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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第三十一幕 有効活用と焼け野原

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「さて、それじゃまずはこの戦場の後片付けだな」
「そうね」
 見渡すかぎりゴブリン、ゴブリンメイジ、ホブゴブリン、そこら中に散乱した戦場は血生臭く慣れていなければ目を細めるほどの異臭が充満していた。その証拠にウィルは少し辛そうな表情をしている。

「後の事も考えるとやはり燃やすのが手っ取り早いが、まずは武器の回収だな」
「どうして? どうせ売ってところで私たちには大したお金にはならないわよ」
「確かにそうだが、村にとっては違う。少しでもお金が入れば今後の清潔が潤うからな」
「優しいのね」
「違うな。有効活用と言ってくれ」
「そうね」
 笑みを浮かべて剣や槍、弓矢などを回収し始めるエリーゼたちを見て嘆息しつつも千夜も武器の回収を行う。

「まずはこの英雄級の武具と古代級の武器の回収だな」
 死んだゴブリンジェネラルを見詰め千夜は早速大剣を拾う。
 刃こぼれし、いつ折れてもおかしくないそれは未だに戦う意思があるかのように輝きを失ってはいなかった。
(戦士には戦士の武器か)
 そんな事を思いながらアイテムボックスに次々収納していく。
 1時間かけてようやく集め終えた武器、武具をアイテムボックスにしまうと千夜たちは戦場から少し離れた場所に移動した。

「ここらへんで良いだろう」
「そうね」
 今から何をするのか誰もが理解していた。

「本当なら一箇所に集めて燃やしたほうが良いんだがここまで酷いと一箇所まで集めるのは無理だからな」
「も、申し訳ありません……」
 千夜の言葉に恐縮そうにして謝るエルザ。
 苛立ちを払拭するため過剰に木っ端微塵にしたのが現在の状況を呼び起こしていたのだ。

「悔やんでいても仕方が無い。それじゃ始めるか」
 そう呟いてた千夜はアースウォールで戦場を囲み、フレイムスカイと言う名の上級火属性魔法で戦場を焼け野原にする。

「ミーネたちは火の粉が森に行かないよう注意していてくれ」
「分かりました」
 土壁上から見える赤い炎と熱が死体を燃やしている事を伝えてくる。

「少し篤いわね」
「もう少し離れたほうが良いかもな」
 数メートル下がった千夜たちはその場から終わるのはただただ待つ。
 1時間ほどして燃やすものが無くなったのか自然と火が弱まっていった。

「そろそろだろう」
 呟きと同時に戦場上空に直径5メートルのアクアボールが3つ出現し戦場へと落下した。
 ジュシュー……という音と同時に水蒸気が黙々と立ち上るのを確認した千夜はアースウォールを解除し確認する。

「問題ないな」
「でも、完全に焼け野原ね。数年は草木は生えないわよ」
「なら、畑にでもすればいいが、後の事を考えるなら何か種でも渡したほうがいいな」
「何かあるの?」
「まあな」
 笑みを浮かべる千夜の姿に首を傾げるエリーゼたちだが後に分かるだろうと考えるのをやめた。

「それじゃアミッツの所に向かうとするか」
「そうね」
 軽傷者1名と前代未聞の結果で勝利を終えた千夜たちはアミッツたちの許に向かった。


「お帰り!」
「ああ、今戻った」
 満面の笑みで出迎えてくれたアミッツの頭を撫でる千夜。

「本当に有難うございます」
「いや、俺は必要ない。俺たちは依頼で着てだけだからな」
「ですが……」
 依頼とはいえ、助けてくれた恩人たちになにもしないのは気が引けるのだろう。

「なら、すまないが一日だけ泊めて貰えないか。息子が疲れていてな。今すぐにでも寝かしてやりたいんだ」
「分かりました。それなら我が家に来て下さい」
 アミッツの父親に案内される事になった。が、

「その前に依頼達成の報酬を貰えるか?」
 そんな千夜の言葉に村人たちの表情が一変して暗くなる。
 緊急依頼は通常の依頼より依頼達成時の値段が高くなる。平均的には1,5倍~2倍の依頼料を支払うのが定石だ。勿論依頼難易度も関係してくる。今回はゴブリン軍団。それもリーダーはゴブリンジェネラルとAランク相当の魔物が出現した。そうなれば間違いなく依頼料はべらぼうな金額になる。そんな金額を一つの村が支払えるわけもない。最悪、土地を売るか家族を奴隷商に売るなどしてお金を集め支払うしかない。

「アミッツ」
「っ! どうか娘だけは――!」
 千夜の言葉に父親が阻もうとするが、

「はい。これ」
「確かに依頼料は貰った」
「え?」
 千夜の言葉に父親は呆けた声が漏れる。
 アミッツから受け取った物を確認するため視線を千夜の手に向ける。そこには銅貨数枚。正確には銅貨7枚があった。

「あ、あのそのお金は?」
「ん、依頼料だが?」
「え、たった銅貨7枚」
「そうだだが、それがどうした?」
「い、いえ! 本当に宜しいのですか?」
「ああ。アミッツの依頼を受ける際の契約だからな」
 千夜の言葉に未だに理解が追いつかない村人たち。

「そうだ、忘れる所だった」
 そう言って千夜はアイテムボックスから大量の武器、武具を置く。
 山盛りに置かれたその光景に村人たちは目を見開ける。

「あ、あのこれは?」
「俺たちには必要の無いものだ。承認にでも売るといい。ま、知識が無いから安く買い叩かれるだろうが少しは村の足しになるだろう」
「良いんですか!」
「俺たちには必要のないものだ」
「ありがとうございます!」
 全員が笑みを浮かべて頭を下げる。

「それより早く家に案内して貰えるか」
「は、はい!」
「こっちだよ!」
 アミッツとその父親に案内され千夜たちは家で一休みする事となった。
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