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本編
22 あの日のことを全部話すのは正直、きつい。でも、話さないとな!
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――今度こそ本題に入るぞ!
ってことで、疑問に思ったことから聞いとこう。
「あの、クラさんどうして、俺がここに居るって分かったんですか」
「元部下達に探らせた」
うわぉ。「元部下達に探らせた」かぁ! なんかカッコいいな!
宿舎からブレッデに、小包と手紙が送り返されたのが凡そ2週間前。向こうまで届くのに早くて1週間は掛かるから……、クラさんが王都に来たのは、ほんの数日前のことになる。短期間で調査をして俺を見つけてくれてたんだ。
ありがとうクラさん!
「お前が宿舎に居ないと知れた時点で、よからぬことが起きているのは察した。だが、王都で私が直接動くのには、材料が足りぬ。ゆえに、秘密裏に情報を収集したのだ」
そこまで言ってから、やっぱり喉が渇いてたみたいでひょいっと指先でティーカップを持ち上げて、ひと息に飲み干した。クラさんがでっかいから、カップが小さく見える! ちょっと足りないよな。お代わりどうぞ!
俺が給仕した2杯目の紅茶を飲み干して、クラさんは話を続けた。
「騎士団及び宿舎周辺での聞き込みの結果、1ヵ月半ほど前に紫の瞳と金髪をした魔術師らしき風体の男と、かなり酔ったお前が話し込んでいたと酒場の給仕娘が証言した。しかし、その後の足取りが全く掴めず、王都にお前がまだ居る確証が持てなかった」
うわああ! ヤケ酒飲んで酔っぱらったの知られてる! なんかすみませんごめんなさい! 足取りが掴めなかったのは、俺がお屋敷に引きこもりしていたからだよな。わざとじゃないんだけど、申し訳ない!
「――そして、昨日になって、第三騎士団所属の下級騎士セブナス・ペルタグラが、同じ酒場でお前と遭遇したと部下から報告を受けた」
ここ2カ月足らずの間で、出歩いたのは1日にも満たないくらいの時間だ。それなのに全部知られてたのがこわああああ! 情報収集力が半端ないぞ。元部下さん達も頑張ったんだなぁ――。
「紫の瞳と金髪の組み合わせは王都広しと言えど希少だ。お前の所在が特定できたのは、ペルタグラとの遭遇と、ディザート殿のそういった希少な特徴あってのことだ」
あー、はい。ですよねー。
珍しい色合いで超美形なカムロさんの顔が印象に残っていたから、給仕娘は覚えてたんだよな。ど、どうせ俺は地味顔だ。きっ、気にしてなんか、いないぞ断じて!
数日で集めた情報で、俺がまだ王都に居ると踏んだクラさんは、カムロさんのお屋敷まで所在確認にきたんだな。まさか家政夫してるなんて思ってもみなかっただろうけど。あははは……。
「手数を掛けてしまって、すみませんでした。もっと早く手紙送れば良かったな……」
ごそごそと胸ポケットから手紙を出す。
「この手紙、実家に送ろうと思って書いたんですけど、無駄だったかなぁ」
「どれ、見せてみるといい」
「あ、うん」
手紙を読んだクラさんは、小さく苦笑した。
「心配を掛けまいとする健気さはお前の美点だが、これではいけない。事が事なのだ。直ぐにでも私に相談をするべきだったな。もう少し、人に甘えることも覚えるといい」
穏やかな声でアドバイスをくれた。うう、怒られない方が骨身に染みる不思議。心配掛けて、マジすいませんでした!
「う、うん。クラさんの言う通りだよ……。俺、ちょっと、色々いっぱいいっぱいで、実家に手紙書くのも忘れてたし。やっと今日になって、クラさんにも相談しようって、思えて……。遅く、遅くなっちゃって、心配と面倒ばっかり掛けて、す、すいませんでした……」
うう、涙腺が緩む! カムロさんがソワソワしながら、こっちに手を差し出そうとしては引っ込めてる。きゅっ、とか抱き締めるつもりじゃないだろうな? よ、余計なことしないでくださいませんかね! 俺、確実に泣くぞ!
「こうして元気でいてくれただけで、十分でなのだぞ。そのように気に病むことはない。……あちらのことは心配無用だ。お前の言葉と安否は、私から……この手紙も含めて、ユリ達に出来得る限り早くに伝えておこう」
「わかりました……。ありがとうございます。すみませんけど、お願いします……!」
「可愛い甥であるお前のためだ。この程度のこと、大したことではない」
うう、優しい。もっと厳しく言ってくれてもいいのにな!
実家に居た頃の、子供だった自分に逆戻りしそうになる。今だって子供かなぁ。ぐすっと涙ぐむ俺を、優しい顔をしたクラさんが微笑みながら見詰めている。愛情が感じられるその視線だけで、堪らない気持ちになった。
「騎士団で何があったのか……大方のところは把握しているが、お前の見聞きしたこと全ての証言も取りたい。もしも、口頭での証言が苦痛であるならば、書面でも構わぬぞ」
「い、いいです。今、ここで言います……」
「無理はするなよ」
鼻をグスグスいわせながら、俺は騎士団でのことをクラさんに証言することになった。
――あの日のことを全部話すのは正直、きつい。でも、話さなくちゃな!
