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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第四十一幕 呼び出しとラロス・エドワード
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ぐっすりと長時間寝た千夜たちは、それぞれ自由行動をする。
ミレーネとクロエは雑貨屋に向かい、エリーゼとエルザは珍しいものが無いか市場に向かった。千夜とウィルはギルドの裏手にある訓練所で訓練に励んでいた。宿屋の庭では訓練にも限度があるためだ。
各々が好きなことをして気分転換になった事は間違いないだろう。特にウィルはゴブリンとの戦闘でレベルが少し上がった事もありやる気に満ち溢れていた。
それに付き合う千夜もまた熱心なウィルの姿に笑みが零れる。しかし、有名冒険者パーティーが訓練しているとなれば直ぐに噂になる。気がつけば沢山の見物人が観客席に座っていた。その視線には好奇心や憧れ、分析など様々だが、中には落胆した視線もあった。
今回の訓練はウィルのスキルレベルアップが目的だ。そのため千夜やエリーゼたち目的で着ていた冒険者も居ただろう。そういった冒険者は直ぐに出て行く者も何人か居た。が、きっと落胆の意味はウィルの力思いのほか低いと感じたからだろう。だが、その考えは正解であり、間違いだ。
確かにウィルは千夜たちに比べたら弱い。足元にも及ばないだろう。だがウィルの実力はBランクの上位に近づいていると言ってもいい。しかし訓練の相手が千夜であるため傍から見れば弱く感じるのだろう。
そんなこんなでお昼休憩を挟んでからも2時間みっちりと訓練した千夜とウィルは早めに切り上げ宿屋に戻る。
宿屋に戻れば既にエリーゼたちは戻ってきており、寛いでいた。
「お帰りなさい。旦那様、ウィル」
「ただいま」
「ただいま戻りました」
その後他愛も無い話で時間を潰して、一日を終えた。
次の日、朝食を終えギルドに赴くと先日と似た光景が広がっており、ギルドの前に集まる人々。その中心には一台の馬車と数人の護衛が立っていた。
しかし千夜たちは気にする様子もなく人ごみを掻き分けギルドの中に入る。すると一斉に沢山の視線が千夜たちに集中する。
一瞬何事かと思ったがギルドの中心に立つ清潔感漂う執事服を着た中年の男性と三人の護衛が立っていた。
「センさん……」
「アミーおはよう。で、これはなんの騒ぎだ?」
「そ、それがですね――」
「それについては私目がご説明させていただきます」
アミーに説明を求めようとしたが、その言葉を遮るように執事服を着た中年男性が千夜に近づく。
「あんたは?」
「お初にお目にかかります。私はこのルーセント領領主代理をされております。ラロス・エドワード様の身のお世話をしております。執事のサイムと申します」
((((((来た!))))))
サイムの言葉に千夜たち全員の気持ちが同調する。
「俺は冒険者のセンだ。で、こっちが妻の――」
「エリーと申します」
「ミーネです」
「クーエです」
「ルーザです」
「ウィルと言います」
一人一人が挨拶をする。
「それで、俺たちに用でも?」
「はい。先日のゴブリン軍団の討伐を耳にしたエドワード様が大変貴方方に興味を持たれまして是非、会ってみたいとの事で、こうしてお迎えにあがった次第にございます」
「なるほどな」
「ですので大変申し訳ございませんが着ていただけるでしょうか?」
「ああ、問題ない」
「有難う御座います。では外に馬車を用意して下りますのでそちらにお乗りください」
千夜たちはサイムの指示で馬車に乗り込む。
馬車に揺られること数分、何事もなく到着した千夜たちは領主邸へと足を踏み入れた。
サイムの案内で応接室に通された千夜たちは高級なソファーに座り、出された紅茶と茶菓子を堪能する。
(紅茶とお菓子に毒や睡眠薬は入っていないようだな)
危険が無いか調べた千夜は茶菓子を口に含み数度咀嚼してから紅茶で流し込む。
(ここがエリーゼとウィルが住んでいた家か。なんと言うか温かみが無い家だな)
そんな事を思いながら再び紅茶を口にする。
数分して扉がノックされる音が聞こえる。
「皆様お待たせしました。エドワード様が参られます」
サイムの言葉に千夜たちはソファーから立ち上がる。
「いや、遅れてしまい申し訳ない」
「いえ、お気になさらずに」
中に入ってきた一人の男。質素でも豪華でもない中間位の服来た細身の男。見た目からして30代後半といったところだろう。
(この男が代官。どうみても私利私欲を肥やすタイプには見えないが)
内心そんな事を思いながらもラロスとの会話を続ける。
「さあ、座りたまえ」
ラロスが座り座るよう促された千夜たちはソファーにすわる。
「それで、私たちを呼んだ理由は?」
「単刀直入だね」
「生憎と世間話は苦手でして」
「そうなのか。ま、君たちは呼んだのは他でもない。先日のゴブリン軍団討伐件だ。その事でどうしても感謝を伝えたくてね」
「その言葉だけで十分です」
「そう言って貰えると助かるよ。これは言い訳でしか無いが生憎と私は多忙な身でね。色々とする事が多くて全てに手が回らないんだ。そのせいでルイラ村を失うところだった。本当に有難う」
「いえ、私たちは冒険者ですので依頼を果たしたに過ぎません」
