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5 青い髪のお兄さん
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「――あれ? 雨が止んでる……」
ポーチを頭の下に置いてちょっとだけ寝てる間に、雨が止んだよ。うーん、体がちょっと痛いよ。お家の寝床で寝るよりも固いもんね。よいしょと起き上がって、背伸び。
あ! 石の台の上のパンがなくなってる! 神様が食べてくれたのかな。どうなんだろうね。気になるけど、そろそろ帰らないと。あんまり遅くなると、余計にタタンさんや母さんが心配しそうだし。
お家から出てみると、少し日が暮れてきてた。夜は危ないから急がないと。
「ありがとうございました。帰りますね」
神様に挨拶して、さあ帰ろうって思ったそのとき。
「こんにちは」
「ひゃっ!」
誰もいないと思っていたら、後ろから声がしたよ! 振り返ったら、青い綺麗な髪をしたお兄さんが立ってた。村の人と同じような服を着ているけれど、見たことない人だった。誰だろうね。
「お祈りとお供え物のパン、ありがとう。私はこの祠の神様だ」
「えっ、神様?」
ニコニコ笑っている神様は、とても優しそう。僕の頭を撫でてくれて、「そう、神様だよ。でも、皆には内緒にしていて欲しい」と、言ってぱちりと片眼を閉じた。神様、なんだかかっこいいね。
「内緒なのはわかったよ。神様」
「ソソラと呼んで欲しい。神様なのは内緒だからね」
「はい。ソソラさん、いつも恵みをありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
神様に会えたらお礼を言いたかったからね。やっと言えたよ。
「うん。どういたしまして。大したことはできないけれど、よろしくね」
ソソラさんは凄く嬉しそうな顔をして、僕の頭を何度も何度も撫でてくれたよ。
目も髪と同じ青い色をしていて、とっても綺麗。母さんの好きな青色だ。このお兄さん、なんだかどこかで会った気がするけれど。思い出せないよ。こんな綺麗な色をしていたら、覚えてるよね。
「ソソラさん、村に居たことがありますか? どこかでソソラさんを見た気がするんだけれど」
「ああ、ずっと前にね。今日になって、やっと村に帰れる日が来たところだよ」
神様は村に居たことがあったんだね。そのときも神様なのは内緒にしてたのかな。神様って呼ばないように気をつけなくちゃね。
「そうなんだ。それじゃあ、僕と一緒に帰りませんか」
「ああ、そのつもりだったよ。一緒に帰ろう」
「はい!」
それから、僕と森の神様のソソラさんは、お話しながら村まで戻った。
僕のお家の近くまで来たときに「トトセ! お帰り!」って、タタンおばあさんがお家から出て来たよ。泣いて逃げて行ったからやっぱり、心配させちゃったみたい。
「ただいま。タタンさん」
パタパタって小走りで寄って来たタタンさんが「大丈夫かい? レンドはちゃんとお仕置きしておいたからね」と言って、ぺしんぺしんとおしりを叩く真似をしたよ。……レンド、叩かれたのかな。
「うん。大丈夫。心配掛けてごめんなさい」
「トトセは謝らなくていいんだよ。まったく、あの坊はしょうがない子だよ。トトセに嫌われたくないなら、意地悪なんてしなけりゃいいのに……」
うん。そうだよね。僕もそう思う。しょうがない子だよね。嫌われたくないのになんで意地悪なんだろうね。やっぱり不思議だよね。頭が痛そうな顔をして、タタンさんは唸っていたけど、僕の後ろにいたソソラさんの方を見て驚いた顔をした。
「おやっ! ソソラじゃぁないか! 久しぶりだね! 嫁と子供を放り出してどこ行ってたんだい!」
あっ、タタンさんはソソラさんを知ってるんだ。
「ああ、すみません。お久しぶりですねタタンさん。やっと父から許しがもらえたので、戻ってきました」
「そうかい。良かったねぇトトセ! ソソラが帰ってきて!」
――えっ? なんで僕が良かったって言われるの?
「ほらっ! 早くルルナのとこに行きな!」
バシン!
