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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第二十四幕 キラー・アトランとスキル取得
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次の日、ウラエウスは魔王ベルヘルムからの命により人間たちが住まう『オルデン大陸』に向かうため、岸に来ていた。
「確かこのあたりにあった筈だ。お、あったあった」
岸に上げられていた屋根のある小船を見つけ海に浮かべると、懐から貝殻で作られた笛を鳴らす。
小鳥の泣き声のような音を発したそれは荒れ狂う海の音によって直ぐにかき消される。
しかし数分後、突如海の一部が盛り上がるとそこから体長40メートルはある一匹の魔物が出現した。
鋭利な刃物ような鱗に覆われた姿はまるで鮫であり、その体格と模様は鯱を髣髴とさせる。
「アトすまないがまたオルデン大陸まで頼む」
『キュィン!』
凶暴そうな見た目とは裏腹に可愛い鳴き声で返事をするアトと名づけられた、その魔物の本当の名前は海鮫喰い。荒れ狂う海に住まう凶暴な魔物たちの仲でも上位に君臨する魔物で通称狩人とも呼ばれている魔物だ。
小船の先端に取り付けた紐の片方をアトの背びれに取り付ける。
人間たちが航海不可能とされている海を渡りオルデン大陸に侵攻できるのは魔族が海に住まう魔物たちを飼いならしているからである。勿論その事を人間たちは知らない。
「それじゃあ頼む」
『キュィン!』
アトに引っ張られながらウラエウスはオルデン大陸へと向かう。
******************************
次の日から千夜たちは目立つように、と言うよりも暴れるように幾つもの依頼をこなしていった。
一日に複数依頼を受けるときはパーティーを二つにわけてこなしていた。ウィルが居るパーティーはBランクの依頼をメインにこなす一方で、もう片方はAランクをメインにSランクの依頼をこなす日々が2週間ほど続いた頃には回りから憧れの存在として周知されていた。
そんな千夜たちはランク上昇の話が持ちかけられるのは当たり前だが、ウィルがAランクになるまではSには上がらないと宣言した。勿論その事にウィルは申し訳なさそうにしていたが、目的の為に行っているだけと千夜に言われウィルから負担が軽減された。それでも完全に消える事はないからこそ、訓練所や宿屋の裏庭での稽古は日々苛烈さを増していった。
しかしそのお陰もあってかウィルのステータスレベルは180まで上がり、スキルレベルにいたっては平均80と子供では異常と言わざるえない状態となっていた。
それでも満足していないのは周りに居る千夜たちの影響なのか、血筋なのかは定かではない。
「よし、今日の朝稽古はこの辺で良いだろう」
「はぁ……はぁ……はぁはぁ……あぁ、ありがとう……ございました……」
大量の汗を流しフラフラになりながらもウィルは地面に座ろうとしない。これはウィルの意地であった。
「ほら、ウィル水だ。一気に飲むなよ。お腹を壊す」
「ありがとうございます」
千夜から受け取った水筒を受け取ると水を口に含む。しかし直ぐには飲み込まず口の中で温度を上げてから喉を潤す。これは一週間前に千夜から教えて貰った事を実際に行っているのだ。ウィルはとても優しく、素直な子だ。だが負けず嫌いでもあるからこそ朝からでも過酷な稽古を行っている。
水を飲み息を整えたウィルは前から気になっていた事を千夜に訊ねてみる。
「あのお父様」
「ん、なんだ?」
水を飲んでいた千夜はウィルに視線を向けながら喉を潤す。
「どうしてお父様はそんなにスキルを持っているのですか?」
「どうしてだと思う?」
「色々と経験したからでしょうか?」
「大まかに言えばその通りだ。それじゃウィル、スキルってどうやって手に入れるか知っているか?」
「はい。学園でも学びました。その分野のスキルを手に入れるにはその分野の事をすれば良いんですよね。例えば剣術スキルなら見よう見まねで剣術をしてみたり、調理スキルなら料理を作ってみたり」
「その通りだ。勿論そのスキルを手に入れるのには個人差がある。早い者も居れば時間が掛かる者も居る」
「はい」
「しかしスキルには他の方法で手に入れる方法もある」
「知っています。スキル継承巻物ですよね。古代の遺産で数も少なくとても貴重な物だと聞いています!」
「そ、その通りだ」
(まさかスクロールが古代の遺産になっているとは。見せるにも見せられなくなってしまった)
懐から取り出そうとしていた手をゆっくりと戻す。
「だがスキルには他にも取得方法がある」
「そうなんですか?」
「ああ。俺たちは規定スキルと呼んでいた」
「規定スキルですか?」
「そうだ。決められた内容の事をこなせば誰にだって取得可能なスキルの事だ。これに個人差はない。誰にだって取得可能なスキルの事だ」
「そんなスキルがあるんですね」
「そうだ。例えば浄化スキル。生まれつき持っている者たまにいたり、スクロールなどで取得する者いるが浄化スキルは誰にだって手に入れる事が可能だ」
「そうだってんですね。他には何があるんですか?」
「そうだな……無効スキルだな」
「無効スキルですか?」
「そうだ。状態異常無効スキルや各属性、火、水などの属性無効スキルだ。これはとある魔物と戦闘して勝利しないと取得出来ないスキルだ」
(あれは大変だった。一回倒してようやく一つの属性が無効に出来るものだからな。何回挑んだことやら)
