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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第四十九幕 自害と帰宅

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 気絶させた三人の身元を調べるため、持っている物を全て押収した。

「外套、短剣、煙球か。それらしい物はないな」
「死体も調べたけど、手がかりになりそうな物はなかったわ。ただ……」
「ただ、なんだ?」
「粉々になった通信結晶を見つけたわ」
「俺たちとの戦闘で壊れたのか」
「そんな感じじゃないわね。もしも負けた時のために壊しておいたみたい」
「徹底した秘密主義だな」
「ほんとそうね」
「さて、それじゃ気絶した三人から情報を聞きだすとするか」
 そう言って千夜は縄で縛った三人を起こす。

「ん……んん……はっ!」
「よう、起きたか」
「………殺せ」
「別にそれは構わないが、知っている事を全て吐いたらの話だ」
「俺たちはなにも答えはしない。拷問されようが犯されようがな」
「そのようだな。お前たちが寝ている間に体を調べさせて貰った。そうとう拷問の訓練を受けたようだな」
「だったら――」
「だが、情報を聞き出す方法は拷問だけではない。魔法やスキル色々ある」
「そんなの聞いたことがない」
「だろうな。なら試してみるか?」
「………」
 挑発的な物言いに捕らえられた三人は無言で睨むしか無かった。

「そう、睨むな。トカイ、オルマ、チサ」
「「「っ!」」」
 千夜が呟いた名前に三人は目を見開けた。

「これが相手の心を読む力の一つだ。理解できたか?」
「そのようだ。だったら俺たちは自害する」
「縛られた状態で何が出来るのよ」
「舌を噛み切ろうとしたって無駄ですよ。無理やりにでも阻止しますので」
 そんなエリーゼとエルザの言葉に三人は笑みを零す。

「チッ!」
 千夜は急いで目の前の女の口を無理やり開かせた。

「だ、旦那様!」
 流石のエリーゼたちも驚いたのが目を見開ける。

「流石の旦那様でも女性に乱暴は許さないわよ」
 殺すのは良くて乱暴は駄目という変な考え方に疑問を感じた千夜だが、今はそれど頃ではなかった。

「やられた……」
「旦那様?」
「こいつら口の中に毒を仕込んでいたんだ」
「そんな……」
「既に死んでいる事から考えて即効性の毒だな。そんな物どこで手に入れたのか調べれば解るかもしれないが、無駄だろうな」
 結局千夜たちは手がかりを手に入れる事は出来なかった。
 魔物の死体と一緒に24人の死体も火葬した。
 無事に依頼は達成したが、手がかりを失ったことのほうが大きかった千夜たちの帰路は少し重たい空気が流れていた。

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「で、結局どうなったのだ。時間から考えて既に戦闘が終わっていてもいい時間帯だ」
「連絡がない事から全滅したと考えるべきだろう」
「糞がっ!」
 フランの推測にラロスはテーブルに置かれたティーカップを払い飛ばす。

「お前の部下には役立たずしかいないのか! たった6名の標的も仕留められないとはな!」
「苛立つのは解るが、我が組織を侮辱するのだけはやめろ」
「なんだっ!」
 鉄仮面の奥から鋭い視線がラロスを睨み殺そうとする。その威圧にラロスは言葉を飲み込んだ。

「俺の部下は優秀な奴らだった。ただ相手でそれ以上に強かったというだけの話だ」
「だったらどうするんだ!」
「まだ手はある」
「本当か!」
「ああ。この領地に入ったことを後悔させられる程にはな」
「そうか、それを聞いて安心したぞ」
 フランの言葉に笑みが零れる。

「それよりお前は奴らが帰ってきた時のために依頼金を用意しておくんだな」
「そんなの適当な理由で拒否してやる。誰があんな奴らに払うものか!」
「そうか。なら好きにすればいい。ルイラ村を救った英雄にいちゃもん付けて依頼金を払わなかった領主代理という噂が流れることを恐れないのだったらな」
「チッ!」
「今後のためにも少しは出費も覚悟しておけ。それが未来に繋がる事もある」
「お前に言われる筋合いはない。用が済んだのならさっさと出て行け!」
「そうせて貰う」
 そう言ってフランは領主邸を後にした。

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 次の日の夕方、千夜たちは依頼を終えて都市ルーセントに戻ってきた。
 昨日の出来事は終わったことだと切り替え、そのまま宿へと向かった。
 ここ数週間魔物の群れとの戦闘で流石に疲れが見え隠れしていた。ウィルにいたっては限界を超えたのか千夜の背中で寝息を立てていた。

「旦那様、この後はどうするの?」
「俺はウィルをベットに寝かせたらお風呂に行くつもりだ」
「そう、なら私たちは先にお風呂に行かせて貰うわ」
「ああ、解った」
 宿屋1階で別れた千夜はウィルを部屋のベットで寝かせるとそのまま風呂場へと向かった。
 夕食を食べ終え、明日の予定を話し合う。

「明日はまず領主邸に行って依頼達成の報告に行ったのにギルドに向かって魔核を買い取って貰おう」
「そうね。で、その後はどうするの?」
「流石に依頼をするにはウィルには辛いだろうから明日は休みとする」
「最近依頼、休みの繰り返しね」
「普通冒険者はそうなんだがな」
「帝都での生活に慣れすぎていたわね」
「それもあるな。さて、俺はベルグに中間報告の手紙を書いたら寝るとしよう」
「私たちは先に寝かせて貰うわ」
 そう言ってエリーゼたちはそれぞれのベットに横になるのだった。 
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