タタンさんがソソラさんの背中を叩いて急かしてる。ええっと、ちょっとよくわからないけど、急いでお家に帰らなくちゃいけないみたい。
「は、はい。トトセ、行こうか」
「うん。わかったよ」
ソソラさんが走り出したから、僕も走った。今日はよく走る日だなぁ。
ポーチを頭の下に置いてちょっとだけ寝てる間に、雨が止んだよ。うーん、体がちょっと痛いよ。お家の寝床で寝るよりも固いもんね。よいしょと起き上がって、背伸び。
あ! 石の台の上のパンがなくなってる! 神様が食べてくれたのかな。どうなんだろうね。気になるけど、そろそろ帰らないと。あんまり遅くなると、余計にタタンさんや母さんが心配しそうだし。
お家から出てみると、少し日が暮れてきてた。夜は危ないから急がないと。
「ありがとうございました。帰りますね」
神様に挨拶して、さあ帰ろうって思ったそのとき。
「こんにちは」
「ひゃっ!」
誰もいないと思っていたら、後ろから声がしたよ! 振り返ったら、青い綺麗な髪をしたお兄さんが立ってた。村の人と同じような服を着ているけれど、見たことない人だった。誰だろうね。
「お祈りとお供え物のパン、ありがとう。私はこの祠の神様だ」
「えっ、神様?」
ニコニコ笑っている神様は、とても優しそう。僕の頭を撫でてくれて、「そう、神様だよ。でも、皆には内緒にしていて欲しい」と、言ってぱちりと片眼を閉じた。神様、なんだかかっこいいね。
「内緒なのはわかったよ。神様」
「ソソラと呼んで欲しい。神様なのは内緒だからね」
「はい。ソソラさん、いつも恵みをありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
神様に会えたらお礼を言いたかったからね。やっと言えたよ。
「うん。どういたしまして。大したことはできないけれど、よろしくね」
ソソラさんは凄く嬉しそうな顔をして、僕の頭を何度も何度も撫でてくれたよ。
目も髪と同じ青い色をしていて、とっても綺麗。母さんの好きな青色だ。このお兄さん、なんだかどこかで会った気がするけれど。思い出せないよ。こんな綺麗な色をしていたら、覚えてるよね。
「ソソラさん、村に居たことがありますか? どこかでソソラさんを見た気がするんだけれど」
「ああ、ずっと前にね。今日になって、やっと村に帰れる日が来たところだよ」
神様は村に居たことがあったんだね。そのときも神様なのは内緒にしてたのかな。神様って呼ばないように気をつけなくちゃね。
「そうなんだ。それじゃあ、僕と一緒に帰りませんか」
「ああ、そのつもりだったよ。一緒に帰ろう」
「はい!」
それから、僕と森の神様のソソラさんは、お話しながら村まで戻った。
僕のお家の近くまで来たときに「トトセ! お帰り!」って、タタンおばあさんがお家から出て来たよ。泣いて逃げて行ったからやっぱり、心配させちゃったみたい。
「ただいま。タタンさん」
パタパタって小走りで寄って来たタタンさんが「大丈夫かい? レンドはちゃんとお仕置きしておいたからね」と言って、ぺしんぺしんとおしりを叩く真似をしたよ。……レンド、叩かれたのかな。
「うん。大丈夫。心配掛けてごめんなさい」
「トトセは謝らなくていいんだよ。まったく、あの坊はしょうがない子だよ。トトセに嫌われたくないなら、意地悪なんてしなけりゃいいのに……」
うん。そうだよね。僕もそう思う。しょうがない子だよね。嫌われたくないのになんで意地悪なんだろうね。やっぱり不思議だよね。頭が痛そうな顔をして、タタンさんは唸っていたけど、僕の後ろにいたソソラさんの方を見て驚いた顔をした。
「おやっ! ソソラじゃぁないか! 久しぶりだね! 嫁と子供を放り出してどこ行ってたんだい!」
あっ、タタンさんはソソラさんを知ってるんだ。
「ああ、すみません。お久しぶりですねタタンさん。やっと父から許しがもらえたので、戻ってきました」
「そうかい。良かったねぇトトセ! ソソラが帰ってきて!」
――えっ? なんで僕が良かったって言われるの?
「ほらっ! 早くルルナのとこに行きな!」
バシン!
タタンさんがソソラさんの背中を叩いて急かしてる。ええっと、ちょっとよくわからないけど、急いでお家に帰らなくちゃいけないみたい。
「は、はい。トトセ、行こうか」
「うん。わかったよ」
ソソラさんが走り出したから、僕も走った。今日はよく走る日だなぁ。
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