ヒト・カタ・ヒト・ヒラ

さんかいきょー

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設定解説のこと2

そのに

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設定解説のこと

登場メカは10年ほど前に書いていた小説から流用しているモノもあるので、当時のイメージラフが現存していたものを掲載しています。

メカニック設定が当時とは一部異なっているので、劇中描写と一部矛盾している箇所もあります。(全高と全幅の差異、サーボモーターやハードポイントの有無等)

イラストはイメージする参考程度と思ってください。



 ・カチナ
 デイビス達一派が育成した「器」の少女。肉体年齢は14歳程度。
 ネイティブアメリカン風の衣装は偽装工作であり、実際の人種としては北アフリカ系と思われる。
 器とは、何処からか入手した新生児を一切の情報を遮断した状態で育成し、思考も精神も白紙状態のまま成長した人形同然の人間のこと。
 幼少時から黒竜の竜血を輸血され、心身が竜の容れ物として最適化されている。その過程で命を落とす者も多い。
 この「器」を憑代として、デイビス達が先祖代々崇めていた黒竜の霊体をインストールし、現世に復活させることに成功した。
 以降はカチナ=黒竜なのだが、肉体に精神が引っ張られているのか、どこか間抜けな言動が多い。
 事件の後は宮元家の関係企業に収監され、一族の生き残りのまとめ役として借金返済の日々を送っている。
 もはや竜としての威厳は欠片もない。


 ・クローリク・タジマ
 16歳、女子高生。
 祖父が日本人で、ロシア人とのクォーター。
 私立宮本学院の生徒で、瀬織をライバル視している。
 容姿、運動神経、学力ともに優れた自尊心の高い少女で、自らの優れた才覚で弱い人々を導く使命感と正義感を抱いている。
 趣味はUFO、UMA、オカルト、陰謀論などの研究。オカルト誌「レムリア」などを小学生の頃から購読している。
 祖父は人工筋肉の基礎理論を構築した高名な科学者、但馬健吾。


 ・右大鏡花
 23歳、独身。
 園衛の秘書を務める女性。
 一見するとクールで知的な印象があるが、経験不足のため想定外の事態には取り乱しがち。
 宮元家と同格の宗家の一つ、右大家の分家の出身。
 中学時代に肉親である姉を亡くし、その夫である義兄も失踪してからは天涯孤独の身。
 高校時代はかなり荒れた生活を送っていたが、園衛によって更生。経済援助を受けて大学に進学した経緯があり、園衛には深い恩義を感じている


 ・西本庄篝
 25歳、独身。
 園衛の家で働いている女中だが工学系の知識があり、空繰や戦闘機械傀儡の整備が出来る。
 園衛とは10年来の付き合いで、工学部を卒業後に「仕事にロマンを感じない」と言い訳して就職先を決めなかったため、見かねた園衛が屋敷で雇うことにした。
 人見知りがちな性格で、初対面の相手には萎縮することが多い。
 何の精神耐性も激情もない一般人のため、瀬織の精神汚染を受けて心酔。以後は瀬織を「お嬢様」と呼んで崇拝している。
 学生時代はコスプレが趣味で、今も自宅に衣装を隠している。
 神喰澪とは中学の同期であり、今も友人関係。


 ・神喰澪
 25歳、独身女性。職業プロボウラー。
「ゴッドストライカー澪」の異名を持つ日本代表の世界ボウラー。
 性格は冷静沈着。
 スマホの電源をいつも落としているので滅多に連絡がつかない。
 中学時代は園衛の配下として、ボウリング技で妖魔と戦っていた。
 現在はプロとして、国際色豊かな世界の怪人ボウラーたちと日夜ボウリングバトルを繰り広げつつ、行方不明の兄を探している。
 その合間に、宮元学院のボウリング部の臨時コーチとして生徒たちを指導することもある。
 なお、ボウリング業界は独特の世界観が構築された一種の異世界である。
 西本庄篝とは中学の同期であり、今も友人関係。



