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第四話

設定解説のこと4-1

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 流石に絵がないと分かり難いメカが増えてきたので、後でラフ画を追加します。


 ・試製装甲防護服改四甲型

 南郷十字の着用する装甲服。
 Aクラス改造人間エイリアスビートルとの戦闘で装甲服は大破したが、既に試作品の補修パーツが枯渇していたため、発展正式採用型の13式装甲倍力服のパーツを転用して修理された。
 相変わらずパワーアシスト機能はなく、使用されているソフトウェアも旧式のまま。
 これは南郷の「新しいOSは使い難い」「そもそも信用できない」という個人的な執着と偏見によるもの。
 基本性能に関しても、ヘルメット内蔵の電子機器がアップデートされて処理能力やメモリ容量が向上し、バッテリーが現行の全固体電池に換装されて電池容量に余裕が出来た程度の変化しかない。
 一方で現行のNATO規格共通ハードポイント「3.M.M.J.」が全身に大量増設され、幅広いオプションの装備が可能となった。
 しかし、どう取り繕っても10年前の型落ち品を騙し騙し使っている代物のため、依然として基本性能は正式採用型には遠く及ばない。
 パーツの9割が現行規格品に変更されているので、整備性に限っては大幅に向上している。

 ・R.N.A.ライトアーマー
 試作再神経接続武装化システム。
 陸自の装甲倍力服の増加装甲、及び外部増加筋力パッケージである。
 装甲服に更に重ね着をする人工筋肉と電磁反応装甲の肉襦袢であり、その見た目は筋肉ダルマと呼ぶほかない。
 本来の構想では、人体に神経接続して追従性を高め、これを外付けのハードウェアとして兵士を完全な「対戦車/対デルタムーバー用陸戦機動人間兵器」として拡張するシステムだったようだが、技術的にも予算的にも理想には到達し得ず、また上層部の理解も得られなかった。
 開発担当者はそれを苦にして、計画を凍結した防衛省関係者に"特攻"という形で自殺、爆死。
 R.N.A.は名前すら忘れ去られた未完の欠陥兵器、もとい呪いの鎧として倉庫に封印されていた。
 今回、戦力不足を補うために限られた時間で可能な範囲のアップデートを施され、どうにか戦線投入可能な状態にまで改装再調整された。

 過大な重量を支え、かつ機動性を維持するために脚部にはメタマテリアル反作用推進を応用したスラスターを装備。
 常温超伝導のマイスナー効果との併用で、地表や水面を高速で滑走する。
 理論上の最高速度は時速80km程度だが、実際は40km程度が限界。それ以上に加速を続けると次第にバランスを失って転倒する。
 歩兵としては破格の機動性だがメタマテリアルの消費が激しく、航続距離は最大で10km程度とされる。

 腰と両肩にワイヤーアンカーを装備し、これを射出、対象に固定して巻き上げることで移動に利用する。
 ワイヤーコンテナは肩部と腰部に二基が独立して設置されている。ワイヤーの長さは各100メートル程度。

 本来は大量のミサイルランチャーやロケットランチャー等の装備が想定されており、それらの運用に必要なドライバと火器管制ソフトウェアを装甲服に追加インストールする。
 このソフトは未完成で試験運用すらされない状態で実装されたため、装甲服のバイザー越しに赤いレティクルが紋様のように浮かび上がる不具合が生じている。

 今回投入されたR.N.A.は機動性重視の軽装甲仕様であり、本来の重装甲仕様は「人間戦車」「歩行戦艦」さながらの超重装仕様が想定されている。
 開発者の遺したノートには、「痩せこけて死ぬより肥えて死ね」「トリガラよりトンコツ」「スマートよりスモー」「サイボーグの首も片手でねじ切れ」と怨念じみた書き置きがあったという。

 ・サイボークソルジャーNo.13 コキュートス
 中東の某国で改造された第三世代サイボーグ兵士、その13号機。
 某国と建国時から深い関係にあった秘密結社「暁のイルミナ」の遺した膨大な人体改造実験のデータと、1~12号機で蓄積された運用データの集大成的な改造人間である。
 改造に関しては100%現行の医学と科学によって施術されており、怪しげな魔術や解析不能のオーバーテクノロジーなどは一切使用されていない。
 生身の四肢の代わりにマシンアームとマシンレッグを取り付けられ、脊椎と脳には機械と電気的に接続するためのBMIチップが大量に埋め込まれている。
 改造後の寿命は8~10年程度で、これでも戦闘用サイボーグとしては大分長命に改良された部類である。

 戦闘時には手足を換装し、頭部も含めた全身を特殊装甲で覆う。
 背面にプラズマアークジェットの飛行ユニットを装備し、主に空中からコールドニードルとプラズマカノンによる攻撃を行う。

