戦国時代〜転生パロ

みるく

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出会い 後編

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「あの、どちら様ですか?」
「僕は内藤昌豊といいます。そしてこの人が馬場信春。覚えている、と聞きたいところだけどその様子難しいよね……」
「ごめんなさい、わからないです……」

富士見野高校近くにあるカフェにて。2人は山県昌景と名乗る人と対面していた。しかし残念ながら昌景は2人のことを知らないようで戸惑うばかり。

「一つだけ聞かせてくれ。君は長篠の戦いを知っているか?」
「えぇ、授業で習っているので」
「俺と昌豊、そして昌景の三人で参戦して共に戦った時のことは覚えているか?」
「な、なんのことでしょうか」
「そうか……」

これ以上の進展はないだろうと判断した2人は連絡先を渡して解散とした。

「あの人にも信春と同じ現象が起きてるってことだね」
「そうだな。だが戦の話を持ちかけたら少しだけ動揺を見せていた。完全に忘れているというわけではなさそうだ。俺たちのことは覚えていなくとも、過ごした記憶だけは残っている。次会う機会があれば思い出話をしてみようと思う」

昌景の記憶を思い出させる方法を模索しながら電車を乗り継ぎ、家までの帰路を歩いていく。

「写真があれば何か手がかりが掴めるかもしれないけど前世ではカメラは無かったから……うわっ!」

前から走って来た男にぶつかってしまい、昌豊は後ろによろけてしまう。

「す、すみません」
「大丈夫か?」
「は、はい……ってえ!?」

男が信春の顔を見た瞬間、慌てたような表情に変わる。

「あなたは……馬場信春さん!?」

見知らぬ人に名前を当てられ、信春は困惑する。しかし昌豊は動じることなく、言葉を紡いだ。

「彼のこと、知っているの?」
「もちろんです! ずっと探していましたから! あ、申し遅れました。僕は高坂昌信と申します。えっと、あなたは内藤昌豊さんですね?」
「そうだよ。どうして分かったの?」
「その話は僕の家でしても大丈夫ですか? この近くにありますので」

昌信の名乗る男の誘いを承諾し、2人は家に向かうことに。


「どうぞ」

昌豊と信春の目の前にお茶を差し出される。そして真向かいに昌信がテーブルの椅子に座った。

「まずどこから話しましょうか……とりあえず自己紹介からですね」

高坂昌信の名乗る男は富士見野大学情報学部の1年生。例の富士見野高校とは付属校という関係であるが外部生として入学している。そのため山県昌景の存在はニュースで知ったという。

「なぜ僕が2人の名前を知っているかという疑問から答えましょう。実は前世の記憶を持ったままこの世界に転生してしまったからなんです。なので2人と出会う前から名前は知っていましたし、共に戦場で戦った記憶も覚えています」
「そうなんだね、じゃあ、信玄様のことも知ってる?」
「知ってますよ。というか僕が古典を教えてもらった時の先生でしたよ。家庭教師ですけどね」
「「え!?」」

本当かと信春が詰め寄ると昌信は頷く。ここで自分たちの当主に関する情報を得られたのは大きい。

「連絡とか取れたりする?」
「出来ますよ。いまかけてみましょうか?」

そう言って昌信はスマホを取り出して武田信玄という人に電話をかける。しかし不在を告げるメッセージが流れ、電話を切ると首を振った。

「そもそもだけどなぜ御館様の連絡先を知ってるの?」
「お別れする時に教えてもらったんです。何かあった時のためにと」
「なるほど。ところで、今は一人暮らしか?」
「そうですけど……」
「もしよければ俺たちと一緒に暮らさないか?」
「はぁ!? なに言ってんの信春!」
「構いませんよ。あなたたちも信玄様のこと、探しているんですよね? それだったら別々で行動するよりも一緒のほうが見つかる可能性も上がると思うので」
「よし、決まりだな」
「よしじゃない!」

こうして流れで昌信とも同居生活を送ることになってしまった。





「結局何者だったんだろ……」

一方その頃、昌景は自室のベッドでぼんやりと天井を見つめながら考えをぐるぐると巡らせていた。

(あっちが僕のことを知っているのは無理ないけど、長篠がどうとか言ってたよね。三人で別れの盃を交わしたのは覚えてるけどそれ以外はなにも……どうしてかな)
「失礼するよ」

突然の来訪者と部屋に入られたことに驚きを隠せない。

「は、え、え!?」
「急に来て申し訳ない。私は武田信玄。君の担任に頼まれてやって来たんだ」

実は昌景の成績はあまり芳しくなく、常に低空飛行。特に数学と古典は常に赤点でこのままでは留年の可能性があると危惧した担任が個別に依頼し、家庭教師として信玄が派遣されたのである。

「今日から週2日、宿題等の面倒を見ることになるからそのつもりでよろしくね」
「やめてくれーー! 勉強は嫌だー!」
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