(本当に檀那様ったら会話が苦手というか話を続けるのが下手よね。どうして自分から話を切るのよ)
内心そんな事を思うエリーゼは思わず嘆息してしまう。
ミレーネとクロエは雑貨屋に向かい、エリーゼとエルザは珍しいものが無いか市場に向かった。千夜とウィルはギルドの裏手にある訓練所で訓練に励んでいた。宿屋の庭では訓練にも限度があるためだ。
各々が好きなことをして気分転換になった事は間違いないだろう。特にウィルはゴブリンとの戦闘でレベルが少し上がった事もありやる気に満ち溢れていた。
それに付き合う千夜もまた熱心なウィルの姿に笑みが零れる。しかし、有名冒険者パーティーが訓練しているとなれば直ぐに噂になる。気がつけば沢山の見物人が観客席に座っていた。その視線には好奇心や憧れ、分析など様々だが、中には落胆した視線もあった。
今回の訓練はウィルのスキルレベルアップが目的だ。そのため千夜やエリーゼたち目的で着ていた冒険者も居ただろう。そういった冒険者は直ぐに出て行く者も何人か居た。が、きっと落胆の意味はウィルの力思いのほか低いと感じたからだろう。だが、その考えは正解であり、間違いだ。
確かにウィルは千夜たちに比べたら弱い。足元にも及ばないだろう。だがウィルの実力はBランクの上位に近づいていると言ってもいい。しかし訓練の相手が千夜であるため傍から見れば弱く感じるのだろう。
そんなこんなでお昼休憩を挟んでからも2時間みっちりと訓練した千夜とウィルは早めに切り上げ宿屋に戻る。
宿屋に戻れば既にエリーゼたちは戻ってきており、寛いでいた。
「お帰りなさい。旦那様、ウィル」
「ただいま」
「ただいま戻りました」
その後他愛も無い話で時間を潰して、一日を終えた。
次の日、朝食を終えギルドに赴くと先日と似た光景が広がっており、ギルドの前に集まる人々。その中心には一台の馬車と数人の護衛が立っていた。
しかし千夜たちは気にする様子もなく人ごみを掻き分けギルドの中に入る。すると一斉に沢山の視線が千夜たちに集中する。
一瞬何事かと思ったがギルドの中心に立つ清潔感漂う執事服を着た中年の男性と三人の護衛が立っていた。
「センさん……」
「アミーおはよう。で、これはなんの騒ぎだ?」
「そ、それがですね――」
「それについては私目がご説明させていただきます」
アミーに説明を求めようとしたが、その言葉を遮るように執事服を着た中年男性が千夜に近づく。
「あんたは?」
「お初にお目にかかります。私はこのルーセント領領主代理をされております。ラロス・エドワード様の身のお世話をしております。執事のサイムと申します」
((((((来た!))))))
サイムの言葉に千夜たち全員の気持ちが同調する。
「俺は冒険者のセンだ。で、こっちが妻の――」
「エリーと申します」
「ミーネです」
「クーエです」
「ルーザです」
「ウィルと言います」
一人一人が挨拶をする。
「それで、俺たちに用でも?」
「はい。先日のゴブリン軍団の討伐を耳にしたエドワード様が大変貴方方に興味を持たれまして是非、会ってみたいとの事で、こうしてお迎えにあがった次第にございます」
「なるほどな」
「ですので大変申し訳ございませんが着ていただけるでしょうか?」
「ああ、問題ない」
「有難う御座います。では外に馬車を用意して下りますのでそちらにお乗りください」
千夜たちはサイムの指示で馬車に乗り込む。
馬車に揺られること数分、何事もなく到着した千夜たちは領主邸へと足を踏み入れた。
サイムの案内で応接室に通された千夜たちは高級なソファーに座り、出された紅茶と茶菓子を堪能する。
(紅茶とお菓子に毒や睡眠薬は入っていないようだな)
危険が無いか調べた千夜は茶菓子を口に含み数度咀嚼してから紅茶で流し込む。
(ここがエリーゼとウィルが住んでいた家か。なんと言うか温かみが無い家だな)
そんな事を思いながら再び紅茶を口にする。
数分して扉がノックされる音が聞こえる。
「皆様お待たせしました。エドワード様が参られます」
サイムの言葉に千夜たちはソファーから立ち上がる。
「いや、遅れてしまい申し訳ない」
「いえ、お気になさらずに」
中に入ってきた一人の男。質素でも豪華でもない中間位の服来た細身の男。見た目からして30代後半といったところだろう。
(この男が代官。どうみても私利私欲を肥やすタイプには見えないが)
内心そんな事を思いながらもラロスとの会話を続ける。
「さあ、座りたまえ」
ラロスが座り座るよう促された千夜たちはソファーにすわる。
「それで、私たちを呼んだ理由は?」
「単刀直入だね」
「生憎と世間話は苦手でして」
「そうなのか。ま、君たちは呼んだのは他でもない。先日のゴブリン軍団討伐件だ。その事でどうしても感謝を伝えたくてね」
「その言葉だけで十分です」
「そう言って貰えると助かるよ。これは言い訳でしか無いが生憎と私は多忙な身でね。色々とする事が多くて全てに手が回らないんだ。そのせいでルイラ村を失うところだった。本当に有難う」
「いえ、私たちは冒険者ですので依頼を果たしたに過ぎません」
(本当に檀那様ったら会話が苦手というか話を続けるのが下手よね。どうして自分から話を切るのよ)
内心そんな事を思うエリーゼは思わず嘆息してしまう。
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