思い出に浸っているとエリーゼがやってきた。
「旦那様、ウィル朝食の時間よ」
「そうか。ウィル行くとしよう」
「はい!」
砂埃を手で軽く払い落としたウィルと共に食堂へと向かう。
「確かこのあたりにあった筈だ。お、あったあった」
岸に上げられていた屋根のある小船を見つけ海に浮かべると、懐から貝殻で作られた笛を鳴らす。
小鳥の泣き声のような音を発したそれは荒れ狂う海の音によって直ぐにかき消される。
しかし数分後、突如海の一部が盛り上がるとそこから体長40メートルはある一匹の魔物が出現した。
鋭利な刃物ような鱗に覆われた姿はまるで鮫であり、その体格と模様は鯱を髣髴とさせる。
「アトすまないがまたオルデン大陸まで頼む」
『キュィン!』
凶暴そうな見た目とは裏腹に可愛い鳴き声で返事をするアトと名づけられた、その魔物の本当の名前は海鮫喰い。荒れ狂う海に住まう凶暴な魔物たちの仲でも上位に君臨する魔物で通称狩人とも呼ばれている魔物だ。
小船の先端に取り付けた紐の片方をアトの背びれに取り付ける。
人間たちが航海不可能とされている海を渡りオルデン大陸に侵攻できるのは魔族が海に住まう魔物たちを飼いならしているからである。勿論その事を人間たちは知らない。
「それじゃあ頼む」
『キュィン!』
アトに引っ張られながらウラエウスはオルデン大陸へと向かう。
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次の日から千夜たちは目立つように、と言うよりも暴れるように幾つもの依頼をこなしていった。
一日に複数依頼を受けるときはパーティーを二つにわけてこなしていた。ウィルが居るパーティーはBランクの依頼をメインにこなす一方で、もう片方はAランクをメインにSランクの依頼をこなす日々が2週間ほど続いた頃には回りから憧れの存在として周知されていた。
そんな千夜たちはランク上昇の話が持ちかけられるのは当たり前だが、ウィルがAランクになるまではSには上がらないと宣言した。勿論その事にウィルは申し訳なさそうにしていたが、目的の為に行っているだけと千夜に言われウィルから負担が軽減された。それでも完全に消える事はないからこそ、訓練所や宿屋の裏庭での稽古は日々苛烈さを増していった。
しかしそのお陰もあってかウィルのステータスレベルは180まで上がり、スキルレベルにいたっては平均80と子供では異常と言わざるえない状態となっていた。
それでも満足していないのは周りに居る千夜たちの影響なのか、血筋なのかは定かではない。
「よし、今日の朝稽古はこの辺で良いだろう」
「はぁ……はぁ……はぁはぁ……あぁ、ありがとう……ございました……」
大量の汗を流しフラフラになりながらもウィルは地面に座ろうとしない。これはウィルの意地であった。
「ほら、ウィル水だ。一気に飲むなよ。お腹を壊す」
「ありがとうございます」
千夜から受け取った水筒を受け取ると水を口に含む。しかし直ぐには飲み込まず口の中で温度を上げてから喉を潤す。これは一週間前に千夜から教えて貰った事を実際に行っているのだ。ウィルはとても優しく、素直な子だ。だが負けず嫌いでもあるからこそ朝からでも過酷な稽古を行っている。
水を飲み息を整えたウィルは前から気になっていた事を千夜に訊ねてみる。
「あのお父様」
「ん、なんだ?」
水を飲んでいた千夜はウィルに視線を向けながら喉を潤す。
「どうしてお父様はそんなにスキルを持っているのですか?」
「どうしてだと思う?」
「色々と経験したからでしょうか?」
「大まかに言えばその通りだ。それじゃウィル、スキルってどうやって手に入れるか知っているか?」
「はい。学園でも学びました。その分野のスキルを手に入れるにはその分野の事をすれば良いんですよね。例えば剣術スキルなら見よう見まねで剣術をしてみたり、調理スキルなら料理を作ってみたり」
「その通りだ。勿論そのスキルを手に入れるのには個人差がある。早い者も居れば時間が掛かる者も居る」
「はい」
「しかしスキルには他の方法で手に入れる方法もある」
「知っています。スキル継承巻物ですよね。古代の遺産で数も少なくとても貴重な物だと聞いています!」
「そ、その通りだ」
(まさかスクロールが古代の遺産になっているとは。見せるにも見せられなくなってしまった)
懐から取り出そうとしていた手をゆっくりと戻す。
「だがスキルには他にも取得方法がある」
「そうなんですか?」
「ああ。俺たちは規定スキルと呼んでいた」
「規定スキルですか?」
「そうだ。決められた内容の事をこなせば誰にだって取得可能なスキルの事だ。これに個人差はない。誰にだって取得可能なスキルの事だ」
「そんなスキルがあるんですね」
「そうだ。例えば浄化スキル。生まれつき持っている者たまにいたり、スクロールなどで取得する者いるが浄化スキルは誰にだって手に入れる事が可能だ」
「そうだってんですね。他には何があるんですか?」
「そうだな……無効スキルだな」
「無効スキルですか?」
「そうだ。状態異常無効スキルや各属性、火、水などの属性無効スキルだ。これはとある魔物と戦闘して勝利しないと取得出来ないスキルだ」
(あれは大変だった。一回倒してようやく一つの属性が無効に出来るものだからな。何回挑んだことやら)
思い出に浸っているとエリーゼがやってきた。
「旦那様、ウィル朝食の時間よ」
「そうか。ウィル行くとしよう」
「はい!」
砂埃を手で軽く払い落としたウィルと共に食堂へと向かう。
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