1.ジゾライド

巨大陸上用重突撃戦闘機械傀儡。

直立二足歩行のティラノサウルス復元図を模した機体。

40年以上に渡る無敵時代を築いた伝説的機種であり、戦闘機械傀儡の象徴的存在でもある。

試作機は大戦の終戦時に秘匿されていた、旧日本軍の一式中戦車のエンジンを流用していた。

正式採用型への仕様変更に際して、装甲部材の変更、及びエンジンをM4中戦車と同型のガソリンエンジンの搭載が行われた。

この初期型はスターティングハンドルでエンジンを始動する。

魔術的カラクリ人形を現代科学で強化し、尚且つ恐竜の怨念を封入するという革新的もとい狂人めいた設計思想は比類なき戦闘能力に繋がり、地上に存在する全ての妖魔は尽く粉砕された。

一見すると鈍重な鉄の塊に見えるが、音速を超える瞬発力と野生動物の反応速度によって驚異的な運動性能を誇る。



ティラノサウルスの闘争本能はいかなる強敵を前にしても一歩も退かない戦意に満ち溢れていたが、その荒々しい精神構造とのリンクは操者に多大な負担をかけるものであり、適性のない人間が操作すれば最悪、発狂する危険性も孕んでいる。



1950~60年代の日本の交通インフラでは輸送に手間取る場面も多く、時には61式戦車用の貨車を用いた列車輸送も行われた。

それを偶然目撃した一般人や自衛隊員によって、「恐竜が列車で運ばれている」といった噂が流れ、やがて奇妙な都市伝説が形成されていくことになった。

漢字表記では〈地象雷怒〉と書く。

全高:5.1メートル

重量:22.8トン

武装:7.62mm機関銃、12.7mm機関銃、60mm迫撃砲、スーパーバズーカ(M20A1)、チタニウムプレッシャークロー、タングステンファング、打突用フィンブレード(背ビレ)




2.ジゾライド改

改巨大陸上用重突撃戦闘機械傀儡。

ジゾライドに徹底的な近代改修を施した機体。

長きに渡ったジゾライド無敵時代も90年代初頭に終焉を迎えた。

かねてより存在が予測されていたものの、実在を疑われていた破滅の概念結晶体〈禍津神〉。その分身体との戦いで、ジゾライドは大破。

続く雲仙岳付近での会戦で、西日本一帯からかき集められた戦闘機械傀儡部隊が壊滅的打撃を被り、〈禍津神〉は撃退したものの、関係者一同には戦慄が走った。

次に〈禍津神〉の分身体が出現すれば、全面敗北は免れない。そして最悪の場合、日本全土が破局を迎える。

この危機的状況に際し、左大千一郎はかねてより温めていた〈改・戦闘機械傀儡計画〉案を提出。

政府、自衛隊、軍需産業を抱き込んでの近代改修計画が開始された。



ジゾライドは改修にあたって、主機をガソリンエンジンからターボシャフトエンジンに変更。駆動系には当時まだ自衛隊にも採用されいなかった人工筋肉を使用した。これによりパワーは従来機の10倍を超え、大型火砲の牽引も可能なペイロードを獲得した。

電装系も一新され、頭部にはIRセンサーを搭載した。

装甲も更に重装甲化され、本体重量も30トンを超えた。

近代改修後のジゾライドは超絶的戦闘力を発揮し、緒戦において〈禍津神〉の分身体を瞬時に破壊する活躍を見せた。



0年代半ば頃には電子機器と人工筋肉のアップデートが行われ、AIの火器管制と霊的バイオリズムの統制により、困難だった操縦も比較的容易となった。

対禍津神用の切削殲滅装置チェインマグニーザーは、ドリル型マグニーザーが電磁波によって横方向に対象を霊的捩じ切るのに対し、縦方向に霊体を捩じ切り同時に物理的に切削する超兵器である。



ごく稀に、激戦地において全身が炎と化す不可思議な事象が数回観測されたが、これは想定外の機能であり、戦場での観測機器の不足もあって詳細な解析は最後まで行われなかった。

フロギストンモードと呼称されるこの炎上形態は、実状として機能中枢である勾玉がティラノサウルスの怨念の力を渇望する願いに呼応して、虚数次元から無尽蔵のエネルギーを取り出している。

