189 / 237
国崩し・東瀬織と悪意の箱のこと
国崩し・東瀬織と悪意の箱のこと33-炎上編-
しおりを挟む1970年代の幻の封印アニメ〈みらくる☆みくらちゃん!〉とは……?
70年以上に渡る国家的陰謀、ウ計画。
永遠無窮の人造神による正しき統治と、権力者たちの永遠の権益。
ある一人の狂人の「神を作りたい」という欲求から生じた計画に、時の権力者たちが賛同した理由とは――恐怖でございます。
今となっては想像し難いかも知れませんが、世界大戦による国家の滅亡、東西超大国の冷戦など、当時は破滅はとても身近な危機でした。
明日、いや一時間後の平穏すら保障されない不安と危機感。
その恐怖が、人造の神という究極の自己救済へと繋がったのです。
いつの世も、人は不安から逃れるために神や魔を作ります。
それはわたくし――東瀬織がヒトのカタちを成す前から変わりません。
人間とは、何万年、何千年経とうと全く進歩がないのです。
故に、神を作る方法も、殺す方法も、太古から変わらないのですよ。
一見、完全無欠で攻めようがないウ計画も、人間が運用する以上は隙だらけでございます。
たとえば、奥上教授が宗教法人みくらの解の代表者だったお父上から相続拒否をした遺産の中にも、ちょっとした落とし穴がございました。
それが、1970年代に作られたあにめーしょん作品――〈みらくる☆みくらちゃん!〉。
全21話の……いわゆる魔法少女以前の魔女っ娘もの、という類の作品でございますね。
これは今では権利者不明で再放送も商品化も不能な幻の作品、というのが俗説です。
その存在を知るには、何十年も前に出版された魔女っ娘大特集とかの版権書籍、もしくは一部の研究家や好事家の書いた同人誌くらいしか手段がありません。
しかしながら、時たま動画が発掘されてねっとに上がっても即座に権利者削除されてしまうといいます。
権利者が不明なのに権利者削除? これはおかしな話だと、一部では噂になっておりました。
その権利者というのが宗教法人みくらの解だったのです。
そもそも、この作品はみくらの解が1970年代に広報目的であにめ会社に発注したものでした。・
出資者として最低限の注文はあったのでしょうが、作品の内容にはあまり口出しされなかったようで、監督と脚本家は自由に作れた――と、90年代に独自取材を行った同人誌には記載されています。
なお、その同人誌では件の宗教法人は「某団体」とボカした表現をされております。
さて、〈みらくる☆みくらちゃん!〉の内容というのは、第二次世界大戦で撃沈された海防艦・御蔵の魂が妖怪の女の子になって現代社会に復活。
みくらちゃんは、かつて乗組員の孫である女の子の家に居候して、現代生活をえん☆じょいしたり、妖力で色々な事件に立ち向かっていくという、割とありがちな魔女っ娘もの――
と思わせて、後半から監督と脚本家が暴走開始。
第12話を境に悪の妖怪との熾烈な戦闘が開始され、やがて異形の敵妖怪はみくらちゃんのような人型に進化。
なんと今まで戦ってきた敵妖怪は、全てみくらちゃんのかつての同胞、旧日本海軍の艦艇の魂だったのです。
仲間を手にかける罪悪感、やがて自分も仲間のような悪の妖怪になるのではという恐怖心に苛まれつつも、街を守るために戦い続けるみくらちゃん――という超絶はーど展開が繰り広げられたものの、終盤の第21話を最後に唐突な番組打ち切り。
監督によれば
「出資者が内容チェックしてねーから好き放題やってたら、終盤にいきなり試写会に来ちゃって、めっちゃ怒られて打ち切られちゃったよ~!」
とのこと。
なお、監督と脚本家は後年に再挑戦的な魔法少女ものを作り、そちらの終盤が〈みらくる☆みくらちゃん!〉の予定していた結末と大体同じだそうです。
なんでも、自分のような兵器は現代社会に不要な存在だと知った魔法少女が、絶望して敵と同じ悪に染まって破壊の限りを尽くす。
しかし、かつて乗組員だったお爺様たちの説得で正気に戻り、艦艇である自分の残骸が眠る海に帰っていくという……切ない物語と時代を先取りした悪堕ち描写で、あにめふぁんの語り草になっているとか。
とまあ、この〈みらくる☆みくらちゃん!〉の権利書が奥上教授の相続リストの中に含まれていたのです。
しかし、この珍妙なあにめが何故に封印されているのでしょうか?
何ゆえに権利者は躍起になって動画の削除をするのでしょうか?
それは、この〈みらくる☆みくらちゃん!〉に知られたくない事柄が含まれているからじゃないんですかね~?
