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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第七幕 タルタ村とぼったくり

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 走る事2時間弱、兵士に教えて貰ったタルタ村に到着した。
 情報通り村と言うには規模がデカく、町と言うには小さい。ちょうど中間くらいの村だ。
 建物の3割は石を使った家だが、残りは木造建築と言うには物足りない家が建て並んでいた。

「建築ブームか」
 そこらじゅうで男たちが建築作業に取り掛かっている光景に千夜が違和感を感じた。
(いったいどういう事だ。ベルグから聞いた話だと私利私欲を肥やすために闇ギルドと取引をしていると聞いたが、これはどう見てもそんな感じはない。いや、敢えてしていないのか。あからさまにすればベルグの耳に入る。だが、裏で動く事で設けているわけか。さっきの検問のように。でないとベルグがルーセント領の事態にこうも気づくのが遅れる筈がない。代官か、もしくは闇ギルドのボスが切れ者なのかは解らないが思っていた以上に面倒になりそうだな)

「どうしたの旦那様?」
「ん、いや、ちょっとな……」
 思考の海に深く浸かっていた千夜の表情は険しいものになっており、それに気がついたエリーゼたちは声を掛けた。

「今日はここで泊まる。まずは宿を探す」
「それならあそこにあるわよ」
「なに」
 エリーゼの指差した方向に視線を向けるとそこにはナイフとフォークが交差する看板があった。
 ただの飲食店だと思うかもしれないが、こういった村や町に飲食店は少ない。それなりに大きな都市でない限り。そのため食事のマークが出ているお店は宿として営んでいるのだ。勿論千夜もここ数年でその事は理解していた。
(どうやら宿探しは昔変わらず苦手なようだ)
 ミレーネたちと依頼をこなし宿探しをした事をの思い出しながら千夜たちは宿屋の扉を開けた。
 鈴の音にしては違和感を覚えてしまう音色が室内に響き渡らせる。

「いらっしゃい。泊まりかい?」
 この店の店主であろう中年女性が出迎える。

「ああ、一泊頼みたい」
「部屋はどれにする。雑魚寝、ベッド?」
「ベッドで」
「あいにくと家は二人部屋は二つしかないんだ。残りは個室になるが構わないかい?」
「ちょっと待ってくれ」
 千夜を含め全員で六人居る。そうなると二人が個室になってしまう。

「ベッドとをくっ付ければ三人でも寝れるだろう。それで構わないか?」
「ええ、私は平気よ」
「私も大丈夫です」
「平気じゃ」
「異論などありません」
「僕も平気です」
「そうか。店主、二人部屋を二つ頼む」
「解ったよ。食事は夕食と朝食の二回。夕食は七の鐘が鳴る時で朝食も七の鐘が鳴る時だよ」
「解った。遅れないようにしよう」
「なら、代金は前払いで一人当たり銀貨6枚。子供は銀貨3枚だよ」
「ちょっとそれはあまりにも高いわ!」
 店主の言葉に流石のエリーゼの反論する。
 だがそれは仕方が無かった。帝都の中級宿なら銀貨5枚でもおかしくはない。しかしどう見てもこの宿は下級宿。田舎の宿なら高めの設定をされていても仕方が無いが精精銀貨一枚だ。だがこのお店は銀貨6枚、子供ですら銀貨3枚はぼったくりとしか良いようが無かった。

「嫌なら私は別に構わないよ。雑魚寝にするかい。そっちなら一人当たり銀貨2枚、子供は銀貨1枚だからね。それでも嫌なら外で野宿すると良いよ」
「くっ……」
 店主の言葉にエリーゼは何も言い返せなかった。

「文句を言ってすまない。代金の銀貨33枚だ」
「……確かにちょうどだ。これが鍵だよ」
「助かる」
 鍵を受け取った千夜はさっさと二階に上がる。エリーゼたちも仕方なく二階へと向かう。
 部屋を割り振りは千夜、エリーゼ、ウィルとミレーネ、クロエ、エルザとなった。力のバランスと考えた結果である。
 突き当たりの部屋はミレーネたちに譲った千夜はその隣の部屋でベッドのセッティングを始めた。

「旦那様どうして文句言わなかったの」
「いや、言うつもりだったが、エリーゼが言ってくれたからな」
 別に気分を害した訳ではない。これも隠密行動をする上で必要だからだと判断したに他ならない。

「だからと言ってあれ以上目立つ訳にはいかなかったからな」
「そうなの?」
「ああ。俺たちはこんかい極秘依頼でこのルーセント領に来ている。だから目立ちすぎると標的に目をつけられる恐れがある。だからといってすんなり了承すれば怪しまれるからな。だから俺は文句を言う演技をしようとしたんだが、先にエリーゼが文句を言ってくれた。助かったよ」
「私は別にそんな事の為に言ったんじゃないわよ」
「そうだったのか? 俺は凄い演技だと思ったんだが」
「はぁ……もういいわ。苛立っている私が馬鹿みたい。それよりもこれからどうするの?」
「三人一組、この組み合わせで村人から情報収集する係と村とその周辺を探索する係で日が暮れるまで行う。夕食後に話し合いをする。この事をエルザたちにも伝えておいてくれ」
「解ったわ。ウィル一緒に行きましょう」
「はい、お母様」
 部屋を出て行ったエリーゼたちを他所に千夜はベッドに座る。
(さて、この村に何人敵の駒が潜んでいるかな)
 マップを開けながら不敵な笑みを浮かべる千夜である。
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