 オーバーブスト機能「TJMブースト」は、通常では達成困難なミッションや難敵に遭遇した場合に使用する。
 ジェットパックのバインダーから球状の小型プラズマ誘導ユニットを放出し、全身を磁場とプラズマで覆って浮揚、アフターバーナーによる強制加速で通常時の3~5倍の機動力を発揮する。
 四肢の人工筋肉もリミッターを外してパワーが数倍に跳ね上がり、速度とパワーで敵を短時間で圧倒せしめる。
 尤も、コキュートス本体に多大な負荷がかかる諸刃の剣でもある。
 最大連続使用時間は3分に満たず、それを超えると四肢とジェットパックが自壊を始める。
 尚、「TJM」とは人工筋肉のパワーブーストの基礎理論を構築したエンジニアの名前に由来している。

 身長:2.13メートル
 重量:230キログラム(ジェットパック装備時)

 武装:内蔵式プラズマカノン(プラズマソード兼用)、内臓式コールドニードルガン、伸縮式コールドソード

 ・ゴウセンカク
 巨大陸上用破魔破城重突貫戦闘機械傀儡。
 四足歩行のトリケラトプス型の機体で、長大な二本のドリルホーンと一本のパイルドライバーが最大の特徴。
 その突撃はあらゆる装甲、あらゆる妖魔を一撃で貫通破砕する。
 ドリル等の掘削装置を主武装とした角竜型戦闘機械傀儡の開発は1960年代から始まっていたが、装備自体の重量と即効性の低さから、補助的な運用に甘んじていた。
 転機が訪れたのは1990年代、禍津神との戦役が始まってからになる。
 禍津神の分身体の外殻は、強固に圧縮された岩盤――すなわちゼノリスで構成されていた。
 これを貫通するには現行の火器では威力が不十分だった。
 現代の火砲はあくまで「人間を殺傷する」「兵器を破壊する」ために作られた武器であり、「妖魔を殲滅する」ための武器ではない。
 魔を殺し、魔を壊すための純然たる対妖魔殲滅兵器が必用だったのだ。
 当時の戦闘機械傀儡開発の総指揮者は、禍津神の分身体に家族を皆殺しにされたトンネル技師をスカウト。
 彼に膨大な予算と人員を与えて、復讐の肩を押した。
「あんたの作った武器で、奥さんと子供のカタキを討ツゥェェェェェェェェッッッッッ!」
 そして人の怒りと憎しみの結晶、対妖魔絶対殲滅掘削武装「マグニーザー」が完成した。
 これはターボシャフトエンジンと内蔵モーターにより超高速で回転し、いかなる岩盤も瞬時に破砕。同時に内部の磁性体からの強電磁放射で、対象を霊的に捩じ切る超兵器であった。
 このマグニーザーを最大限に運用できる最強の筐体として開発されたのが、ゴウセンカクである。
 人の科学と怒りを受けて蘇ったトリケラトプスは、重装甲フリルと電磁シールドによる鉄壁の盾を展開し、電光石火の突撃で全てを貫いた。
 ゴウセンカクの性格は勇猛な牡牛に近く、いかなる敵に対しても臆することなく狂ったように突進する。
 一方で、気乗りがしない時は岩のように頑として動かない頑固さも持っている。

 10年前の禍津神との最終決戦では、マグニーザーの開発者自身が初号機の操者として参戦。
 彼は機体の魂との完全なシンクロを果たし、観測史上初となるゴウセンカクの形態変化現象――メディケーンモードを発動。
 狂える怒りの嵐と化した角竜は、禍津神本体の外殻を完全に粉砕。
 人と竜は命と引き換えに、勝利への道を穿ち開いたのだった。

 ゴウセンカクの建造数は57機。
 内、55機が最終決戦で大破、もしくは再起動不能となって損失した。

 全長:12.8メートル
 重量:35.1トン
 武装:マグニーザー(ドリルホーン)、パイルドライバー、75mm榴弾砲、105mmライフル砲、対妖魔二連衝撃砲、12.7mm機銃、ハイパワーE.M.S.S.(電磁シールド発生器)


 ・13式特車装輪機
 陸上自衛隊の第三世代型デルタムーバー。
 通称スモーオロチ。
 骨太の外観は相撲力士のごとき剛健さで、それに見合った重装甲と高トルクを兼ね備える。
「オロチ」の通称は、頭部の多機能センサー素子の配置パターンが蛇の目に見えること、正面から見た頭部形状が口を開いた大蛇に似ていることに由来する。
 日本の長年に渡る戦闘車両開発ノウハウと、冷戦後にいち早く研究を開始した人工筋肉技術、
 そして他国に一歩先駆けるコロニウム素子応用テクノロジーが結集された高性能機として完成した。
 パワーではアメリカ製同世代機〈DM3A1 ヘキサバレット〉に及ばないものの、トータルバランスでは互角、索敵能力と精密動作ではそれ以上と評されている。
 新型の複合装甲の採用により、見た目に反して軽量な機体に仕上がっている。
 公式記録上では「実戦未参加」とされ、日本国民にはレスキュー車両としての印象の方が強い。
 近年の大規模災害現場では出動が多く目撃され、困難な地形に侵入し多くの人命を救ってきた。

