275 / 351
第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第三十九幕 推測どおりとネクロマンサーの強さ
しおりを挟む
あれから一日が過ぎた。
明日の昼前には都市ルーセントに到着するだろう。
何時ものように野宿の準備をし夕食を食べていると、脳内に念話の着信が入る。
食事の手を止め、応答する。
『我が君、バンシーに御座います』
『どうした?』
「はい。我が君に命じられたルイラ村周辺を見張っていたのですか、謎の集団が村を包囲するように接近していますのでお知らせ次第です』
『そうか。やはりな』
バンシーの知らせに思わず不適な笑みが毀れる。
『はい。我が君の推測どおりです』
『なら、相手が仕掛ける前にこちらから襲撃しろ。殺しても構わないが情報を引き出すために数人は生け捕りにしろ』
『畏まりました。死体はどのように?』
『好きにして良い。実験台にしようが従者にしようがな』
『畏まりました。では、終わり次第またご連絡いたします』
『解った』
念話が切れると千夜は再び食事に戻る。
「どうしたの?」
食事を再開したがエリーゼの質問される。よく見るとウィル以外の全員の視線が千夜に集中していた。
「バンシーから連絡があった。ちょうど今ルイラ村を包囲する形で襲撃しようとしているらしい」
「大丈夫よね?」
「ああ。的の戦力がどの程度が解らないがバンシーに勝てるものは居ないだろう」
「そうなの?」
「ああ。俺が創った眷属たちの中で対集団戦においてバンシーの右に出るものはいない」
「それってスケアクロウやラッヘンでも?」
「そうだ。役職で例えるなら、スケアクロウは騎士。ラッヘンは暗殺者。バンシーは魔法使いだ。だが、バンシーはネクロマンサーだ。アンデットを操り魔法使い。その統率力、指揮は他の2人を圧倒している」
「でも、今は夜よ。それなら暗殺者であるラッヘンだって負けてないとおもうけど?」
「確かにそうだが、村を包囲するだけの人数となると10人やそこらじゃないだろう。そうなると全員を同時に殺す事は難しい」
「バンシーなら同時攻撃が出来るってこと?」
「そうだ」
「でもどうやって? アンデットを操る魔法使いでも鈍い人間の死体じゃ奇襲は難しいわよ」
「アンデットは別に人間の死体じゃなくても構わない。そこらへんに埋まっている動物死骸や蟲の死骸でも構わないからな」
「「「「「………」」」」」
千夜の言葉にエリーゼたちは思わず蟲や動物の死骸に襲われる姿を想像し背筋を凍らせる。
「それにバンシーにはそれだけじゃないからな」
「どういう事?」
「そのうち解るさ」
話はここまでだと言わんばかりに千夜は今度こそ食事を再開した。
******************************
その日の夜。正確には深夜の3時頃、とある一室で二人の男が小さなテーブルを挟んで対峙していた。
一人は腕を組みふてぶてしく座り、もう一人は怒りを形相で目の前の男を睨む。
「全滅だと!」
代官はテーブルに拳を叩きつける。
「ああ」
それに対してフランは簡素に返答する。
「ふざけるな! いったい何があったのか詳しく聞かせて貰うぞ!」
「そのためにお前を呼んだんだ」
物怖じもするようすもなく何時もと代わらぬ態度で話すフランに代官は睨みつける。
「……さっさと話せ」
文句の一つでも言ってやろうかと考えたが、この男には無駄だと判断してすぐさま本題に入った。
「お前に頼まれて部下を十五人でルイラ村を襲わせたが連絡が無く、不振に感じて部下に調べるように行かせたが、部下の姿は無く、それどころか村は健在だった」
「どういう事だ! 俺に従わないあの村をゴブリン共に襲わせ国から金をふんだくる筈が、一介の冒険者に止められ。あまつさえ偽装工作まで失敗とはお前の組織は役立たずばかりか!」
「なんだと……」
「……チッ」
鉄仮面の奥から鋭い眼孔で睨まれ視線を逸らす。
「それで、いったい何が起こっているのだ」
「それは調査中だ。だがこれで冒険者を殺す事は出来なくなった」
「何故だ。お前たちの部下に襲わせれば良いだろうが!」
「たった数人で1500のゴブリン軍団。それもゴブリンジェネラルを倒せるほどの冒険者を部下が殺せるわけがない。それにもしも殺されたところでルイラ村が無事である事が知られたら、冒険者たちが殺された事で不振に思われる可能性だってある」
「それなら冒険者を殺したあとでもう一度村を襲えば良いだけの話だろうが!」
「何者かに護られている村をそうそう倒せるものではない」
「チッ!」
「諦めろ。今回の作戦は失敗だ」
「糞がっ!」
代官は再びテーブルに拳を叩きつける。
「安心しろ。既にその冒険者たちについて調べている。何か解れば連絡する」
「当たり前だ。私の目的まであと少しなんだ。こんな所で邪魔されてたまるか!」
「………」
代官は席を立ち上がるとそのまま室内を出て行った。
「しかし、捨て駒とはいえ、ゴブリンジェネラルまで倒せる冒険者パーティーか。いったい何者だ。帝都から来ていたと報告があったが」
フランは少し考え込むが答えが出ないと判断すると、室内を照らしていた一本の蝋燭の火を消すと室内を後にした。