無限に等しい熱量を物理法則を無視して取り出し、遥かな過去にブラックホールを超えて虚数次元に飲み込まれた情報が質量として放出される。

この激しい物理的矛盾を修正するために、虚数次元に繋がる穴は対称性微粒子を放出しつつ、ジゾライドごと全てを次元の向こう側に引き戻そうとする。

ジゾライドは無限大の熱量でそれに抗い、強大な重力と熱の奔流が発生するわけだが、このカラクリに人類が気付くことは恐らくない。

仮に人類が全ての仕組みを理解すれば、ジゾライドは宇宙的災厄とも渡り合える別次元のスーパーロボットとして生まれ変わるだろう。



ジゾライドの総生産数は224機。

〈禍津神〉との最終決戦、戦場ヶ原最終戦において219機が大破、損失した。



2010年代初頭には装甲を複合装甲に換装して軽量化。搭載火砲を105mmライフル砲塔に変更した次世代改修タイプ〈改二重戦闘機械傀儡計画〉が存在したが、戦役の終了に伴い試作機の制作のみで終わっている。

試作機については廃棄された、と書類上に記録されている。





全高:5.1メートル

本体重量:32.6トン

武装:155mm榴弾砲、35mm機関砲(ロケット弾ポッドと選択式)、ロケット弾ポッド、95式複合防盾システム改(40mmグレネードランチャー×4、12.7mm機銃内蔵。グレネードランチャーは対妖魔四連衝撃砲と選択式)、チタニウムプレッシャークロー、エレクトロンクラッシャーファング、打突用タングステンフィンブレード、特殊兵装コンテナ(チェインマグニーザー、ダブルパイルドライバー、トライヘッドスクリューの選択式)



3.雷王牙

高速機動戦闘支援型空繰。

宮元園衛が現役時代に使役していた狛犬型の空繰。

ベースは江戸時代に作られた空繰で、当時から高い評価を得ていた。

だが製作者がその功績の全てを工房の師匠に奪われたことから発狂して自害。その怨念を受けた雷王牙は師匠を殺害して、山中に消えた。

以降は数百年間、野良空繰として山野を彷徨っていたが、高校時代の園衛によって説得され、彼女に付き従うことになった。

回収後は戦闘機械傀儡の技術で近代改修が施され、90%のパーツが現代のものに置き換えられている。

高い機動力と運動能力を活かした高速戦闘と、武装運搬などの支援を主な任務としている。

頭部の三本の角は電位操作の機能を持ち、外部からの電力供給があれば電撃の照射や、マイクロ波による電力中継とエネルギー補給が可能。

発声機能はないが自らの意思を持ち、自律行動する。性格は人に優しく、魔に厳しい。



宮元園衛用の対妖魔刀剣〈十武剣〉の内の5本と、五式大目牙巨砲、重エレクトロンクロー、エレクトロンレーザーブレード等の武装をフル装備した重武形態への換装が可能。



全長:2.5メートル(尻尾含まず)

本隊重量:310キログラム

武装:エレクトロンクロー、チタニウムファング、マルチディスチャージャー、ワイヤーアンカー、E.M.S.S.(電磁シールド発生機)、エレクトロンレーザーブレード、五式大目牙巨砲、対妖魔三連衝撃砲、重エレクトロンクロー、エレクトロン・コライダー



4.綾鞍馬


飛行機動戦闘支援空繰。

宮元園衛が現役時代に使役していた鴉天狗型の空繰。

ベースは江戸時代に作られた空繰で、当時から高い評価を得ていた。

以後の経緯は雷王牙と同じで、自らの意思で園衛に仕えている。

近代改修に際して小型のジェットエンジンを搭載し、高速での空中戦が可能となった。

飛行能力を活かしての偵察や追跡、武装運搬が主な任務。



宮元園衛用の対妖魔刀剣〈十武剣〉の内の5本と、三式破星種子島、エレクトロンレーザーカターナ、ロケット弾ポッド、マニューバスラスター等の武装をフル装備した重武形態への換装が可能。



改修後に雷王牙との合体機能が追加されているが、これは戦闘用のものではなく、ある高機能戦闘支援用の機能である。



全高:1.6メートル

全幅:4.8メートル

武装:対魔錫杖・激発杵(ニードルガン内蔵)、三式破星種子島、ゴーストフレアディスペンサー、5.56mm機銃、ロケット弾ポッド、エレクトロンレーザーカターナ、エレクトロン・コライダ


