婦合作愛情たっぷり」なんて書いてあってちょっと笑った。父さんと母さん、相変わらず仲いいな!
手紙の方は、母さんからだ。えーと、弟のロタとメルシャの新婚夫婦は2人で料理の修業中。父さんは「孫はまだかな」なんてストレートに聞きまくるから、母さんが尻をつねってお仕置きしたって。あはは! みんな元気そうだ。
クラさんがこっちに来るくらいだから、やっぱりみんなに心配掛けちゃったよなぁ。はぁ……なんて、考えたら、ちょっとまた泣きたくなった! うう、ぐすぐす。
――もっと強くなれ! 俺の涙腺!
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