〈みらくる☆みくらちゃん!〉が書籍や資料から存在を抹消されたのは、2000年代からです。
奇しくも、あのウカとかいう小娘を看板に使った関連あぷりの配信が始まった頃と重なります。
それもそのはず。
ウカの外見は、〈みらくる☆みくらちゃん!〉主人公のみくらちゃんの流用なのですから。
絵柄こそ現代風になっているものの、髪型も顔立ちも服装も瓜二つ。
恐らく、これも人間ならではの失敗、担当者間の連絡不足、引き継ぎの失敗、あるいは怠惰によって生じたモノでございましょう。
ウカを毛嫌いする皆さんが作ったまとめ情報には、以前からパクリ疑惑として掲載されていましたが、なにぶん大昔の知名度の低い封印作品ですから検証も出来ず、議論になる度に粗し話題そらし等の火消しが現れるので、今までずっと埋もれていた事柄でございます。
これは、わたくし達にとっては格好の火種。
ネット工作を依頼していたカチナさん達にドーーンと情報をバラ撒いてもらいました♪
こんなこともあろうかと、アズハさん達が奪取してきた〈みらくる☆みくらちゃん!〉全21話の複製てーぷも電子化して勝手に配信。
もちろん権利者削除されますが、消すと増えます。
最も重要なのは、〈みらくる☆みくらちゃん!〉が宗教団体の出資によって作られた宗教的広報作品だということです。
清純無垢だったウカのイメージが一気に胡散臭くなります。
更に、そこに油を投入。
宗教法人みくらの解と政府与党との長年の癒着を暴露。
ウ計画と共に始まった両者の関係は慣例的に現在まで続き、議員先生の事務所のお茶くみから選挙協力に至るまで関わっているという確定情報を流したのです。
これも、わたくし達に協力してくださる政府閣僚の江田島先生に提供して頂きました。
こうして一般世論も巻き込んで炎上――したのを、政府は圧力をかけて火消し。
先日の自衛隊と戦闘機械傀儡の戦闘に関する報道もまとめて規制および削除。
ねっと上の議論も話題そらし、荒らし同然の埋め立て、運営削除によって封殺。
江田島先生が指示された通り、最悪の間違った消火作業をしてくださいました♪
圧力というものは強い力で抑えるほど、反発もまた大きくなるのです。
ウカが最大手のSNSあぷりを掌握しているとはいえ、いんたーねっとの全てが支配下にあるわけではありません。
たとえば外資系SNSや掲示板は完全な支配下にはない。
人々の不満や不信が火柱となって吹き出すのに――大して時間はかかりませんでした。
「ここまで必死に火消しするのはウカが政府と関係あるからだろ!」
「ちょっと話題にしただけで垢凍結とかふざけんなやクソカルトアプリ! 頭ディストピアか?」
「そんなに知られたくない事実でもあるんですかねぇ!」
人と人とが悪意と憎悪の導火線で繋がって、美しい花火が出来上がりました♪
ねっと上でも現実でも大炎上しておりますわあ~♪
わたくし達は、それにささやかな油を注いでさしあげるのです。
追加情報として
「サポートアプリUKAの開発者は10年前からアプリの欠陥を指摘していた」
とか
「UKAは登録された個人情報を不正に政府に流している」
とか
今まで火消し工作で議論を潰されていた既出情報をどんどん表に引っ張り出して、消すと増えます状態にして、人の怒りと不安をどんどん膨らませて――
どーーーんと破裂させるのですわ♪
具体的に何をしたのかというのは、あのエデン・ザ・ファー・イーストさんが説明してくださいました。
「このUKAってアプリ、最初からバックドアがあるよネ? 利用者のビッグデータを収集し、更には端末自体をリモートコントロールするための。これは開発初期段階から意図的に仕込まれていたモノで、危険性は開発者が10年前から指摘していた。だから、その開発者の口を……どうやって割らせたんだい?」
それはまあ――ぶっちゃけ、江田島先生にやったのと同じ自作自演の暗殺未遂ですわね。
今は隠居されている開発者の偉い学者先生に「政府はあなたの口を封じようとしている」と恐怖心を植え付けて、殺られる前に殺れと協力して頂きました。
「で、アクセスコードをゲットしたワケだネ。後は管理者モードを開けるパソコンが必要」
それは運営会社に出入りできる中央省庁の間者の方に協力して頂きました。
運営会社自体が総務省の天下り先だったので、ちょっとした視察名目で訪問できたそうです。
「リモートアクセスできる状態に出来たのなら、後はワタシの商売道具の出番だネ~~!」
エデン・ザ・ファー・イーストさんが取り出したのは、妙な形の小道具でした。
「電子の物の怪、あるいは妖精――これの原種が精製された香港では、電精と呼んでいた。日本語でも意味通じるかな? これは電子的アーキテクチャに侵入し、受精させることで増殖する。魔術的コンピューターウィルス。こいつのワクチンプログラムは、少なくとも日本の官公庁は採用していない。この国の電子的防御体制はあまりにも前時代的。隙間だらけだからネェェェェェェ?」
つまり、それで何をすると?
「バックドアを一般に開放する。すなわち、UKAをインストールされた全てのパソコン、スマホ、ネット端末からあらゆる情報がオープンになってしまう。フォルダの中の恥ずかしい写真も、チャット上の秘密の会話も、エロ画像も、クリップボードに保存していたパスワードも、何もかもが勝手に開示される! カーオースーー開・幕ゥゥゥゥゥゥゥ!」
エデン・ザ・ファー・イーストさんが小道具をスマホに差し込むと、ウカという小娘の終わりが始まりました~~♪
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる