【完結】薬草摘みのトトセと、忘れ去られた祠の神様のお話

ゆらり

文字の大きさ
上 下
16 / 19

14 ちょっぴり我慢してね

しおりを挟む
 頭を撫でてあげてから、レンドはときどき僕を抱き締めるようになったよ。

「ねぇ、なんで抱き付いてくるの」
「好きだからだ。嫌いな奴にはこんなことしねぇぞ」
「僕のこと、ほんとに好きなんだね。レンドは」
「いつも言ってるだろ」

 レンドに抱き締められると、ちょっぴりドキドキするよ。お父さんやお母さんに抱き締められるのと違う感じ。くっついてるとなんだか気持ちがよくて、ずっとくっついていたくなるんだよ。変だね。

 あんなに嫌いだって思ってたバカレンドなのに、どうしてだろう。薬草摘みと狩りが終わったあと、家に帰る前に少しだけレンドと二人で会うようになった。

 晩ご飯までには帰らないといけないから、ほんとに少しだけの時間。

 手を繋いで一緒にお家まで帰ってる。僕の手は小さくて柔らかいってレンドは言うけれど、僕も男の子だから、ロンロちゃんやお母さんみたいに柔らかくないし、小さくもないと思うんだけど。レンドの手は大きくてごつごつしてて、あったかいよ。

 嫌いだったときの気持ちが、あんまり思い出せなくなってきた。レンドのかっこいところとか、優しいところを色々知って、好きな気持ちの方が増えてきたよ。

「僕……、レンドがすごく好きだよ。大嫌いだったのに、不思議だね」
「……トトセ!」

 レンドが嬉しそうに「俺もすごく好きだ!」って叫んで、またぎゅって抱き締めてきたよ。

「わあっ!」

 急にギュってされるとびっくりするよ。くっつかれると嫌じゃないけどなんだかムズムズする。

「絶対優しくするから、俺の嫁になってくれ」

 ぎゅうぎゅう抱き締めてくるレンド。いつもより力が強くて苦しいから、「ちょっと離れて」って言いながらぐいぐい押して離れてもらったよ。

「僕男だからお嫁さんじゃないよ。お婿さんだよ」
「どっちでもいい。一緒に暮らそう」
「うーん、まだお父さんとお母さんと一緒にいたいから、大人になったらね」
「そっ、そんな……」

 レンドが泣きそうになってるよ。仕方ないよね。僕はまだ子供だもの。僕があともう少し、背が伸びて大人になったら……、きっとレンドと一緒に暮らすと思う。

 僕もレンドをお婿さんにしたいくらい好きだよ。だから、ちょっぴり我慢してね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~

ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。 ――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ! ※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

人生イージーモードになるはずだった俺!!

抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。 前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!! これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。 何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!? 本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

処理中です...