※ふわふわ展開ですが、生暖かい目で見守って頂けると嬉しいです。
ってことで、疑問に思ったことから聞いとこう。
「あの、クラさんどうして、俺がここに居るって分かったんですか」
「元部下達に探らせた」
うわぉ。「元部下達に探らせた」かぁ! なんかカッコいいな!
宿舎からブレッデに、小包と手紙が送り返されたのが凡そ2週間前。向こうまで届くのに早くて1週間は掛かるから……、クラさんが王都に来たのは、ほんの数日前のことになる。短期間で調査をして俺を見つけてくれてたんだ。
ありがとうクラさん!
「お前が宿舎に居ないと知れた時点で、よからぬことが起きているのは察した。だが、王都で私が直接動くのには、材料が足りぬ。ゆえに、秘密裏に情報を収集したのだ」
そこまで言ってから、やっぱり喉が渇いてたみたいでひょいっと指先でティーカップを持ち上げて、ひと息に飲み干した。クラさんがでっかいから、カップが小さく見える! ちょっと足りないよな。お代わりどうぞ!
俺が給仕した2杯目の紅茶を飲み干して、クラさんは話を続けた。
「騎士団及び宿舎周辺での聞き込みの結果、1ヵ月半ほど前に紫の瞳と金髪をした魔術師らしき風体の男と、かなり酔ったお前が話し込んでいたと酒場の給仕娘が証言した。しかし、その後の足取りが全く掴めず、王都にお前がまだ居る確証が持てなかった」
うわああ! ヤケ酒飲んで酔っぱらったの知られてる! なんかすみませんごめんなさい! 足取りが掴めなかったのは、俺がお屋敷に引きこもりしていたからだよな。わざとじゃないんだけど、申し訳ない!
「――そして、昨日になって、第三騎士団所属の下級騎士セブナス・ペルタグラが、同じ酒場でお前と遭遇したと部下から報告を受けた」
ここ2カ月足らずの間で、出歩いたのは1日にも満たないくらいの時間だ。それなのに全部知られてたのがこわああああ! 情報収集力が半端ないぞ。元部下さん達も頑張ったんだなぁ――。
「紫の瞳と金髪の組み合わせは王都広しと言えど希少だ。お前の所在が特定できたのは、ペルタグラとの遭遇と、ディザート殿のそういった希少な特徴あってのことだ」
あー、はい。ですよねー。
珍しい色合いで超美形なカムロさんの顔が印象に残っていたから、給仕娘は覚えてたんだよな。ど、どうせ俺は地味顔だ。きっ、気にしてなんか、いないぞ断じて!
数日で集めた情報で、俺がまだ王都に居ると踏んだクラさんは、カムロさんのお屋敷まで所在確認にきたんだな。まさか家政夫してるなんて思ってもみなかっただろうけど。あははは……。
「手数を掛けてしまって、すみませんでした。もっと早く手紙送れば良かったな……」
ごそごそと胸ポケットから手紙を出す。
「この手紙、実家に送ろうと思って書いたんですけど、無駄だったかなぁ」
「どれ、見せてみるといい」
「あ、うん」
手紙を読んだクラさんは、小さく苦笑した。
「心配を掛けまいとする健気さはお前の美点だが、これではいけない。事が事なのだ。直ぐにでも私に相談をするべきだったな。もう少し、人に甘えることも覚えるといい」
穏やかな声でアドバイスをくれた。うう、怒られない方が骨身に染みる不思議。心配掛けて、マジすいませんでした!
「う、うん。クラさんの言う通りだよ……。俺、ちょっと、色々いっぱいいっぱいで、実家に手紙書くのも忘れてたし。やっと今日になって、クラさんにも相談しようって、思えて……。遅く、遅くなっちゃって、心配と面倒ばっかり掛けて、す、すいませんでした……」
うう、涙腺が緩む! カムロさんがソワソワしながら、こっちに手を差し出そうとしては引っ込めてる。きゅっ、とか抱き締めるつもりじゃないだろうな? よ、余計なことしないでくださいませんかね! 俺、確実に泣くぞ!
「こうして元気でいてくれただけで、十分でなのだぞ。そのように気に病むことはない。……あちらのことは心配無用だ。お前の言葉と安否は、私から……この手紙も含めて、ユリ達に出来得る限り早くに伝えておこう」
「わかりました……。ありがとうございます。すみませんけど、お願いします……!」
「可愛い甥であるお前のためだ。この程度のこと、大したことではない」
うう、優しい。もっと厳しく言ってくれてもいいのにな!
実家に居た頃の、子供だった自分に逆戻りしそうになる。今だって子供かなぁ。ぐすっと涙ぐむ俺を、優しい顔をしたクラさんが微笑みながら見詰めている。愛情が感じられるその視線だけで、堪らない気持ちになった。
「騎士団で何があったのか……大方のところは把握しているが、お前の見聞きしたこと全ての証言も取りたい。もしも、口頭での証言が苦痛であるならば、書面でも構わぬぞ」
「い、いいです。今、ここで言います……」
「無理はするなよ」
鼻をグスグスいわせながら、俺は騎士団でのことをクラさんに証言することになった。
――あの日のことを全部話すのは正直、きつい。でも、話さなくちゃな!
※ふわふわ展開ですが、生暖かい目で見守って頂けると嬉しいです。
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