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15 忘れ去られた祠の神様
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あれから何年も過ぎて、僕もレンドも大人になったよ。
僕にはきょうだいが三人出来たよ。お淑やかで可愛い妹が二人と、元気いっぱいでやっぱり可愛い弟が一人。弟はロンロちゃんとすごく仲良しで、そのうちロンロちゃんをお嫁さんにするって言ってたね。
僕は、レンドと一緒に暮らすようになった。
僕の事、嫁って言うんだけれど、男でも嫁って言われるのは少し不思議な気がするよ。……でも、レンドはお嫁さんって感じじゃないから、僕がお嫁さんでいいのかな?
そういえば、僕もレンドにお守りをあげたよ。木を削って作った小さな神様のお守り。レンドはとっても喜んでくれて、しっかり首から掛けてくれている。ロンロちゃんにも作ってあげたら、「ありがとう!」って、喜んでくれたよ。
「トトセちゃん、私のお守りは、もう家に大事にしまっておいてね。レンドのお守りだけを着けていたほうが、きっといいことがあるから」
僕があげたお守りを首から下げて服の中に隠しながら、ロンロちゃんがそんなことを言ってきた。
「どうして? せっかくのお守りなのに」
かっこいいお守りだったから、ずっと首に掛けていたんだ。レンドのお守りと一緒に。
「そういうものなの。その方がいいことがあるのよ。私のお守りはお家に置いていても、きっとトトセちゃんを守ってくれるから。その代わり、レンドのお守りはちゃんと見えるように首に掛けておくのよ」
お守りって、身に着けていた方が効果があるんじゃないのかな?
そう思ったんだけど、ロンロちゃんが真面目な顔で「絶対そうしなさいよ」なんていうから、僕は「うん。わかったよ」って、素直に返事をして言う通りにすることにした。あんなに真剣な顔で言うのだから、きっと大事なことなんだろうね。
――レンドと暮らすようになって暫くして、祠のことを思い出して久しぶりに森の奥まで来てみた。
前よりも草や蔓に覆われていて、崩れてしまっていたよ。まるで、ただの石の山みたいになっている。子供だった僕が雨宿りをしたときには大きく感じていた祠が、今はとても小さく見えた。
「神様はもうここにはいないから、必要なくなったのかな」
レンドを好きになってから、しばらくは祠の事を忘れてしまっていた。お父さんが神様だったって事も。
祠を見つけなければ、お父さんとも会えなかったし、レンドとも仲良くなれなかった。
たくさんの幸せが始まる切っ掛けになった祠が、こんな風になってしまったのは……少し寂しい。
――今度はレンドと一緒に来て、祠を直そう。
そう思いながら、僕は祠だった石を撫でた。
※これにて完結とします。お読みい頂きありがとうございました。
僕にはきょうだいが三人出来たよ。お淑やかで可愛い妹が二人と、元気いっぱいでやっぱり可愛い弟が一人。弟はロンロちゃんとすごく仲良しで、そのうちロンロちゃんをお嫁さんにするって言ってたね。
僕は、レンドと一緒に暮らすようになった。
僕の事、嫁って言うんだけれど、男でも嫁って言われるのは少し不思議な気がするよ。……でも、レンドはお嫁さんって感じじゃないから、僕がお嫁さんでいいのかな?
そういえば、僕もレンドにお守りをあげたよ。木を削って作った小さな神様のお守り。レンドはとっても喜んでくれて、しっかり首から掛けてくれている。ロンロちゃんにも作ってあげたら、「ありがとう!」って、喜んでくれたよ。
「トトセちゃん、私のお守りは、もう家に大事にしまっておいてね。レンドのお守りだけを着けていたほうが、きっといいことがあるから」
僕があげたお守りを首から下げて服の中に隠しながら、ロンロちゃんがそんなことを言ってきた。
「どうして? せっかくのお守りなのに」
かっこいいお守りだったから、ずっと首に掛けていたんだ。レンドのお守りと一緒に。
「そういうものなの。その方がいいことがあるのよ。私のお守りはお家に置いていても、きっとトトセちゃんを守ってくれるから。その代わり、レンドのお守りはちゃんと見えるように首に掛けておくのよ」
お守りって、身に着けていた方が効果があるんじゃないのかな?
そう思ったんだけど、ロンロちゃんが真面目な顔で「絶対そうしなさいよ」なんていうから、僕は「うん。わかったよ」って、素直に返事をして言う通りにすることにした。あんなに真剣な顔で言うのだから、きっと大事なことなんだろうね。
――レンドと暮らすようになって暫くして、祠のことを思い出して久しぶりに森の奥まで来てみた。
前よりも草や蔓に覆われていて、崩れてしまっていたよ。まるで、ただの石の山みたいになっている。子供だった僕が雨宿りをしたときには大きく感じていた祠が、今はとても小さく見えた。
「神様はもうここにはいないから、必要なくなったのかな」
レンドを好きになってから、しばらくは祠の事を忘れてしまっていた。お父さんが神様だったって事も。
祠を見つけなければ、お父さんとも会えなかったし、レンドとも仲良くなれなかった。
たくさんの幸せが始まる切っ掛けになった祠が、こんな風になってしまったのは……少し寂しい。
――今度はレンドと一緒に来て、祠を直そう。
そう思いながら、僕は祠だった石を撫でた。
※これにて完結とします。お読みい頂きありがとうございました。
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