明日の昼前には都市ルーセントに到着するだろう。
何時ものように野宿の準備をし夕食を食べていると、脳内に念話の着信が入る。
食事の手を止め、応答する。
『我が君、バンシーに御座います』
『どうした?』
「はい。我が君に命じられたルイラ村周辺を見張っていたのですか、謎の集団が村を包囲するように接近していますのでお知らせ次第です』
『そうか。やはりな』
バンシーの知らせに思わず不適な笑みが毀れる。
『はい。我が君の推測どおりです』
『なら、相手が仕掛ける前にこちらから襲撃しろ。殺しても構わないが情報を引き出すために数人は生け捕りにしろ』
『畏まりました。死体はどのように?』
『好きにして良い。実験台にしようが従者にしようがな』
『畏まりました。では、終わり次第またご連絡いたします』
『解った』
念話が切れると千夜は再び食事に戻る。
「どうしたの?」
食事を再開したがエリーゼの質問される。よく見るとウィル以外の全員の視線が千夜に集中していた。
「バンシーから連絡があった。ちょうど今ルイラ村を包囲する形で襲撃しようとしているらしい」
「大丈夫よね?」
「ああ。的の戦力がどの程度が解らないがバンシーに勝てるものは居ないだろう」
「そうなの?」
「ああ。俺が創った眷属たちの中で対集団戦においてバンシーの右に出るものはいない」
「それってスケアクロウやラッヘンでも?」
「そうだ。役職で例えるなら、スケアクロウは騎士。ラッヘンは暗殺者。バンシーは魔法使いだ。だが、バンシーはネクロマンサーだ。アンデットを操り魔法使い。その統率力、指揮は他の2人を圧倒している」
「でも、今は夜よ。それなら暗殺者であるラッヘンだって負けてないとおもうけど?」
「確かにそうだが、村を包囲するだけの人数となると10人やそこらじゃないだろう。そうなると全員を同時に殺す事は難しい」
「バンシーなら同時攻撃が出来るってこと?」
「そうだ」
「でもどうやって? アンデットを操る魔法使いでも鈍い人間の死体じゃ奇襲は難しいわよ」
「アンデットは別に人間の死体じゃなくても構わない。そこらへんに埋まっている動物死骸や蟲の死骸でも構わないからな」
「「「「「………」」」」」
千夜の言葉にエリーゼたちは思わず蟲や動物の死骸に襲われる姿を想像し背筋を凍らせる。
「それにバンシーにはそれだけじゃないからな」
「どういう事?」
「そのうち解るさ」
話はここまでだと言わんばかりに千夜は今度こそ食事を再開した。
******************************
その日の夜。正確には深夜の3時頃、とある一室で二人の男が小さなテーブルを挟んで対峙していた。
一人は腕を組みふてぶてしく座り、もう一人は怒りを形相で目の前の男を睨む。
「全滅だと!」
代官はテーブルに拳を叩きつける。
「ああ」
それに対してフランは簡素に返答する。
「ふざけるな! いったい何があったのか詳しく聞かせて貰うぞ!」
「そのためにお前を呼んだんだ」
物怖じもするようすもなく何時もと代わらぬ態度で話すフランに代官は睨みつける。
「……さっさと話せ」
文句の一つでも言ってやろうかと考えたが、この男には無駄だと判断してすぐさま本題に入った。
「お前に頼まれて部下を十五人でルイラ村を襲わせたが連絡が無く、不振に感じて部下に調べるように行かせたが、部下の姿は無く、それどころか村は健在だった」
「どういう事だ! 俺に従わないあの村をゴブリン共に襲わせ国から金をふんだくる筈が、一介の冒険者に止められ。あまつさえ偽装工作まで失敗とはお前の組織は役立たずばかりか!」
「なんだと……」
「……チッ」
鉄仮面の奥から鋭い眼孔で睨まれ視線を逸らす。
「それで、いったい何が起こっているのだ」
「それは調査中だ。だがこれで冒険者を殺す事は出来なくなった」
「何故だ。お前たちの部下に襲わせれば良いだろうが!」
「たった数人で1500のゴブリン軍団。それもゴブリンジェネラルを倒せるほどの冒険者を部下が殺せるわけがない。それにもしも殺されたところでルイラ村が無事である事が知られたら、冒険者たちが殺された事で不振に思われる可能性だってある」
「それなら冒険者を殺したあとでもう一度村を襲えば良いだけの話だろうが!」
「何者かに護られている村をそうそう倒せるものではない」
「チッ!」
「諦めろ。今回の作戦は失敗だ」
「糞がっ!」
代官は再びテーブルに拳を叩きつける。
「安心しろ。既にその冒険者たちについて調べている。何か解れば連絡する」
「当たり前だ。私の目的まであと少しなんだ。こんな所で邪魔されてたまるか!」
「………」
代官は席を立ち上がるとそのまま室内を出て行った。
「しかし、捨て駒とはいえ、ゴブリンジェネラルまで倒せる冒険者パーティーか。いったい何者だ。帝都から来ていたと報告があったが」
フランは少し考え込むが答えが出ないと判断すると、室内を照らしていた一本の蝋燭の火を消すと室内を後にした。
0
お気に入りに追加
10,112
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。