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9.5 ソソラと……
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――やっと、家族三人で暮らせるようになった。
トトセが祠を見つけてくれてよかった。父が掛けた封印を、あの子は容易く解いてくれた。とても強い心からの祈りの力と、ルルナが私とトトセを想いながら焼いてくれたと分かるパンがあったからだ。
供物と祈りは、私のような神にとって非常に意味のあるものだ。時として、奇跡と呼ばれる力にもなるのだから。
父は解かれた封印を再び掛けることはしなかった。……いや、できなかった。幼い孫の愛らしい祈りと、義理の娘であるルルナの、愛情のこもった供物に心を打たれたようだ。
祠での祈りや供物の力は、直接神に届く。私が言い募っても届かなかった願いが、予想もしない形で伝わったのは幸いだった。
――トトセが祠で父に向けて、私を再び封印しないようにと祈りを捧げてくれたその日の夜。
家族三人で眠っているとき、父が夢の中で会いに来た。
「……わしも意固地になり過ぎていた。もう、好きにするがいい。ただし、悪い方向へと傾いたそのときは、容赦はしないからな」
「そのようなことにはなりません。絶対に」
「その言葉を信じよう。幸せにな」
「はい」
もし万が一にも、ルルナやトトセが悪い方へ堕ちてしまう日が訪れたら、そのときは……誰にも迷惑を掛けない遠い場所へ二人を連れて行ってしまおう。
「もしよかったら、ルルナとトトセに会ってください」
「……ああ、そのうちにな。今はまだちと会い辛い」
「ふふ。トトセに言われた事、気にしているんですか」
「しないでいられるか。可愛い孫に酷いやら嫌いなどと、言われる身になってみろ」
「そうですね。もし私がその立場だったら、きっと同じ気持ちになります。……トトセに嫌いだなんて、言われたくありませんから」
どちらからともなく、声を出して笑った。こんな楽しい気持ちで父と話ができたのは久しぶりだった。こんな風に笑うことができた事も、ルルナとトトセの事を認めてくれたのも……酷く嬉しかった。
――やがて父の姿は夢の彼方に消えていき、私は目覚めた。
ルルナが私の手を握って眠っていた。二人の間には可愛い息子のトトセがいる。家族の温もりが愛おしい。
「……おはよう、あなた……」
しばらくして目覚めたルルナにふわりと微笑まれて、胸が熱くなる。
「おはようルルナ」
私は愛する家族と暮らせる幸せを、ルルナに微笑みを返しながら噛み締めた。
トトセが祠を見つけてくれてよかった。父が掛けた封印を、あの子は容易く解いてくれた。とても強い心からの祈りの力と、ルルナが私とトトセを想いながら焼いてくれたと分かるパンがあったからだ。
供物と祈りは、私のような神にとって非常に意味のあるものだ。時として、奇跡と呼ばれる力にもなるのだから。
父は解かれた封印を再び掛けることはしなかった。……いや、できなかった。幼い孫の愛らしい祈りと、義理の娘であるルルナの、愛情のこもった供物に心を打たれたようだ。
祠での祈りや供物の力は、直接神に届く。私が言い募っても届かなかった願いが、予想もしない形で伝わったのは幸いだった。
――トトセが祠で父に向けて、私を再び封印しないようにと祈りを捧げてくれたその日の夜。
家族三人で眠っているとき、父が夢の中で会いに来た。
「……わしも意固地になり過ぎていた。もう、好きにするがいい。ただし、悪い方向へと傾いたそのときは、容赦はしないからな」
「そのようなことにはなりません。絶対に」
「その言葉を信じよう。幸せにな」
「はい」
もし万が一にも、ルルナやトトセが悪い方へ堕ちてしまう日が訪れたら、そのときは……誰にも迷惑を掛けない遠い場所へ二人を連れて行ってしまおう。
「もしよかったら、ルルナとトトセに会ってください」
「……ああ、そのうちにな。今はまだちと会い辛い」
「ふふ。トトセに言われた事、気にしているんですか」
「しないでいられるか。可愛い孫に酷いやら嫌いなどと、言われる身になってみろ」
「そうですね。もし私がその立場だったら、きっと同じ気持ちになります。……トトセに嫌いだなんて、言われたくありませんから」
どちらからともなく、声を出して笑った。こんな楽しい気持ちで父と話ができたのは久しぶりだった。こんな風に笑うことができた事も、ルルナとトトセの事を認めてくれたのも……酷く嬉しかった。
――やがて父の姿は夢の彼方に消えていき、私は目覚めた。
ルルナが私の手を握って眠っていた。二人の間には可愛い息子のトトセがいる。家族の温もりが愛おしい。
「……おはよう、あなた……」
しばらくして目覚めたルルナにふわりと微笑まれて、胸が熱くなる。
「おはようルルナ」
私は愛する家族と暮らせる幸せを、ルルナに微笑みを返しながら噛み締めた。
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