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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第百十三幕 ラム稽古に励む 中級(テイマーとしてローを指導する)

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 あれから2週間が過ぎた。
 その間千夜は色々と動き回っていた。
 オールリキュール宛てに送られてくる請求書整理、奴隷達の訓練。冒険者としての活動色々だ。特に一番時間を使っているのがラムの訓練だ。元々タイガーに一任していたが、エンペラーウルフを買い始めたためそうもいかなくなったのだ。と言っても千夜が教える事はローの躾け方ぐらいだ。
 ラム自身の訓練はタイガーが指導している。
 現在は体術を教えている所だがなかなか上達していないようだ。何をするにも上達スピードには個人差がある。その証拠にラムは体を動かすよりも頭を使った事の方が得意だったりする。文字、算術、歴史などは直ぐにマスターしてしまうほどだ。そのためたまに千夜に戦術、戦略などを教えて貰ったりしていたのだ。

「ラム、ローの躾けは順調か」
「うん、順調だよ。見てて。お座り!」
 座る。

「伏せ!」
 伏せる。

「お手!」
 右前足をラムの手に乗せる。

「待て!」
 お座り状態から動くことなくローはラムの指示を待つ。
 時は流れ20分近く経った。

「よし!」
「ワン!」
 ラムの言葉を聞くと駆けてラムの許に走り寄る。

「おお、凄いな」
「ロー頭いいの。何回か教えたら直ぐに覚えるの。頭良いの」
「そうだな。だが、ラムの教え方も上手なのかもしれないな」
「えへへ」
「それにしても、たった2週間で随分大きくなったな」
「私もビックリの成長速度なんだよ」
 大型犬の子犬サイズがたった二週間で中型犬位まで成長していた。
(このままだと、直ぐに大きくなってこの屋敷では変えなくなるかもな。念のために教えておくか)

「ラム」
「なに、お父さん」
 ラムの言葉に思わず黙り込む。どうしても慣れないらしい。

「そ、その……なんだ。ローに変化のスキルを教えておきたい」
「どうして?」
「このままだと大きくなりすぎてこの屋敷では変えなくなるからな」
「でも、変化って姿を変えるだけじゃないの?」
「確かに俺達はそうだが、魔物は二通りある。一つは俺たちと同じで別の姿になる物と体の大きさを自由自在に変える方法だ」
「そうなんだ~」
 新たな知識を知り、真剣な様子で聞く。

「でも、スキルは魔法と違って手に入れるのが大変だってエリーゼお姉ちゃんから聞いたよ」
「その通りだ。スキルを手に入れる方法には幾つかの方法がある。一つは地道な鍛錬による獲得。体術や剣術は少し覚えればステータスに表示される。料理や裁縫もそうだけど、変化みたいなスキルは鍛錬だけでは無理だ。そういう時は巻物、スキル獲得アイテムなんかで簡単に獲得も出来るが、そうそう手に入るものではない」
「そうなんだ」
(ま、俺は持ってるんだが)

「で、変化スキルを覚える一番の方法は闇魔法の幻惑を使う事だ」
「それで手に入るの?」
「そうだ。細かく説明すれば、幻惑を対象者に掛けるのではなく己に掛けて姿を変える方法だ。それを何度か繰り返せばステータスに変化スキルが表示される筈だ。だけどその為にはまず幻惑魔法を覚える必要がある。だからラムには俺が言った事をローに伝えて貰いたい」
「あるじ様はローと会話出来ないの?」
「出来ない訳じゃない。俺が持つ意思疎通と言うスキルをローが持っていれば会話は可能だ。だけどローは持っていないからな」
「なら、ローにも覚えさせないとね」
「また今度な」
「うん!」
 こうしてローの変化スキル獲得訓練がスタートした。
 千夜がラムに伝え、それをラムがローに伝える。伝言ゲームである。

「魔物は人間やエルフとかと違って言葉を喋る事は出来ない。長生きすれば言葉を話せるようになる魔物も居るがな。なら魔物はどうやって魔法を発動しているのか。それはイメージだ。俺達人間で言うところ無詠唱魔法をしていると言えば解るか?」
「うん。詠唱もせずに火の球を出したりしてるもんね」
 模擬戦などを見学していた時にでも見たラムはそれを思い出して答えた。

「だけどイメージするにも、なにをイメージすれば良いのか解らないだろう。だから俺が今から見せる。ローはそれを真似するというよりイメージの材料してくれって伝えてくれ」
「解った」
 千夜そう言うとローの前にたち幻惑スキルで己の姿を変え、タイガーとなる。

「どうだ? こんな感じだ」
「すごいすごい! ロー、見てみて凄いね! お父さん凄いね!」
 無垢な少女の言葉に照れる千夜。
(お世辞とかじゃなく、本心だと解るから逆に困るな)
 背中がムズムズして痒くなる前にローへの指導を開始する。

「それじゃあ、ラムローに今見せた事を思い浮かべながら自分が変化するイメージをさせて見せてくれ」
「解った…………ねえお父さん」
「なんだ?」
「ローが魔法ってどうやって使うのかだって」
「それは勿論魔力を使うんだ」
「魔力って何だって?」
「そこからだったか」
 思わず頭を押さえる千夜はまだまだ時間が掛かりそうだと項垂れるのだった。
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