5.マガツチ改

軽機動電子戦戦闘機械傀儡。

荒神との戦闘で中破したマガツチを全面改装したサソリ型の機体。

中破の主たる原因は戦闘による損傷ではなく、瀬織の能力に追随できなかったマガツチ自体の脆弱性にあった。

よって、瀬織の機能拡張装置としての最適化、及び直接戦闘を避けて可能な限り機体への物理的負担を軽減する電子戦機への再設計が行われた。

動力源は安定性の高いセラミック系の全個体電池へと変更され、交換も容易となっている。

発声機能も追加され、瀬織との円滑なコミュニケーション、音声サポートが可能となった。



小型化された電子戦能力の大半は瀬織の神としての魔力に依存しており、マガツチ改単体での電子戦能力は極めて貧弱。この機体は、あくまで瀬織の機能拡張装置なのである。



背中の天鬼輪には八つの疑似人格人工知能の勾玉が格納されている。

勾玉の一つ一つが瀬織の人格と頭脳のコピーであり、単純計算で演算能力を八倍に引き上げる。

瀬織自身、かつては荒神として無数の分身体を産み落とし、それらと精神リンクを行っていた経験があるため、「自分自身が複数存在する」という常人なら耐えがたいパラドックスにもなんら問題なく適応している。

天鬼輪は外縁部に常温超伝導素子が埋め込まれ、簡易加速器としての機能を持つ。

これを瀬織は方術によって機能拡張することで一種の粒子加速器として転用しているようだが、詳細の解析には時間を要する模様。



全長:2.5メートル(尾を含まず)

本隊重量:220キログラム

武装:掘削用マニピュレーター(ハサミ)、ワイヤーアンカー×12、チタン鋼扇・裏敷島×2


 東瀬織と〈マガツチ改〉が合体した戦斗形態。
 抱えていた不具合は全て改善されている。


6.ウェンディゴ

テクノ・ゴーレムと呼称される戦闘機械傀儡のデッドコピーの一種。

ゴリラに近い外観をしているが、封入されているのはネイティブアメリカンの伝承に語られる不定形の悪霊である。

欧米の魔術結社向けに兵器の販売や人材派遣を行っているブローカーが手配した機体で、設計等は外注業者に丸投げしている。

その外注業者も機体の基礎設計は過去に怪しげなルートから入手したものらしく、起源はハッキリしない。

一説によると、1970年代に酷似した機体が日本で目撃されている。

その機体は左大家及びジゾライドに恨みを持つ錬金術師が製造したものらしく、北海道の氷原地帯でジゾライドと互角の名勝負を繰り広げたという。

その機体の設計図が巡り巡って三流の下請け業者に流れ着き、著しく劣化したデッドコピーに成り果てたのが、このウェンディゴなのかも知れない。



製造はルーマニアの密造兵器工場が担当。

エンジンは重機用ディーゼルエンジン。関節は油圧駆動。主砲は中古市場にあり余っていたM81ガンランチャー。

装甲や各部品の工作精度も極めて低い、手抜きのような兵器である。



余談だが、ほぼ同一のデザインのモーター駆動玩具が80年代に東欧諸国でのみ流通していた。



全高:4.8メートル

重量:12.6トン

武装:M81ガンランチャー



7.ウェンディゴMk.2

最初に作られたウェンディゴの試作タイプの二号機。赤いカラーリングで彩られている。

顧客へのプレゼン用に用意された機体で、採算度外視の豪華な仕様となっている。

エンジンはガスタービンエンジン、関節は人工筋肉駆動、レーダーを搭載し、最新型の武装を惜しげもなく装備している。

性能は戦闘機械傀儡にも見劣りせず、原型機に最も近い機体と言える。

顧客には、短期決戦用の局地戦限定型と説明されていた。



全高:4.8メートル

重量:18.8トン

武装:TOW対戦車ミサイル、ヘルファイヤ対戦車ミサイル、グレネードランチャー、12.7mm機銃、打突用ナックルガード



8.ズライグ・ブラック

黒竜の霊体のコピーが封入されたワイバーン型テクノゴーレム。

二対のターボシャフトエンジンとプロップローターを用いた飛行が可能な大型機であり、調達費用はウェンディゴの約20倍に上る。

数値上は揚力不足で浮き上がることすら不可能なはずだが、不足分を魔術で補うことで兵器として成立している。

ジゾライドを頭上から一方的に攻撃するためのガンシップ的な機体であり、全身に火砲を装備している。

同機種のズライグ・ホワイトはカラーリングが異なるだけで性能に差異はない。



全高:4.7メートル

全幅:14.9メートル

重量:22.22トン

武装:20mmバルカン砲、グレネードランチャー、ロケット弾ポッド、対人ショックパルス、打突用クロー、キラーディスク(電磁破砕刃)

