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本編
9 っていうか俺、自分から辞めたことになってたのかぁ……
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――指輪はもう気にしない。しないったらしない!
ふーっ……。
まずは、散髪だ。
馴染みの理髪店でザクザク切ってもらった。丸刈りはさすがにやらないけど、できるだけ短く日持ちするようにデコ出し短髪。乾かしやすいし楽でいいんだよ。
騎士団では伸ばして三つ編みにしたり、前髪を後ろに流したりなんていうのが似合うイケメン騎士もいたけど、俺には似合わないんだよな。髪も瞳も王国内にはよくいる茶色。顔も地味だからな!
……さてと、散髪任務完了したぞ。すっきりだ。
もう昼近くになったから、飯食い行こうかな。ちょっとこう、脂っこいものが食べたい。酒場メニュー的な。いつも通ってた酒場でいいか。
よし、突撃!
「――ぷはー!」
ふはあああ! エールうまあぁ!
合わせて注文した山盛りチキン&ポテトフライがどーん! と、テーブルに置かれた。よしよし! 俺が食べたかったのはこういうのだよ。たっぷり揚げ油を使ったこんがりフライ! たまらん!
いただきまーす! かぶりつき!
うおおお! ぱりっぱりの皮がいいっ! スパイシーチキンうまぁ! ほくほくな塩味ポテトも最高! 山盛りなんて食べたら太る? そんなこと気にしない気にしない! たまにしか食わないからな。自分で作るのもいいけど、こうやって店で飲んだり食ったりするのも美味いよな! 酒場の雰囲気が隠し味ってやつだ。
ここで1ヵ月ちょい前に、カムロさんと会ったんだよな。なんか懐かしい感じがする。
――なんてしみじみと思いながら、飲み食いしていたら……「あっ! ハスだー!」って声がして、いきなり背中をビシイッ! と、叩かれた。
ぶっはぁ! ぬあぁ! 誰だ! チキンが口から飛び出すわっ!
振り返ると、騎士団の同期セブナスの姿が。久々に顔見た! 俺と同じように田舎生まれで宿舎住まいだ。ちょっと軽い口調だけど、根はいいヤツだし根性も度胸もあるぞ。
「おまっ、食ってるときに引っ叩くなよ」
「あー、ごめんごめん!」
どかっと隣に座って給仕娘にエールを頼んで、「1個いただき!」って、流れるような動作で俺のチキンを食いやがった!
「ちょ、俺の! 俺のチキン! 食うなよ!」
「あっはっは! 俺も今から頼むから、そこから食べていーよ。すいませーん! 大盛りチキン&ポテトひとつ!」
……俺、不正でクビになったはずだけど何も聞いてないのかな。セブナスの態度がすごく普通だ。まるで、一緒に働いてたときみたいに。
「久しぶりー。元気そうだね! お前、お父さんが病気になったとかで、田舎に帰ったんじゃなかったのー? なんでここにいるの」
なにそれ怖い! 父さんが病気だなんて知らないぞ! 団長の嘘だな。絶対にそうだ。あんのクソ団長! どこまでも腐ってるな!
「あっ、いや、うんまあ。こっちで給料いい仕事、見つけられてさ!」
お、落ち着け俺。ちょっと話を合わせておこう。
「そっかー。お父さんのために出稼ぎってやつだね。下級騎士の給料安いからしょーがないよねー!」
おいこらあああ! 安月給は禁句だぞ! 騎士団が不人気になって、人手不足になったらどうする! ……と、とにかく勝手に納得してくれた。このままの流れでいっとこう。
「あ、それだったら、預かったままにしとけばよかったね」
「何をだよ」
「南部から宿舎に届いた手紙とか小包。送り返したよ」
「えっ、マジか! いつだよそれ!」
「2週間くらい前かな」
わああああ!
実家に連絡入れるの忘れてたあああ! クビにされたショックでいっぱいいっぱいだったけどさ、忘れるなんてえええ! 変な心配されてるぞ絶対に。今さら手紙を出しても遅いだろうけど、帰ったら書いて明日にでも送ろう。
「あ、ありがとな。エールおごる」
「いーって! そんくらい大したことないし。でもさー、お前がいないとさ、野営のときとかに美味い飯食えないー! って、皆が騒いでたよ」
「俺のいるメリットは飯スキルだけか!」
「あははっ! ハスの飯はそのくらい美味いの!」
こうやって素で喋るの久々だ。同期とバカ言い合えるの楽しいな!
