【完結】薬草摘みのトトセと、忘れ去られた祠の神様のお話

ゆらり

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4 神様のお家で雨宿り

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 ――泣きながらレンレ森の中を走って、走って……いつも行くところよりも奥の方に来ちゃった。

 さっきまで気持ちがめちゃくちゃだったけど、走りながら泣いてたらすっきりしたよ。うーん、ここどこだろう。なんだか空が暗いね。曇ってるみたい。雨が降りそうだよ。

「籠、おいてきちゃったね」

 今日はちょっぴりしか薬草が摘めないかな。お弁当とか水筒の入ったポーチは持ってるけど、薬草を入れる籠がないからね。リンドにぶつけたりしなければよかったよ。リンドのばかばか!

 帰ったらリンドにまた籠ぶつけちゃうからね。お仕置きだよ!

「あれ? こんなとこにお家がある……」

 泣いて走ってきて、ぷりぷり怒っていたから気が付かなかったけれど、目の前に石でできた小さなお家みたいなものがあったよ。

 屋根まで全部石。白い四角い石の壁に、三角の大きな石が乗ってる。
 
 うーん、これ、なんだろうね。入口は草だらけだよ。ずうっと誰もここに来ていないみたい。取って綺麗にしたら、雨宿りできそうだよね。

 ぷちぷちざくざく、ツタを引っ張ったり草をナイフで切ったりしていたら、ぽつぽつ雨が降って来た。いそがなくちゃ。

 ぷちぷちざくざくぷちぷち……うん、綺麗になった。

「お邪魔します」

 僕がお家に入ってすぐにざーって雨が酷くなってきた。中はとても広くて、立って歩けるくらいだったよ。そんなに大きく見えなかったけれど、広いのはいいことだよね。前の壁に人の形をした彫り物がしてあって、その前には小さな石の台がある。

「……これ、神様かな」

 小さなお家みたいだと思ったけど、神様のお家だったみたい。いつもお礼を言っていた神様のお家に来ちゃったよ。今日は嫌なことがあったけど、運がいいみたいだね。よかったよ。

 外はまだまだザーって雨が降ってる。止まないね。

 お腹が空いたから、お昼にしようかな。母さんが朝に竈で焼いてくれたパンをポーチから出して「いただきます!」。ひと口かじってもぐもぐ。うん、美味しい!

「……神様も欲しいかな」

 あっ。雨宿りさせてもらうんだから、お礼をしなくちゃ。パンを半分に千切って、かじってない方を石の台の上に置いてあげたよ。
 
「神様、神様、いつも恵みをありがとうございます。どうか雨宿りさせてください。お礼に僕のお昼ご飯を半分あげますね。うちのお母さんが焼いたパンです。美味しいよ」

 ――ピカッ! 

 あれ? いまちょっと、神様が光ったみたいに見えたけど、気のせいだよね? 

 もしかして、神様が喜んでるのかな。パンは半分になっちゃったけど、一人で食べるよりもずっといいよね。なんだかいつもより特別な感じ。美味しいパンが、もっと美味しくなった気がするよ。半分だけどお腹いっぱい。ちょっと眠くなってきた。いっぱい泣いて走って、草むしりもしたから疲れたのかな? 

 ……すこーしだけ、寝ようかな……。
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