 9.ウェンディゴMk.1
 最初に作られたウェンディゴの試作1号機。
 顧客へのプレゼン用に製作されたもので、高い工作精度と高級部材が使用されている。
 黒とオレンジのカラーリングが特徴。
 武装や電子装備以外はMk.2と共通仕様となっている。
 量産型より軽量なのは、駆動系に人工筋肉を使用しているため。

 全高:4.8メートル

 重量:10.2トン

 武装:M82ガンランチャー、打突用ナックルガード

 10.祇園神楽
 汎用作業用空繰。
 宮元家旗下の退妖魔組織に広く普及していた汎用空繰。
 一部外装と腕部、脚部を換装することで、輸送作業や土木作業、軽戦闘、要人警護などに使用されていた。
 元は戦前から使用されていた軽戦闘空繰〈風神楽〉の後継機として開発されたものだが、戦闘機械傀儡が主流となったことで計画は白紙にされてしまった経緯がある。
 製造に関わった工房の関係者はこの処置に大きな不満を抱き、戦闘機械傀儡を推す左大千一郎の派閥との抗争の火種になった。
 結果的に作業用として正式採用することで騒動は手打ちとなり、祇園神楽は非戦闘用としては最大の普及空繰となる。
 戦役後も残存機は多く、宮元家の関係者の中には警備用や、家庭内での大工仕事等に利用する者も少なくない。
 動力はハイパワーゼンマイ。軽作業なら最大3時間の連続稼働が可能。
 このゼンマイの生産ラインも既に閉鎖されており、代替に用いた海外メーカー製大型ゼンマイではまるでパワーが足りず、動作不良を起こすことが確認されている。
 電気モーター駆動への改装計画も存在したが、配備数が膨大なために予算の都合がつかず、頓挫している。

 全高:1.8メートル

 本体重量:90キログラム

 武装:打突用手甲爪(戦闘用腕部のみ)

 11.烈震
 超重装甲要塞型空繰。
 巨大な玄武型の機体で、現存する空繰では最重量の巨体を誇っていた。
 分厚い鋼鉄の装甲の質量そのものが武器であり、烈震と対峙すれば、いかなる妖魔も成す術なく踏み潰されていった。
 だが、烈震は左大派と旧体制派との抗争時にジゾライドとの交戦で大破、
 その後は左大派に転向した操者の意向を汲み、戦闘機械傀儡の技術でアーケロン型空繰への改装が施された。
 更に90年代に入って近代改修を受け、ジゾライドに匹敵する戦闘能力を獲得。
 主に防御戦闘で威力を発揮した。
 禍津神との戦場ヶ原最終戦においては、砲撃及び対妖魔電子戦を担当するステゴサウルス型戦闘機械傀儡〈ケンザン改〉が集中配置された後方陣地を守っていたが、防衛ラインを突破した敵分身体集団に対する最終防衛線として仁王立ち。
 〈ケンザン改〉部隊を守る形で大破。操者と共に全ての役目を終えた。

 なお、空繰として開発された機体は近代改修後も戦闘機械傀儡扱いはされない。
 アーケロン型空繰となった烈震は水中戦能力と、ロケット噴射とジャイロ効果による多少の飛行能力を獲得していた。