――っていうか俺、自分から辞めたことになってたのかぁ……。
ふーっ……。
まずは、散髪だ。
馴染みの理髪店でザクザク切ってもらった。丸刈りはさすがにやらないけど、できるだけ短く日持ちするようにデコ出し短髪。乾かしやすいし楽でいいんだよ。
騎士団では伸ばして三つ編みにしたり、前髪を後ろに流したりなんていうのが似合うイケメン騎士もいたけど、俺には似合わないんだよな。髪も瞳も王国内にはよくいる茶色。顔も地味だからな!
……さてと、散髪任務完了したぞ。すっきりだ。
もう昼近くになったから、飯食い行こうかな。ちょっとこう、脂っこいものが食べたい。酒場メニュー的な。いつも通ってた酒場でいいか。
よし、突撃!
「――ぷはー!」
ふはあああ! エールうまあぁ!
合わせて注文した山盛りチキン&ポテトフライがどーん! と、テーブルに置かれた。よしよし! 俺が食べたかったのはこういうのだよ。たっぷり揚げ油を使ったこんがりフライ! たまらん!
いただきまーす! かぶりつき!
うおおお! ぱりっぱりの皮がいいっ! スパイシーチキンうまぁ! ほくほくな塩味ポテトも最高! 山盛りなんて食べたら太る? そんなこと気にしない気にしない! たまにしか食わないからな。自分で作るのもいいけど、こうやって店で飲んだり食ったりするのも美味いよな! 酒場の雰囲気が隠し味ってやつだ。
ここで1ヵ月ちょい前に、カムロさんと会ったんだよな。なんか懐かしい感じがする。
――なんてしみじみと思いながら、飲み食いしていたら……「あっ! ハスだー!」って声がして、いきなり背中をビシイッ! と、叩かれた。
ぶっはぁ! ぬあぁ! 誰だ! チキンが口から飛び出すわっ!
振り返ると、騎士団の同期セブナスの姿が。久々に顔見た! 俺と同じように田舎生まれで宿舎住まいだ。ちょっと軽い口調だけど、根はいいヤツだし根性も度胸もあるぞ。
「おまっ、食ってるときに引っ叩くなよ」
「あー、ごめんごめん!」
どかっと隣に座って給仕娘にエールを頼んで、「1個いただき!」って、流れるような動作で俺のチキンを食いやがった!
「ちょ、俺の! 俺のチキン! 食うなよ!」
「あっはっは! 俺も今から頼むから、そこから食べていーよ。すいませーん! 大盛りチキン&ポテトひとつ!」
……俺、不正でクビになったはずだけど何も聞いてないのかな。セブナスの態度がすごく普通だ。まるで、一緒に働いてたときみたいに。
「久しぶりー。元気そうだね! お前、お父さんが病気になったとかで、田舎に帰ったんじゃなかったのー? なんでここにいるの」
なにそれ怖い! 父さんが病気だなんて知らないぞ! 団長の嘘だな。絶対にそうだ。あんのクソ団長! どこまでも腐ってるな!
「あっ、いや、うんまあ。こっちで給料いい仕事、見つけられてさ!」
お、落ち着け俺。ちょっと話を合わせておこう。
「そっかー。お父さんのために出稼ぎってやつだね。下級騎士の給料安いからしょーがないよねー!」
おいこらあああ! 安月給は禁句だぞ! 騎士団が不人気になって、人手不足になったらどうする! ……と、とにかく勝手に納得してくれた。このままの流れでいっとこう。
「あ、それだったら、預かったままにしとけばよかったね」
「何をだよ」
「南部から宿舎に届いた手紙とか小包。送り返したよ」
「えっ、マジか! いつだよそれ!」
「2週間くらい前かな」
わああああ!
実家に連絡入れるの忘れてたあああ! クビにされたショックでいっぱいいっぱいだったけどさ、忘れるなんてえええ! 変な心配されてるぞ絶対に。今さら手紙を出しても遅いだろうけど、帰ったら書いて明日にでも送ろう。
「あ、ありがとな。エールおごる」
「いーって! そんくらい大したことないし。でもさー、お前がいないとさ、野営のときとかに美味い飯食えないー! って、皆が騒いでたよ」
「俺のいるメリットは飯スキルだけか!」
「あははっ! ハスの飯はそのくらい美味いの!」
こうやって素で喋るの久々だ。同期とバカ言い合えるの楽しいな!
――っていうか俺、自分から辞めたことになってたのかぁ……。
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