 作戦に応じて多種多様な火器を装備可能で、前年度にハードとソフト面でのアップデートを受けた機体は外部拡張自律支援車両〈ロードブースター・ウワバミ〉とドッキング可能。
 ドッキング後はAIサポートによるドローン管制、エンジン出力向上、使用火器増加、緊急離脱用ロケットブースターの使用など、多くの面で性能が向上する。

 今年度までの陸自全体での配備数は134両。
 1両あたりの調達価格は約10億円。

 全高:4.2メートル
 重量:5.5トン(本体のみ)
 武装:25mm機関砲、40mm自動てき弾銃、01式軽対戦車誘導弾、中距離多目的誘導弾改、1式携帯地対空誘導弾、11式短距離地対空誘導弾改、M2機関銃、ほかNATO規格のデルタムーバー用装備全般

 ・試製特車装輪機 DMTT-Z1 オクトオロチ
 陸自の次期第三世代型デルタムーバーの候補だった試作デルタムーバー。
 DMTT-Z1とは、試作車を分類するための防衛省内でのコード。
 開発メーカーのグループ内における複雑怪奇な社内政治の迷走によって実機まで作られたものの、政治的、倫理的問題等、もろもろの理由によりスモーオロチに敗北した。
 オクトオロチという名称も、開発主任が個人的遺恨を燃やしスモーオロチに対抗して付けた後付けの名前である。
 エンジンには日本の戦闘車両としては稀なガスタービンエンジンを採用。
 脚部は敢えて三脚とし、不安定さをトリッキーな戦闘機動に繋げた。
 装甲を極限まで削減し、人工筋肉のテンションを限界まで引き上げ、あまつさえ搭乗オペレーターに投薬処置を施して反応速度を上昇させ、「こちらが潰れる前に敵を全滅させる。あるいはこちらが潰れても敵にそれ以上の損害を与える」という一種の特攻兵器的な設計思想で開発された。
 武装は「撃たれる前に殺れ」という狂った戦闘思想により、近接攻撃に特化している。
 原子一個分の薄さのメタマテリアルブレード、装甲の弾性や特殊加工を無視して貫く脚部フレームを兼ねた単結晶ソード、腕部フレーム兼用の極低温ソード、複合装甲を易々と貫くフィンガーエッジ、機銃内蔵の貫手隠し腕など、機体そのものが刃物の塊だった。
 当然ながら、こんな狂気の産物をマトモに扱えるオベレーターは存在せず、今では開発主任が左遷された防衛装備庁小美玉分舎で、実験装備のテストベッドとして細々と運用されている。

 開発者は一方的に〈スモーオロチ〉を敵視しているが、予算の都合上その構成部品の60%は〈スモーオロチ〉と共通となっている。
「オロチ」の名の通り、こちらも頭部センサー素子の配列が蛇の目に見えるほか、正面から見た頭部形状が口を閉じた大蛇あるいは龍に似ている。

 全高:4.3メートル(アンテナ含めず)
 重量:4.7トン(本体のみ)
 武装:防盾内蔵式メタマテリアルブレード(替刃あり)、フィンガーエッジ、極低温ソード、単結晶ソード、隠し腕(7,62mm機銃内蔵)、ほかNATO規格のデルタムーバー用装備全般

 ・22式汎用自律機兵 ウリエル/アルティ
 AI制御の自律型汎用ロボット兵器。
 サイズは成人男性とほぼ同じ。
 人間と同サイズの人型であることは、人間用に作られた各種インフラ、装備を利用する上で大きなアドバンテージとなる。
 それまで人間用に作られた、世界中に溢れる全ての道具をそのまま利用可能なのだ。
 それは同時に、これまで人間がこなしてきた作業をそのまま代行できる、ということも意味している。
 彼らはテストケースとして、日本の各省庁の警備ロボットとして先行配備されることが内定している。
 ゆくゆくは警察、消防、自衛隊への大規模配備が開始される予定である。
 〈ウリエル〉は合計3機が作られた試作機で、AIの学習内容にそれぞれ個体差がある。
 〈アルティ〉は正式採用型で、性能自体は試作機と変わらない。
 顔面の存在しない無貌、即ちのっぺらぼうだが、これは顔面デザインが遅れてフェイスカバーが未完成だったことが原因。
 完成したフェイスカバーは、菩薩あるいはギリシャ彫刻のような神々しいデザインになる予定。
 その顔はあくまで飾り――要するに"偽物"である。

 身長:1.8メートル
 重量:90キログラム(本体のみ)

 武装:自由電子レーザー砲、ウリエル・クロウ、キネティック・デバイス、対妖魔除霊武装マニ・ドライブ、各種銃火器
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