 ・五方央について
 私立宮本学院に数十年前から伝わるエリート生徒の選抜制度。
 東西南北中央の五人が全生徒から選ばれ、学院の頂点に君臨する。
 メンバーは流動的で、不適格と見なされたメンバーは除名される。
 本来は宮元学院が対妖魔戦闘員の育成機関だった頃に、互いを切磋琢磨させて強い兵士を育てるための制度だった。
 しかし、しだいに生徒間の競争は過激化し、五方央は権力を私物化する支配層となり、学内は不信と憎悪の蔓延する抗争の場に変わり果てていた。
 この状況に激怒したのが、中学時代の宮元園衛だった。
「お前たちは戦う相手を間違えとるようだなぁ~?」
 本来の敵である妖魔との戦いを忘れ、同胞である人間同士の内ゲバに興じる生徒たちへの鉄拳制裁が開始された。
 口で言って分からないケダモノ同然のアホなのだから、拳で分からせてやるしかないのである。
 ある者は半殺しにして全裸に剥いて橋に吊るして説得した。
 ある者は頑なに考えを変えないイキの良い頑固者だったので、三日ほど真冬の滝に放置して説得した。
 ある者は手足の骨を粉砕骨折させた上、園衛が病院に毎日「お見舞い」に行って説得した。
 病院から自宅に逃げたので、毎日お宅に「お見舞い」に行って説得して、学校に来なくなった。
 ある者は海外に逃げようとしたので、飛行機から引きずりおろして説得した。
 ある者は園衛の執拗な説得で精神に変調をきたして、閉鎖病棟に入院した。
「なんだぁ~? あれだけ威勢が良かったくせに、お前ら打たれ弱すぎだろッ!」
 園衛は五方央の軟弱な実態に憤慨した。
 結局、彼らのやっていたのは学内でのマウント合戦のオママゴトでしかなく、過酷な実戦への耐性は全く持ち合わせていなかったのである。
 こうして五方央は瓦解し、宮元学院はマトモな学校に生まれ変わった──のだが、
 園衛の卒業後に五方央はひっそりと復活し、生徒会の延長のような秘密結社として、ささやかに活動を続けている。


