【完結】薬草摘みのトトセと、忘れ去られた祠の神様のお話

ゆらり

文字の大きさ
上 下
17 / 19

15 忘れ去られた祠の神様

しおりを挟む
 あれから何年も過ぎて、僕もレンドも大人になったよ。

 僕にはきょうだいが三人出来たよ。お淑やかで可愛い妹が二人と、元気いっぱいでやっぱり可愛い弟が一人。弟はロンロちゃんとすごく仲良しで、そのうちロンロちゃんをお嫁さんにするって言ってたね。

 僕は、レンドと一緒に暮らすようになった。

 僕の事、嫁って言うんだけれど、男でも嫁って言われるのは少し不思議な気がするよ。……でも、レンドはお嫁さんって感じじゃないから、僕がお嫁さんでいいのかな?

 そういえば、僕もレンドにお守りをあげたよ。木を削って作った小さな神様のお守り。レンドはとっても喜んでくれて、しっかり首から掛けてくれている。ロンロちゃんにも作ってあげたら、「ありがとう!」って、喜んでくれたよ。

「トトセちゃん、私のお守りは、もう家に大事にしまっておいてね。レンドのお守りだけを着けていたほうが、きっといいことがあるから」

 僕があげたお守りを首から下げて服の中に隠しながら、ロンロちゃんがそんなことを言ってきた。

「どうして? せっかくのお守りなのに」

 かっこいいお守りだったから、ずっと首に掛けていたんだ。レンドのお守りと一緒に。

「そういうものなの。その方がいいことがあるのよ。私のお守りはお家に置いていても、きっとトトセちゃんを守ってくれるから。その代わり、レンドのお守りはちゃんと見えるように首に掛けておくのよ」

 お守りって、身に着けていた方が効果があるんじゃないのかな? 

 そう思ったんだけど、ロンロちゃんが真面目な顔で「絶対そうしなさいよ」なんていうから、僕は「うん。わかったよ」って、素直に返事をして言う通りにすることにした。あんなに真剣な顔で言うのだから、きっと大事なことなんだろうね。

 ――レンドと暮らすようになって暫くして、祠のことを思い出して久しぶりに森の奥まで来てみた。

 前よりも草や蔓に覆われていて、崩れてしまっていたよ。まるで、ただの石の山みたいになっている。子供だった僕が雨宿りをしたときには大きく感じていた祠が、今はとても小さく見えた。

「神様はもうここにはいないから、必要なくなったのかな」

 レンドを好きになってから、しばらくは祠の事を忘れてしまっていた。お父さんが神様だったって事も。

 祠を見つけなければ、お父さんとも会えなかったし、レンドとも仲良くなれなかった。

 たくさんの幸せが始まる切っ掛けになった祠が、こんな風になってしまったのは……少し寂しい。

 ――今度はレンドと一緒に来て、祠を直そう。

 そう思いながら、僕は祠だった石を撫でた。









※これにて完結とします。お読みい頂きありがとうございました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~

ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。 ――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ! ※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。

何か面白い

ミコト
BL
ある少年の愉快な話し

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。

処理中です...