【完結】薬草摘みのトトセと、忘れ去られた祠の神様のお話

ゆらり

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15.5+α 俺の嫁は最高に可愛い!

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 ――トトセと俺が、一緒に暮らすようになってから1年目のある日。


「ねえレンド、何か特別にして欲しい事ってない?」

 朝飯を食べてるときに、トトセがそんなことを聞いてきて俺はパンを喉に詰まらせそうになった。

「と、特別にして欲しいこと……って、な、何でもいいのか」
「うん。レンドが喜ぶなら、僕、何でもするよ」

 綺麗な青い瞳が、俺をじっと見つめてくる。たったそれだけでも胸がどきどきするっていうのに、「何でもする」なんて言うなよ!

「な、何でもいいのか」
「うん。何でもいいよ」

 ほんとうに何でもいいのか!

 そりゃあ、あれだ、ト、トトセに………………うわあぁ! だ、駄目だ。とてもじゃないが昼間から言えねぇことばっかりしか思いつかない! 

 興奮して体がかーっと熱くなって、倒れそうだ。

「もしかして、して欲しい事がなかったりするのかな」
「い、いや、ある! あるぞ!」

 俺が慌ててるのに、トトセはいつもと変わらない顔色で、そんな事なんてまるで考えてないっていうのが聞かなくても分かる。こいつは純な奴なんだ。俺が邪すぎるのか……狩りに行ってる間に頭を冷やしてから言うことにしよう。がっついてると思われたくねぇし!

「夜になったら言う」
「えっ。今じゃ駄目なのかな」
「駄目だ」
「ふうん。それじゃ、夜になるのを楽しみにしてるよ」

 にっこり笑う顔が可愛い。たまんねぇ! 

 ロンロと夫婦にならずに、俺を選んでくれたのが今でも信じられないくらい幸運だと思ってるし、一緒に暮らしてみて改めて、トトセのことが凄く可愛いって感じてる。俺の事をいつも考えてくれて、面倒見が良くて優しいトトセが大好きだ。

 朝飯のスープとパンを急いで平らげて、早々に狩りに出かけることにした。

「行って来る」
「うん。行ってらっしゃい。気を付けてね」
「ああ。大物仕留めてくるからな」
「あんまり頑張ると怪我しそうだから小さくてもいいよ」
「お、おう。まあほどほどなのにしとくか……」
「そうだよ。ほどほどが一番だよ」

 ニコリと笑うトトセの首元には、俺のお守りが下げられてる。

 前はロンロのお守りと俺のお守りを一緒に首に下げててそれが嫌だったけど、最近は俺のお守りだけを下げてくれるようになった。

 凄く嬉しくて「俺のだけ特別だな」なんてトトセに言うと、「うん。特別だよ。レンドのことロンロちゃんより好きだもの」なんて事まで言ってくれた。

 薬草摘みとか畑仕事を頑張ってくれて、美味い飯も作ってくれてる。それに、家の中もいつもきれいになっていて居心地がいいんだ。俺が独りで暮らしてたら、こうはならないだろうな。
 
 狩りをしっかり頑張って美味い肉を食わせてやりたいし、寒いときでも温かいように毛皮の羽織りなんかも作ってやりたい。よく働くトトセの手はちょっと荒れてるから物のいい軟膏を買って、俺が塗ってやろう。

「今夜はして欲しい事、絶対言ってね。僕、レンドに喜んでもらえると凄く嬉しいから」
「絶対言う!」

 そんなふうに言ってくれるだけで嬉しいぞ。嬉し過ぎて矢がどっかに飛んじまいそうだ。トトセは俺が喜ぶ事ばかりしてくれる。どうやったら、トトセが喜んでくれるか俺も考えないとな! 

 俺の嫁は最高に可愛い!







※お互い相手に喜んでもらえるのが一番嬉しいことで、一番して欲しい事なのです。
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