・恐竜酔拳について

恐竜愛狂家、左大億三郎が編み出した謎の拳法。

気功で言う内功の一種と酔いによる脳のリミッター解除を併用しているのだが、並の人間が真似をすると急性アルコール中毒で命に関わる。

技自体も拳法なのか疑わしいモノが多く、動画配信では視聴者からのツッコミが絶えない。

以下はその一例



恐竜酔拳・アロファイヤー

アロサウルスの火炎放射を再現した技。

両手の裾にエチルアルコールの瓶を仕込み、それを振ると同時にライターで発火。手から火炎放射を放つ。

拳法以前に「アロサウルスが火炎放射するワケねーだろ!」という視聴者からの怒涛の指摘が殺到。

それについて左大は

「アロサウルスが火炎放射しないって証拠あるんですかぁー! 俺の中ではよーー! アロサウルスは手から火ィ出すんだよ火ィ!」

と悪魔の証明を突き付けた。

そして実演動画で山火事を起こして警察沙汰となり、動画は文字通り炎上した。



恐竜酔拳・スピノスカラー

スピノサウルスの毒電波攻撃を再現した技。

流言飛語やイヤガラセで相手の精神を弱らせた後、「全ての原因は電磁波」と吹き込むことで精神を完全に破壊する。

そもそもスピノサウルスが電波など出すワケがないのだが、左大はいつもの調子で一切のツッコミを許さなかった。

実演動画ではゴミの不法投棄や騒音で有名な近所の迷惑ジジイに対して実行。

三ヶ月に渡る毒電波攻撃で見事ジジイを病院送りにして、その有効性を証明した。

これは視聴者による通報で警察沙汰となり、動画は炎上した。


・三式破星種子島について

対妖魔二連装長銃。

自衛隊から供与された対物ライフルと7.62mm機銃をベースに改造された装備だが、重量過多により人間が携行することは困難。

主に腕のある空繰が使用していたが、ごく一部の特異能力者が使用した例もある。

これを小型、軽量化した後継銃の四式破星種子島は園衛も愛用していた。

アドオン式のグレネードランチャー、銃剣、レーザーポインター等を装着可能だが、ゴツい見栄えに対して使い勝手は悪い模様。


・天地荒御霊について

空繰や戦闘機械傀儡の中枢回路にあたる勾玉。

島根県の一部でのみ産出される鉱物を加工して製造される。

古代から一種の経験則で使用されてきたが、近代に入って科学的な解析が進み、人間の脳波を内部で電荷に変換する機能があることが判明した。

これを応用して高性能な半導体素子〈コロニウム素子〉が開発され、電子機器の性能は飛躍的に向上した。

技術的に近しい特性を持つ複製品を作ることは出来るが、勾玉の原料である鉱石の鉱床は現在においても地球上で島根県のみである。

鉱床の存在する土地は宮元家が所有しており、その採掘権を貸与することで莫大な利益を得ている。



・禍津神について

全ての生物が生きる上で必ず享受する運命、死や破滅の概念が形を得た存在。

地球上で生物が神経や脳といった器官を得て何億年もの月日が流れた。

虫や両生類といった下等な生物でも、外敵には怒り、死に瀕した時には恐怖する。

そういった感情の微細な電気信号は死と共にバラバラに霧散しても消滅したわけではない。

形を変えて、重力に引かれて地中に沈み、岩盤や鉱石の中に蓄積していた。

無論、分解された電気信号そのものに意味はない。

だが、何らかの力場が働いて、それらが集束したとしたら?

虚空に揺蕩う幽霊や妖魔のように、電気信号が残留思念として復元されたら、それは純粋な「滅び」の具現化なのではないか。

ある妖魔研究者の、そんな推論は取るに足らぬ妄言として黙殺され、忘れ去られていった。

それから約50年後の1990年代初頭、妄言は現実となって姿を現した。

高度に発展した人類の電気依存の文明が電磁場の揺らぎを引き起こし、それが地殻変動で放出される地中の電磁波と共振して、深く埋没していた「滅び」と「死」の概念を実体化させた。

太古に滅んだ絶滅動物と根源的恐怖のキメラめいた巨大妖魔として禍津神が出現した。

その戦闘能力は分身体ですらジゾライドと互角。

分身が通り過ぎた後には濃厚な死の因果律が支配し、草木は枯れ、火山が噴火し、洪水が起こり、疫病が蔓延した。

目に見えぬ滅びは乳児や老人の死亡率を上げ、出生率が極度に低下。

経済は落ち込み、人心も荒み始めた。

禍津神の本格的な出現は日本の、ひいては全世界の破滅に繋がる。

この破滅の概念存在に対して人類は英知を結集して対抗。

20年に渡る戦いの果てに、戦場ヶ原の結界場にて強制実体化を行い、物理構造を得た巨大な禍津神を完全に撃破した。

その戦役の最後の五年間が、若き日の宮元園衛が戦った時代である。


・タジマ式人工筋肉について

この世界で最も普及している高分子アクチュエータ―。

断裂しても分子レベルの凹凸面に修復液を充填することで瞬時に自己修復が出来るのが特徴で、持続性と耐久性が非常に高い。



当初はソ連が山岳地帯での戦闘に際し、広い仰俯角を取れる有関節兵器を欲したことから開発がすすめられていた。

その後、有関節兵器は原発作業用の重機として計画変更されるも頓挫。更なる紆余曲折の果てに、ソ連末期に人工筋肉駆動の有関節装輪装甲車〈PBM-91〉として完成する。

情報の錯綜により、この〈PBM-91〉を「核攻撃後の強襲制圧を目的とした、耐放射線防御を施された機動兵器」と誤認したアメリカも同種の対抗兵器を急ピッチで開発したことで、皮肉にも人工筋肉の研究は飛躍的に進歩した。

現在、この有関節装輪装甲車の類はアメリカの開発した対抗機種〈DM-1A〉に因んで、一般的にデルタムーバーと呼ばれている。

デルタムーバーは90年代以降の低強度紛争や市街戦において活躍している。




・この世界で最もポピュラーな、ロシア製デルタムーバー〈PBM-91S〉通称パウークS。

〈PBM-91〉通称パウークの頭部を小型艦船用の近接防空システムと共通コンポ―ネント化した改良型。

海外の紛争地域を報じるニュースには必ずといって良いほど映っており、一般市民が真っ先に連想するデルタムーバーはこの機種ということが多い。

デルタムーバーとは一般的に全高約4メートル、重量5トン程度の有関節装輪装甲車である。


軍事面ではタジマ式人工筋肉は広く普及しており、先進国軍隊の戦車には整備用の倍力服が常備されているほど。

陸上自衛隊には、〈11式作業倍力服〉〈11式化学防護倍力服〉〈13式装甲倍力服〉などが配備されている。

これら倍力服はセンセーショナルな見た目もあってか、「正式採用前に自衛隊の特殊部隊が極秘運用していた」「倍力服を着た怪人が怪物と戦っている」等の奇妙な陰謀論、都市伝説まで生み出している。

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